聞き返されても答えなくてもいいんですよ

聞き返されても答えなくてもいいんですよ

発声障害の患者様にアンケートを行いました。

機能的疾患:内転型痙攣性発声障害、外転型痙攣性発声障害、音声振戦症、音声衰弱症
器質的疾患:声帯萎縮、声帯溝症、頚部ジストニア、難治の声帯結節、反回神経麻痺

とくに声が詰まる方や声が出難い方を対象にしました。
「最も辛いときは?」 の質問で、第一位は 「聞き返される」 ことでした。
第二位に 「電話での応対」、第三位が 「喧騒な場所での発声」 でした。





ご協力をいただき、ある実験を行いました。
それは、わざと何度も聞き返して、同じ言葉を言っていただく時の喉頭周辺筋の様子を観察したものです。
會田「今日の朝食は何を召し上がりましたか?」
被験者「パンとコーヒーです」
會田「えっ? よく聞こえません」
被験者「パンとコーヒーです」
會田「ん~、聞き取りにくいので、もう一度お願いします」
被験者「パンとコーヒーです!」
會田「パンと何ですか?」
被験者「パンとコーヒーです!!」
會田「パンとコーラですか?」
被験者「パンとコォヒィーでっす!!!」
このとき、感情的になるにしたがって肩甲舌骨筋が大きく浮き上がり、甲状軟骨が奥に沈下しました。
つまり、無自覚で喉頭を固めてしまい、発声運動能力を低下させ、声道を押しつぶして、声を出し難い状態を作っていたのです。
そう、大変苦しい質問実験でした。
被験者の患者様には心より感謝申し上げます。




そこで、当サロンでは 【 聞き返されても答えない 】 よう提案しています。




実は、これも過去に実験したデータですが、良く通る大きな声でしゃべったときと、ささやくような小さな声でしゃべったときの、相手の集中力を調べてみました。
検査母数が少なく実験環境に統一性がなく各人認識度の曖昧性もあり、確実に正しいとは言い切れませんが、ささやくときの方が相手は 『聞こう』 という態度や意識が働くのが多いことが判明しました。
これを応用利用したのが緩急発声です。
緩急発声とは私の造語ですが、大きな声の次に、タイミングの上手い“間”をあけて、小さな声で話すと、聞いている人を引き込むことができます。
相手の心をグッとつかむため、説得したり求愛したりするときに効果抜群です!
この実験は多数繰り返し、声の大きさや“間”の時間など、最適音圧レベルや最良時間が分かっています。
残念ながらこれはトップシークレットゆえお伝えすることはできません。
話がそれてきましたね。
つまり、聞き返されても、そのまま話を継続して流していけば、相手はあなたの声を聞き逃すまいと集中して聞きます。
また、聞き取れなかった部分は推測できるはずですし、あなたの声に慣れてきます。
もちろん重要な商談や仕事上の会話で、このテクニックを用いるのは難しいかもしれません。
上記の実験に立ち返ってみましょう。
會田「今日の朝食は何を召し上がりましたか?」
被験者「パンとコーヒーです」
會田「えっ? よく聞こえません」
被験者「最近のコーヒーは非常においしくなって、家でもドリップ式で挽きたての味を楽しめます。朝の一杯のコーヒーは今日一日がんばるぞって気にさせますよね。私は、朝食はご飯と味噌汁よりパンとコーヒーが好きです。會田先生はどちらがお好きですか?」
このように、相手の繰り返しの質問にダイレクトに答えるのではなく、答を含んだ単語を入れて、小さな声でOKですから、さらに話を展開していけば良いのです。
簡単に推測できる内容で相手の答えも返していますから、失礼にはあたらないでしょう。
最初は難しいように感じるかもしれませんが、練習すればできます。
さらに、会話のイニシアチブ(主導権)を自分に引き込むことができますから、すべてに余裕をもった対談が可能になります。
こうすれば、しゃべるのが嫌になってしまうことはなくなりますよ。
お辛い状態は本当に大変だと存じますが、このようにして克服した患者様が大勢います。
無理せず頑張ってみてください。
また、このような「声が詰まっている」「声が割れたり揺れたりしている」「声がかすれている」「声が小さい」「滑舌が悪すぎる」「吃音」などの発声症状の人を見かけましたら、周りの人は十分気遣ってください。
よろしくお願い申し上げます。
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You don't need the repetition of your answer.







ボイスケアサロン
會田茂樹(あいだしげき)






~メッセージ~
この記事は往時の外喉頭外来〔医師と共同研究〕時のデータに基づくものです。よって、不確かな蓋然性も高く、内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。現在は病気に対するアプローチは行っておりません。声の不調は医師にご相談ください。
by aida-voice | 2008-12-08 00:03