声帯は声のためにあるのではなかった!?


「声帯」は漢字で声の帯と書きます。
そう、声のための器官なのですが、実は、仮説ですが、声帯は声のために存在していたのではないようなのです。

昔々の話です。
この地球上で、約50億年前に生命が誕生しました。
それは、地球が海水におおわれ陸はまだない時代です。
最初の生命体はバクテリアのようなごく小さなものでした。

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それらが徐々に進化し“エラ”で呼吸する魚類になっていきました。
そして約4億5千万年前、両生類や爬虫類となって陸に進出しました。
陸上では“エラ”でなく“肺”の呼吸に変わりました。
“エラ”呼吸は水を濾して酸素を取り入れますが、“肺”呼吸では大気中の空気から酸素を獲得します。
もし“肺”に水が入ってしまうと、窒息や誤嚥性肺炎で生命体は死んでしまいます。
進化の過程で、これまでの水ではなく空気を入れるため、水の流入を阻止する目的で、神様あるいは創造主は、喉頭部分の肉壁をギュッと寄せて防護壁を作りました。(もちろん神様や創造主がいるかどうかは分かりませんが・・・笑)
それが声帯の始まりです。
声帯の動きを大胆に集約すると、開いて閉じて伸びて縮んでの4種類です。
開いたとき呼吸をし、閉じて声門下から呼気がきたとき発声し、伸びて高音を出し、緩んで低音を発します。
防護壁としての役目しかなかった大昔のとき、たまたま閉じた状態で、肺から息を吐き出した瞬間「ピー」と鳴ったのです。
「何だこの音は!?」と。
しかし、まだ考える力を持っていない下等な動物です。
きっと合図として成り立ち、進化していったのでしょう。
「ピー、餌があるぞ」「ポー、敵が来たぞ」と。
だんだん進歩して、人間はコミュニケーションとして発展させ、さらに歌声といった芸術まで高めています。
しかし、進化の途中でもあると言われています。
喉頭の周辺には小さく複雑な筋肉が多数あります。
これらの筋肉が協力し合って声を生成します。
どこかの一つの筋肉の動きやバランスが悪くなると、ほんの少し音が変化します。
それは、「昨日は上手く声が出たけど今日は調子悪い」といったような、声楽家やオペラ歌手がよく言う言葉にも表れています。
そして、使っていない筋肉があったり代償性の動きをしていたりする筋肉もあります。
実際、まだよく分かっていないのが本当です。
ここで、尾てい骨を思い出してください。
ヒトにとって尾てい骨は類人猿時代のしっぽの名残のようだと言われています。
つまり、使わない器官は退化します。

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喉頭の筋肉も使っていないものもあるでしょう。
したがって、あと数億年もすれば、もっとシンプルな喉頭になるかもしれません。
そうなれば、日によって声が出し辛かったりピッチのコントロールが難くなったりといったムラがなくなるかもしれませんね。
さらには、全人類が一流歌手のような美声になることも、逆に、声が退化して他のコミュニケーション方法が確立されるようになることも考えられます。
どちらにしても、声は、非常に繊細で数奇な運命を背負った存在です。
ハーバード大学の生物学者スティーブン・ジェイ・グールドは言っています。
「もし、生物の歴史のテープを巻き戻し、もう一度、その過程をやり直したならば、結果は、まったく違うものになるだろう。人類がいないだけでなく、哺乳類のようなものさえ出てこなかったかもしれない…」
偶然から生まれた素敵な 《声》 に心より感謝します。









ボイスケアサロン
會田茂樹(あいだしげき)





からだの各部分は他のすべての道具と同じようにある目的
すなわちある活動のために存在するのだから、からだ全体が
ある複雑な活動のために存在するに違いないということは
明らかである。
アリストテレス



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~メッセージ~
この記事は投稿時の情報・見解・施術法であり、最新・正確・最良でない可能性があります。内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。會田の理論と技術は毎日進化しています。
by aida-voice | 2008-12-04 21:24