軽度の痙攣性発声障害の改善報告


本日2008年7月23日は、京都の一色クリニックで喉頭クリニカルマッサージ外来でした。
《月に二回の外来を行っています》
一日で二十数名の音声障害の患者様を診ました。
痙攣性発声障害(SD)の患者様が半数近くです。
軽度の方、ボトックス注射後の方、甲状軟骨形成術Ⅱ型後のリハビリの方などさまざまです。(手術前の中等度および重症の方は、外皮からのアプローチでは改善しないことが分かっているため施術は行っていません)
東京の會田整骨院付属ボイスケアサロンには、ボイスユーザーの発声力向上や喉のリラクゼーションを求める方が多いのですが、そこでも毎日、数名のSD患者様が来院されます。
このように、一般の耳鼻咽喉科の先生よりはるかに多い痙攣性発声障害の患者様に接していることがお分かりになると存じます。
さて、特にSDの皆さまには、特殊テクニックを用いた喉頭クリニカルマッサージを行います。(施術は一色信彦医師の監督下で行っています)
今回は、その中のお二人が好結果となってきました。
そのうちの一例をご報告申し上げます。
その患者様は、今日を含め、これまで11回の施術を受けました。(今日が12回目)
術後直後は、詰まりが少なく唾が飲みこみやすい(嚥下困難解消)感覚はあったのですが、いつもすぐに戻ってしまうそうです。
私の耳での判断は、徐々に詰まり声が改善していると分かりましたが、本人は感じていません。(音声治療は耳が良くなければ成り立ちません!)
実は、多くの音声障害の方々、特に発声時に詰まったり声を出し難かったりする人には特徴があります。
詰まり程度を数値で表し、例えば10詰まった感覚と2詰まった感覚では、当事者にとってはどちらも「詰まって出し辛い」のひとくくりになり、ほとんど同じように感じるのです。
閾値の問題です。
これは音声の特徴でもあります。
世界の誰もが知っている優秀なオペラ歌手(故ルチアーノ・パヴァロッティなど)でさえ、他者の耳(専属のボイストレーナー)を通して日々刻々と変わる声の状態を測っているのですから。
実際、ひとは自分の声を聞くとき、口から発した音より早く下顎の骨伝導によって聞いてしまいます。
それゆえ、録音した声が自分の声でないような気がするのです。(レコーディング機材の性能によって左右されますが、録音した声こそ他の人が聞いているあなたの声に近いのです!)
このように、機能性の音声障害が治り難い要因の一つとして、聞こえの感性の存在があるのです。
さて話が若干それてしまいましたが、その患者様は軽度の痙攣性発声障害で、ナミがあるものの、毎日、気になり苦しんでいました。
前回の11回目の施術後、何となく楽になった気がして、その後、詰まった感覚を数日、完全に忘れていました。
後日、そのことに気付き「そういえば、このところ楽だったんだ・・・」と過去を思い起こした瞬間、ギュギュッと声が詰まって元に戻ってしまったそうです。
その後は、好調とはいかないようでしたが、治るんだという自信をつけたようです。
この先、日常生活で苦にならない程度まで改善できるのではと信じています。
医師から、どんなに軽症でも痙攣性発声障害そのものの完治はないと聞いています。
すべてのケースに当てはまるものではありませんが、軽度の痙攣を筋肉の活性化によって乗り越えられる可能性があることも、経験上ですが、事実のようです。
多くの苦しんでいるSD患者様が一人でも多く改善されることを強く願っています。

軽度の痙攣性発声障害の改善報告_e0146240_19364360.jpg





ボイスケアサロン
會田茂樹(あいだしげき)






追記1:音声専門の医師を多く知っていますが、やはり音を繊細に聞き分ける耳を持っている先生が最も患者様の苦しみを分かっているように感じます。一色信彦京都大学名誉教授は痙攣性発声障害の患者様の声の大変さを世界で一番理解しています。(海外の学会へ行くと、一色先生と握手をしたい一緒に写真を撮りたい外国人ドクターでロビーはごったがえし、前に進むことができないほど超有名なのです!)






追記2:中等度および重症の痙攣性発声障害(ボトックス注射や喉頭枠組み手術が必要だと診断された症例)は扱っておりませんのでご了承くださいませ。軽度ならば改善の可能性はあります。手術を回避したい患者様が当サロンにお越しになりますが、症状に良悪の変化はあっても完治は難しいと存じます。その点をご留意いただき優秀な音声専門医に治療をお願いしてください。よろしくお願い申し上げます。






~メッセージ~
この記事は往時の外喉頭外来〔医師と共同研究〕時のデータに基づくものです。よって、不確かな蓋然性も高く、内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。現在は病気に対するアプローチは行っておりません。声の不調は医師にご相談ください。
by aida-voice | 2008-07-23 23:57