2008年 04月 22日
甲状腺手術後の発声問題 2
甲状腺摘出後の瘢痕による声の出し辛さの改善
2008年3月14日投稿の続編
癌や腫瘍など手術によって甲状腺を摘出した人が、反回神経を傷つけていないにもかかわらず、声が出辛いとか高音が出ないと訴えることがあります。
会話時、嗄声がひどい訳でもないため、他人は問題ないように思われるようですが、ご本人は大層苦しんでいます。
そのような患者様が會田ボイス整骨院に多く来院され、声の改善を目指して様々な施術を行いっています。
甲状腺を摘出する際、甲状腺上にある筋肉(広頚筋、胸骨舌骨筋、肩甲舌骨筋など)は切られたり傷ついたりします。
その部分が瘢痕となり癒着することがあるのです。 Figure1
喉頭の筋肉が複合的に動いて声が作られることから、このような瘢痕によって、筋肉の動きが封じ込められたりバランスが崩れたりします。
その結果、反回神経麻痺がなくても、声が出し難くなるのです。
また、ときに甲状腺の下もしくは脇に存在する輪状甲状筋も巻き込まれます。
これが高音発声を困難にさせます。
さらに発声関与筋群(特に声帯を動かす外喉頭筋・内筋・前筋)の筋線維の萎縮によって運動性が低下するケースもあるようです。
当院でも左右(健側患側)差等の Difference in muscle situation を発見したこともあります。
耳鼻咽喉科や甲状腺専門病院で詳しく検査しても、声帯そのものや声帯の動きには悪いところがないため、これまで治療の手立てがほとんど無い状態だったのです!
【実際の施術詳解】
外皮から創の周囲を丹念に触診すると、ほんの小さな腫瘤を探し出すことができます。
※触診が正確にできなければ効果はまったく期待できません。この点をご注意くださいませ。
Figure2
それらを3MHz&2.00W/㎠の超音波を照射して、1秒間に300万回の微細な振動を与えジュール熱を加温します。 Figure3-1 3-2 3-3 3-4
なお、3MHzより低い周波数での甲状軟骨翼への照射は、反射を誘発し急激な咽を引き起こすことがありますので十分注意してください!
(その他にも電療を行いますが、ここでは割愛します)
その後、精密な喉頭クリニカルマッサージを施します。
手術後の軟部組織は健常側より脆弱になっていることが多いので細心の注意を払ってください。 Figure4-1 4-2
これらの施術によって瘢痕が小さくなり、複数回の施術によって瘢痕が消失し、声が出しやすくなります。
甲状腺手術直後は創口が安定していないので、術後3~6か月ほど経過してから施術を始めると最も経過良好の結果が得られます。
加えて、術側の外喉頭筋や胸鎖乳突筋もかなり筋緊張を起こすケースもあります。(韓国人テノール歌手 ベー・チェチョル氏もこの類例 NHKテレビで複数回の放映済み)
さらに鎖骨下筋の緊張も続発します。 Figure5
その部位も緩解させるよう心掛けると良いでしょう。
↑
この重要な新所見に関しては、いずれ詳細にご報告いたします!
手術による甲状腺摘出後の患者様は本当に苦しんでいます。
周囲の方々の優しい心づかいを何卒よろしくお願い申し上げます。
Figure1
Figure2
Figure3-1
Figure3-2
Figure3-3
Figure3-4
Figure4-1
Figure4-2
Figure5
ボイスケアサロン
會田茂樹(あいだしげき)
~メッセージ~
この記事は往時の外喉頭外来〔医師と共同研究〕時のデータに基づくものです。よって、不確かな蓋然性も高く、内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。現在は病気に対するアプローチは行っておりません。声の不調は医師にご相談ください。
by aida-voice
| 2008-04-22 00:11