2008年 03月 07日
旧 會田ボイス整骨院 ホームぺージ ボイスコラム5
ホームページ改新にあたり、2005年に発表した會田ボイス整骨院ボイスコラムを載せます。
このコラムは当時の最新発声医学をお伝えしてきました。
既に古い情報となってしまい、現在とは多少異なる見解もあります。
しかし往時の最先端を偲んで訂正せずに載せることをご了承ください。
その点をご考慮いただき、お読みくださいますようお願い申し上げます。
5:発声はスポーツだ!・・・筋肉を活かしたアクティブボイス
私事ですが、四十歳を超え初めて本格的に声楽を学ぶチャンスにめぐりあいました。
不惑の歳ゆえプロ歌手など目指していませんが、十代の学生のように理由も分からず形而上の概念だけで練習するのではなく、これまでのオペラマニアと医学知識を総動員させて、「どうすれば響くのか?」「輝く高音の出す方法は?」など、真剣に研究しました。
まず、喉と声にかかわる書物や医学書を読み漁ったのです。
さらに咽頭模型を購入し立体的に精査しました。
それだけでは足りず、機能を理解するため、東急ハンズで材料を買い揃えてオリジナルの模型を作ったりもしました。
そのとき、ひとつ気付いたことに、意外にも関連書籍の少なさがあったのです。
「なぜ、分りやすい書物が少ないのか?」「どうして『これが発声の真髄だ!』と確立されたバイブル的書籍がないのか?」などと煩悶しました。
熟考し、そして読み解くにしたがって答えが分ったのです。
それは、≪発声はスポーツに似ている≫ということだったのです。
この言葉に驚く人も少なくないかもしれませんね。
すでに記載しましたように、音声は声帯が振動して発声しているのは誰もが知るところです。声帯が、ギターの弦やクラリネットのリードのような金属とか木の物質でできていると思っている人はいないでしょう。
そう、声帯は粘膜と筋肉でできている。
その声帯を震わせ、咽頭や口腔の各部で共鳴して構音(または調音)しますが、それには多くの小さな筋肉が関わっていることも知りました。
つまり、筋肉を動作させて声を出しています。筋肉の動き次第で、輝く高音を出したり響き渡る低音を出したりすることができるのです。
ただし、喉周辺の筋肉は小さく、確かに随意筋ですが、自分自身では存在を意識できないため、鍛えたりストレッチングを施したりするのは、はなはだ困難なのです。
そこで、それらを可能にする方法や施術はないかと研究に勤しみました。
「発声と似ているもの似ているもの・・・、そうだスポーツだ!」と閃いたのです。発声はスポーツに似ている事実を悟ってからというもの、多種多様の筋肉を活かして役立つ手段と技術を発見しました。
もちろん筋肉を活かすだけではスポーツも発声も100%にはなり得ません。
当たり前のことです。筋トレのみで、大リーガーのイチロー選手や松井選手のようには決してなれません。
しかし、彼らは筋トレやストレッチングなど基礎トレーニングを疎かにしない不断の努力によって現在の地位に至り、それを死守しています。
ところで、よく質問を受けますが、良い声を出すにはどのくらいの量や時間のトレーニングを必要とするのでしょう。喉の周りの筋肉は小さく複雑です。また、声帯は12mm~20mmの小さな組織です。
これを伸展させたり弛緩させたり、喉頭室や咽喉のポジションを的確にするのには大きな力は要りません。しかし、ここぞと言うときや美声を求めるなら、筋肉の動きと反応そしてスタミナはとても重要になります。
筋力に自信が持てるようになることで、筋肉や体をリラックスさせる能力も備わります。それは、コンサートや舞台発表などの本番で、緊張せずに最大の力を発揮できるということです。
研究の結果、最良の喉の状態であるアクティブボイスにするためのボイスメンテナンスを見出したのです。
また、若干閑話となりますが、スポーツ選手は往々にして歌の上手な人が多いものです。
独自に推察してみますと、運動自体が声帯周辺筋肉群にもプラスの作用を促すものと考えられるのです。
筋肉強化やストレッチングなどの基礎トレーニングだけでなく、スポーツ競技全般に言えることは、テンポ(速さ)とリズム(律動)の存在でしょう。
野球はピッチャーの投げたボールをバッターがタイミングを合わせて打つ。サッカーはチームプレーヤー同士で素早くパスしてゴールへ導く。相撲や剣道は一瞬の立会いの間合いが非常に大切です。陸上競技の100m走でも、スタートの時機が肝要で、足の歩幅や手の振りのテンポがタイムに影響します。
このように、どのスポーツでもテンポとリズムが重要なのです。
以前、ある小学校合唱部の喉の相談にのったことがありました。担当教師から、リズム感の悪い生徒の改善方法を求められました。そこで、合唱練習の前に毎回、鬼ごっこまたはドッチボールをアップトレーニングとして取り入れるよう提案したのです。
数ヶ月後、その先生から「以前に比べ、生徒のリズム感が格段に向上した」との報告をいただきました。
このことからも、スポーツによって歌唱時のテンポとリズムが良くなり、さらに発声そのものも安定するのです。
さあ、もう一度お伝えします
発声はスポーツだ!
~メッセージ~
この記事は投稿時の情報・見解・施術法であり、最新・正確・最良でない可能性があります。内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。會田の理論と技術は毎日進化しています。
by aida-voice
| 2008-03-07 22:16