2008年 04月 05日
重症筋無力症
当院には重症筋無力症(Myasthenia Gravis 略してMG)の患者様も複数名いらっしゃいます。
主たる特徴として、筋力低下や球症状によって構音障害や嚥下困難が現れます。
私にはこの難病を治す力も資格もありませんが、喉頭の筋肉の観点から、ほんの少ししゃべり易くしたり食事を楽にしたりできればと願って施術しています。
MGにおける喉頭諸筋の様子を詳しく記した有用な医学文献が見つからないため、現在、通院される患者様のために深く研究しています。
ここまで分かった筋状態や内容の一部をご報告します。
喉頭周辺筋の筋力低下は、とくに夕方が著名で、会社員の場合は週初めより週末に向かって疲労度が蓄積し症状が増悪します。
精密な触診による筋状態の特徴は、一言で言うならば「弛緩と緊張が混在している」につきます。
ダイレクトに触診可能な肩甲舌骨筋や胸骨舌骨筋などの甲状軟骨近辺にある筋群はほとんど弛緩しています。
触ると、マラソンを走り終わったような下肢の筋肉のように淀んだ浮腫みを感得できます。
また、舌骨上筋群の表層も弛緩しているのですが、その奥にある茎突舌骨筋や茎突咽頭筋などの喉頭をホールドしている深部筋が非常に硬くなって(過緊張)、舌の動きや発声に悪影響を及ぼしているような気がします。
そのため、しゃべるとき詰まる感じがする、息の通路が細く感じるなどの訴えも納得できます。
あえて結論付けるなら、過緊張性発声と低緊張性発声の複合の様相でしょう。
次に、エコー血流計で外頚動脈、上喉頭動脈、上甲状腺動脈の血流量や血流速度を計ってみましたが、何度試みても正確なポジションを把握できない状況でした。
改善のための施術は、過刺激を与えない非常にやさしいものとなります。
再び微細な触診で筋肉の状態を検査します。
「正確に筋肉を知ること!」 これが最も大切です。
そのためには時間と労力を惜しまず何度も何度も触ること≪アクティブ・タッチ≫です。
そして施術を開始します。
弱い低周波3V1200Hzを10分弱通電します。
その時の通電する部位と面積が最も重要なポイントです。
この2点を外すと効果は全くありません。
これも丹念な触診で通電場所を探し当てます。
時に症状に応じて超音波治療を行います。
筋緊張を伴う舌骨上筋群深部筋をターゲットとするため3MHz小面積プローブを使用します。
出力は50%に抑え0.75W/m²で、下咽頭収縮筋甲状軟骨翼付着部から顎二腹筋後腹乳様突起部まで左右3分間アプローチします。
最後は喉頭クリニカルマッサージです。
血行不良気味の弛緩した筋の循環機能回復手技と、緊張している筋硬縮の緩解を目指します。
ビロード・タッチのやわらかくやさしいマッサージを丁寧に実践します。
術後は「あぁ、生き返った」「のどに空気がたくさん入ってくる」「しゃべるのがとても楽になった」「つばが飲み込みやすくなった」「舌が下に張り付いていたが動き出した」などの感想をいただきます。
私は医師ではないので、MGの治療をしようなどの大それた考えは持っていません。
喉頭症状(発声や嚥下)に関して少しでも楽になればと強く願っているだけです…
MGの喉頭諸筋に関するデータや研究成果をお持ちの方は、なにとぞご教示ご教導くださいますようお願い申し上げます。
さらなる考究を深め、お役に立てる情報を再びお伝えできればと存じます。
最後に、重症筋無力症の患者様のご回復とご多幸を心より祈念しております。
ボイスケアサロン
會田茂樹(あいだしげき)
※お知らせ
当院では重症筋無力症の治療は行っておりません。
医師の指導のもと発声効率や嚥下容易を目指した施術を行っております。
ここに記載した内容は會田茂樹の触診感覚に依るもので医学的に証明されたものではありません。
追記:嚥下改善の情報は ⇒ 「嚥下マッサージ」
~メッセージ~
この記事は往時の外喉頭外来〔医師と共同研究〕時のデータに基づくものです。よって、不確かな蓋然性も高く、内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。現在は病気に対するアプローチは行っておりません。声の不調は医師にご相談ください。
by aida-voice
| 2008-04-05 07:29