2008年 04月 04日
ソプラノ歌手の理想的な喉
これまで大勢のソプラノ歌手の喉を触診してきました。
有名な外国人歌手から、趣味で歌っている一般的日本人まで…
一流音大を目指す小中学生から、92歳でなお綺麗な声で歌いたい合唱団員まで…
喉はそれぞれ異なり、同じものは一つもありません。
私はよく喉を楽器にたとえます。
量産されたチープな楽器は個性や楽器能力が高くありません。
しかし、人間の楽器(喉頭)は、実に巧妙かつ洗練されて出来ています。
ところが、その素晴らしい楽器を使いきっていない歌手が多いのも事実です。
今日は、ソプラノの声質の違いによる喉頭や筋状態をお話しましょう。
コロラトゥーラ(レッジェロ)
甲状軟骨の大きさ:やや小さい
甲状軟骨の形状:広角で、両翼がやや内側へ入っている
舌骨の大きさ:甲状軟骨外径より小さいことが多い
舌骨の高さ:茎突舌骨靭帯の短縮傾向があって高位
外喉頭筋の状態:輪状甲状筋の筋腹が十分触れられる
舌骨上筋群の状態:ややTonusでも筋力としなやかさでカバーできる
難点:適切なケアをしない場合、20代後半以降になると各筋力が低下し、喉頭の動きがTightになってコロラトゥーラを歌えなくなることがある
リリコ&リリコ・スピント
甲状軟骨の大きさ:普通(もしくは小さいが縦長構造)
甲状軟骨の形状:やや鈍角で、立派
舌骨の大きさ:甲状軟骨と同径
舌骨の高さ:Nomal
外喉頭筋の状態:柔軟性ある筋が望ましい
舌骨上筋群の状態:同上
難点:過緊張発声を伴った場合、①中低音域にわたるムラのない音量維持が困難、②咽頭収縮筋のTonusによって輪状甲状関節の可動域が狭まり高音が出なくなる
ドラマティコ&スフォガード
甲状軟骨の大きさ:大きい
甲状軟骨の形状:広角ではあるが、甲状軟骨エッジが大きく張り出している
舌骨の大きさ:甲状軟骨と同径またはやや小さい
舌骨の高さ:高さは様々である
外喉頭筋の状態:柔軟性ある筋が望ましい
舌骨上筋群の状態:同上
難点:筋力不足に陥った場合、喉頭を定位置に保持するのが大変なのか、甲状軟骨が奥上に引き込まれて位置することが多々あり、高音がかすれ粗野な音色になりやすい
なお、上記は、多くの優秀なソプラノ歌手に触れて感じた総合的な私的評価です。
これに当てはまらない喉でも、歌の上手いソプラノ歌手はたくさんいらっしゃることをお断り申し上げます。
すべての音楽は楽器の良さだけで決まるものではありません。
十分に訓練された技巧と音楽性がマッチしたとき極上の音楽になります。
ただ、音の鳴りの悪い楽器でトレーニングを続けた場合、小手先のテクニックに奔走するケースが見受けられます。
できるなら素晴らしい楽器で演奏したいものですね。
あなたの喉も大切な楽器なのです。
ボイスケアサロン
會田茂樹(あいだしげき)
~メッセージ~
この記事は投稿時の情報・見解・施術法であり、最新・正確・最良でない可能性があります。内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。會田の理論と技術は毎日進化しています。
by aida-voice
| 2008-04-04 23:03