2008年 03月 15日
遂に日本音声言語医学会で発表
第52回日本音声言語医学会総会で「喉頭クリニカルマッサージの取り組み(Laryngeal massage)」を発表しました。
平成19年10月26・27日 国立身体障害者リハビリテーションセンター(埼玉県所沢市)
2007年10月28日発表
これが、會田茂樹の医学会デビューでした!
そのときに口演した全文言を公開します。
喉頭クリニカルマッサージの取り組み…。
本日は、始まって間もない喉頭クリニカルマッサージの大まかな流れを簡単にご報告させていただきます。
私は医師でも言語聴覚士でもなく、骨筋腱等の外傷をケアする国家資格を持つ柔道整復師であり、アマチュアのテノール歌手です。
自分自身や知人歌手の喉頭を、外皮から発声効率を高めるアプローチとして、喉頭クリニカルマッサージが誕生しました。
現在、当院ではテレビや舞台で活躍している歌手、俳優、歌舞伎役者、アニメの声優、TV局アナウンサーの方々に施術を行っております。
また、一色クリニックで、手術の対象にならない声帯結節や機能性発声障害にも有効であることが分かり、平成19年1月から喉頭クリニカルマッサージ外来を開設しました。
施術の流れを簡単に説明します。
まず、アプローチの基本は触診です。
喉頭の細かい筋肉を指先で判別することをアクセスと言います。
アクセス可能部位は、喉頭周辺の筋肉や腺などの軟部組織です。
筋の起始停止やモーターポイントの位置、硬縮部、隆起部、左右差などを探査します。
ただし、深層の組織への正確なアクセスは難しく、また個体差が激しいため不能な場合も多々あります。
そのアクセスのためのトレーニング方法です。
何よりも指先の練磨が必要です。
熟達方法として、まず、多くの軟部組織に触れることです。
私は平成2年の開業以来、延べ30万人以上の四肢や躯体に触れ、触診に慣れてきました。
次に、適当な大きさの砂粒10粒を大きい順に並べ替えルーペで確認することや、髪の毛を紙厚の薄いノートにはさんで形状を探査し、1枚2枚・・・5枚とページ数を増やして指先の感覚を磨きます。
日々のトレーニングや解剖による検証がかかせません。
ビデオ画像はアメリカ・メイヨークリニックで、摘出喉頭の新鮮な筋肉や各軟部組織を触覚検証したものです。
次に実際の施術です。
多くは最初に物理療法を行います。
頚部前面筋をストレッチするための専用間欠牽引機や僧帽筋部のホットパック、低周波や微弱電流などの電療を用いて、発声に関与する軟部組織を柔和にします。
そして、喉頭クリニカルマッサージを敢行します。
喉頭周辺、顎関節周囲、頚背部などの個別の筋や各組織を丁寧に探り当てて、全体およびピンポイントのマッサージや押圧、ストレッチング、筋トレなどの手技を行います。
さらに甲状軟骨をやや反転させて披裂部内のマッサージを行うこともあります。
気を付ける点として、頸動脈洞反射による失神、過加圧による軟部組織(外喉頭筋群、舌骨上筋群、迷走神経、反回神経、甲状腺、耳下腺、顎下腺、上喉頭動脈など)の損傷、甲状腺疾患に対する禁忌などが挙げられます。
写真は、反回神経麻痺に対する甲状軟骨形成術ⅠプラスⅣ型後の歌唱力回復を目指した、ドイツ・ザールランド歌劇場、専属テノール歌手、ベー・チェチョル氏の施術をNHKが2週間にわたって取材した模様です。
なお、これらの写真は本人およびプロモーターの許可をいただいて本日供覧しております。
施術の様子です。
①平成19年1月~5月までの新患86名の再来院率は100%で、一回の施術で即時効果のある症例が多く、初診時の最後に次回の予約を希望して行きます。10月現在では、日本全国および海外からの遠方来院者増加に伴い単発受診者が存在します。
②患者自身が自覚的に喉頭周辺の筋緊張の緩和を実感し、発声や歌唱が楽になります。また、嗄声の減少、喉頭痛の緩和、嚥下がスムーズになる報告も多数ございます。
まとめ。音声障害は、精神的要素が無視できず、それがすぐ筋肉に反映してくるため、これらの施術によって、機能性発声障害や神経性構音障害などの症状改善や回復の契機になる可能性があります。
そして、問題点としては、1:客観的正確なデータを得るのが難しいこと。2:一回の施術の効果が長続きしないこと。3:触診や手技のテクニックの習熟が難しいことです。
改善すべきところや問題点は山ほどありますが、大勢の医師の指導を受けながら討究が加速度しながら進んでおります。
これまでに欧米でもアロンソンやロイなどが喉頭のマッサージを試みていますが、このように綿密なマッサージは行っていないようです。
実際のメカニズムがなぜ効くかは現時点では簡単には分かりませんが、効く事は予想以上で、研究観察のデータの積み重ねで大いに発展の余地があると考えます。
この先、喉頭クリニカルマッサージを正しく確立していくには、医師や言語聴覚士である皆さまのお知恵やお力添えが不可欠でございます。
何卒ご教導賜りますようよろしくお願い申し上げます。
本日は、当該施療の大まかな流れをお伝えさせていただきました。
最後に・・・、喉頭クリニカルマッサージ中の梨状陥凹から披裂部付近のファイバー映像を供覧して終わります。
当日、写真を多用した10枚のスライド写真に4つの動画と、ビジュアル面でも豊富な講演を行いました。
国立国際医療センターの田山二朗先生の座長進行の元、東京ボイスセンターの佐藤麻美先生や東京医療センターの角田晃一先生から的確なご質問を頂戴いたしました。。
稚拙な内容にもかかわらず多くの医学者からご興味をいただき、学会終了後、当院見学希望の先生が多数いらっしゃいました。
音声を専門とする医師や言語聴覚士の皆さまは、みな温和で非常に優秀な御仁が多いことに気付きました。
やはり『声』という繊細なモノを扱っているからでしょうね。
今回、この発表が完遂できたのは、一色信彦先生、金沢英哲先生、長井慎成先生、萩野仁志先生、上村憲一郎先生、後野仁彦先生のお力添えの賜です。
この場を借りて心より感謝申し上げます。
ボイスケアサロン
會田茂樹(あいだしげき)
~メッセージ~
この記事は往時の外喉頭外来〔医師と共同研究〕時のデータに基づくものです。よって、不確かな蓋然性も高く、内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。現在は病気に対するアプローチは行っておりません。声の不調は医師にご相談ください。
by aida-voice
| 2008-03-15 00:18