最新LDP論 Vol.2


あなたはLDPを知っていますか?


LDPとは、Larynx(ラリンクス)Deep(ディープ)Position(ポジションの略。


ラリンクスは喉頭、ディープは奥深い、ポジションは位置で、これは會田が作った造語です。


つまり、「喉が奥に位置している」となります。


では、実際に奥に入っているのかと問われると、イエスともノーとも言えます。


これには、まず、喉頭の特異性を知る必要があります。


喉頭は空中に浮いています。


206個ある骨の中で、唯一、関節を形成しない舌骨が、それを物語っています。


甲状軟骨や舌骨から放射線状に伸びる筋肉たちのベクトルを調べると、やや後方()に向かっています。


そのベクトルが人それぞれで、また、筋肉の形状や収縮率も個体差が激しいことがわかっています。


よって、喉頭の位置に正解がないため、イエスでもありノーでもある、曖昧な解答になるのです。


つまりLDPとは、外喉頭の位置や発声関与筋の様子を表している文言に過ぎません。


さて、LDPの状態では、喉の詰まり感や発声および嚥下摂食の不快を覚えるケースが多くなります。


これは病気かと問われると、ノーです。


耳鼻咽喉科では「問題ない」「気のせいだ」と言われ、心療内科では「心の疾患」として扱われることもあります。


耳鼻咽喉科では、喉頭ファイバーを使って声帯ヒダなど内喉頭を調べます。


LDPは外喉頭の状態を示すだけの言葉。


しかも、器質的には問題なく、痛みも皆無ゆえ、病気ではありません。


病気ではないため、医師の医療範疇から外れます。


精神疾患の場合、主に、人との交流が減って会話も減り(躁状態を除く)、発声関与筋の筋力が弱くなったり硬くなったりします。


その状況が長く続くと、LDPに陥る人もいらっしゃいます。


LDPだから精神疾患になるのではなく、精神疾患ゆえにLDPなりやすくなるのですね。


よって、この場合のLDPも病気ではありません。


なお、精神疾患が快癒または寛解しても、LDPが改善しないことが多々あります。


それは、LDPの状態が長く続き、癖化してしまったと考えられます。


くどいようですが、LDPは喉の状態を表すもので、医学的な病気とは一切関係ありません。


例えるなら、一般的によく言われるような「あなたは体が硬い」と同じような意味合いでしょう。


そう、喉の筋肉が、ちょっと硬いだけ。


そして、喉の位置が、ちょっと奥にあるだけ。


これは、癖のようなもの。


残念なのは、LDPによる喉の詰まり感を他人に話しても、理解してくれないこと。


親兄弟や恋人に伝えても無駄。


なぜなら、LDPの状態を経験していない人には、絶対わからない感覚だから。


さて、LDPの判断基準です。


最初に断っておきますが、各人の異なる感覚を対象にしているため、曖昧なチェック法しかありません。


以前は、筋硬度計を用いていましたが、毎度毎度、誤差が大きいため廃止しました。


と言うのも、喉頭の位置および発声関与筋の動きや硬さは、日によって、いいえ、時間と共に刻々と変化し、どれが正解であるのか、わからないからです。


並びに、心情にも反応しやすい。


リラックスしているときの発声関与筋はのびやかに動いて柔らかくなり、緊張しているときはギュッと縮んで硬くなり、驚くほど大きく変わります。


ナミがある。


これも、吊り下げられ空中に浮く喉頭の特徴の一つですね。


よって、今は、グライディングテストの検査一本です。


クリック音の有無、クリック音が鳴った部位、クリック音の大きさや音の様子などで、LDPをつまびらかにしていきます。


繊細かつ丁寧に触知すると、どの筋肉が硬くて、甲状軟骨板のどこが当たっているのか、手に取るように判断できます。


ただ、改善方法が厄介。


先ほども述べたように、これは生まれつきのベクトル特性や筋肉の癖なので、何かをすれば一発で改善することは、ほぼほぼ皆無です。


小さな発声関与筋に記憶させるべく、精密に一つひとつ筋線維をほぐしたり、ストレッチしたりと、地道な処置(ボイスケアアプローチ)が必須となります。


稀に、ボイスケアサロンに23回通っただけで「良くならなかった」と苦情や批判を述べる方がおります。


最初に重要な事実をお伝えします。


「そんな簡単には改善しない」


「かなりの回数と時間と費用がかかる」


「すぐに元に戻る可能性がある」


ここ数年でボイスケアの技術もどんどん進化しており、以前よりは短期間での改善が望めるようになりました。


それでも難しい。


これが現状です。


最後に、なぜLDPの存在に気づいたのか?


それは、わたしがLDPだったからです…






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追記1LDPは病気ではありません。放っておいても問題ありません。結局、喉の癖だから。わたしには、全員に等しく効果がある施術を提供できる力量はありません。よって、時間もお金もかかる『覚悟』がある方のみ、お越しください。その際は、わたしの持てる全精力を尽くして対応させていただきます。





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追記2:ここに記載した内容は、最新LDP論の一部にしか過ぎません。わたしには文才がないため、文字より口述が好み。さらなる詳細な続きはボイスケアサロンで!




追記3LDPに関与する喉頭周辺筋をお伝えしましょう。これらを探し当てるのに、多大な労力(時間と費用)を要しました。安易にお示しして良いものかどうか、迷いましたが、ボイスセラピストの先生方の役に立つならと考え、ここに供覧します。どうか、LDPで困っている全国の皆さまを、お助けください。まずは、肩甲舌骨筋です。観察と触知で、膨隆度合いや左右差をチェックします。その際、胸鎖乳突筋が肩甲舌骨筋の動作性を邪魔していないかも、注視しましょう。ときどき広頚筋の関与を問われますが、下層の筋肉よりも、皮膚への影響の方が大きいため、あまり深く考慮しなくても良いと思います。さあ、いよいよ本命。顎二腹筋後腹と茎突舌骨筋ですね。この部位は丁寧かつ繊細に触知してください。また、破格(個体差)・左右差・時間差・体調差・精神状態差など、ほんの小さな環境要因で、大きく硬度や運動性が変化します。それを正確に見定めるのが至難の業。修練を積み重ね、繰り返し触知訓練し、そしてまた修練を積み重ねる。飽きるほどの鍛錬が必須となりますが、諦めなければ習得できるはず。LDPでお困りの皆さまのためにも、是非、やり通してください。最後に、自己触知は、かなり難しい事実をお知らせしておきます。ターゲットが反転するため、指先の感覚が鈍ります。また、自分の喉は知っているものと無自覚に予想を立ててしまい、客観性に欠ける触知検証に陥ってしまいます。まだまだお伝えしなければならない事項が山ほどあります・・・






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ボイスケアサロン

會田茂樹(あいだしげき)






by aida-voice | 2024-03-23 00:02