2019年 02月 15日
えっ、出生時に臍の緒が巻きつき・・・
ご許可を頂いて驚愕の事実をお伝えします。
ハスキーボイスが魅力的な某女性ボーカルの話。
高名なボイストレーナーの紹介で当サロンにお越しになりました。
今回は発声力(マイク乗りとピッチコントロール性能)向上が目的。
最初に声を耳にしたとき、とても「抑圧された嗄声」であると感じました。
グライディングテストによるクリック音を確認、と同時に、舌骨の異様な深奥状態に驚きました。
舌骨引き出しチェックの際、舌骨体後端に指がかからず、簡単に引き出せない。
こんなケースは初めてでした。
これは、舌骨が頚椎方向に深く移動したため、①咽頭共鳴腔の空間が狭くなり音色や響きが損なわれマイク乗りが悪い、②披裂軟骨小角に圧がかかり声門が常に開いて嗄声が生じている、③上部LDPによる輪状甲状関節の可動域減少に伴うピッチ動作の不具合、が考えられます。
詳しく彼女の話を聞いてみると、出生時の起因が判明。
彼女が生まれたとき、臍の緒(へそのお)が首にきつく巻きつき、30分も仮死状態だったそうです。
運よく蘇生し、その後、元気にお過ごしになっています。
やはり、幼少期から嗄声(ハスキーボイス)であったとのこと。
外部の力によって舌骨が奥まり、時間をかけ上部LDPが固着してしまったと考えられます。
その後の丁寧な触知検査で、舌骨大角の位置を探り出すことができました。
ただ、長期経過と、その周辺に結合織線維が多く存在しているタイプゆえ、改善は簡単でないと思われます。
ご本人は、ハスキーボイスを個性と容認しているため、嗄声改善よりも、マイク乗り(響き)とピッチコントロール性能の向上を目指すプログラムを提案しました。
末永いご活躍を心からお祈り申し上げます。
●赤斜線部 発声関与筋 常時Tonus ●緑破線部 舌骨 上部LDP ●青破線部 胸骨舌骨筋 発声時Floating
追記:ボイスケアサロンに行けば「思い通りの声に仕上がる」と考えている方がいらっしゃいますが、それは間違いです。外喉頭にリラックスを与え、発声関与筋の柔軟性や運動性を高めることはできますが、希望通りの発声になるかどうかは、アプローチを繰り返さなければ、誰にもわかりません。それぞれの喉頭の形状・構造・特性などによって、改善の難度や可否が決まってくるから。今回のケースでも、彼女のハスキーボイスは良くならないと思っています。たとえ耳鼻咽喉科で声帯が閉じないと指摘されても、病気の場合を除き、治療の対象にはなりません。やはり、その解決策が無いから。したがって、ハスキーボイスを受け入れ、それを自分の素晴らしい個性とみなし、それを活かした歌を歌う。これこそが、誠の芸術家ではないかと思います。よって、彼女は正真正銘のアーチスト〔シンガー〕です!
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會田茂樹|あいだしげき