発声事故《舌》


ある歌手の実話。

指導者が舌をタオルにくるみ、前上に力強く引っ張り出しながら高音発声したところ、その後、発声困難に陥りました。

口腔外科で舌下神経麻痺と診断されました。

右舌下神経を切断したようで、舌は右に傾き、徐々に萎縮してしまいました。

言語障害と共に嚥下障害も出てきました。

そこで、神経修復術を受けることになりました。

当初は神経の直接縫合を目指しましたが、切断部周辺のテンションが強すぎたため、術式を変更し、腓腹神経の神経移植を行ったそうです。

日常会話と嚥下摂食はやや改善したものの、残念ながら、歌唱のコントロール性を取り戻すことはできませんでした。

知人歌手の紹介でボイスケアサロンに来ました。

わたしは外喉頭の発声関与筋には多少の知識や技術を有していると自負できますが、舌は深く勉強していません。

改善を促すために、舌動脈の血流増進を目指す舌骨上筋群へのアプローチを考えてみましたが、固く強縮した筋肉からは難しく、当サロンではお役にたてないとお伝えしました。

実際、以前にも、舌癌手術後の発声能力向上を目指す施術をしたことがありましたが、残念ながら、改善は叶いませんでした。

力不足を申し訳なく思います。

このような悲惨な発声事故がないよう、音楽教師やボイストレーナーの先生方は充分に留意してください。

特に、喉や舌に触れながらの発声は危険がいっぱいですからね・・・




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喉と声のスポーツトレーニング&リラクゼーション
 ボイスケアサロン
 會田茂樹|あいだしげき 




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~重要なお知らせ~ ●外喉頭から考究する発声の理論と技術は日々進化しています。この記事は掲載時の情報であり、閲覧時点において最新・正確・最良でない可能性があります。すべての記事の内容に関し、一切の責務を負いません。●記事の内容は万人に適合するものではないため、当サロンの施術に関し、記事の内容通りの効果や結果は保証も確約もしておりません。〔当サロンでは役立てないと判断された場合、理由を問わず施術をお断りします〕●声や喉の不調は、最初に専門医の診察を受けてください。歌唱のトラブルは、最初にボイストレーナー(音楽教師)にご相談ください。





by aida-voice | 2017-12-05 15:50