さあ、声を大きくしよう!


ハイファイオーディのスピーカー試聴比較をしていると、いつも気づきます。
ひとは、スピーカーの性能よりも、再生音の大きなスピーカーを、より良い製品と感じてしまうことを。
声も音です。
この原理が当てはまります。
ある声優&ナレーター〔著名なプロ〕に依頼して実験しました。
詩の朗読を録音しました。
発声条件は、良い声で小さな声。
次に、同じ録音環境下で、一般のひとに録音をお願いしました。
発声条件は、普段の声で大きな声。
その二つのデータ音を、老若男女20名の被験者に聞いてもらいました。
質問は「どちらの声が良い声に感じましたか?」です。
その結果・・・
プロ声優&ナレーターの声を選んだのが7人。
一般人の声を選んだのが13人に上りました。
常識的な予想なら、音量に関係なく、プロの方が良い声に聞こえると考えるはず。
しかし、実際は、声の大きさが声の良さと感じる基準の多くを担っていたのです。
声から離れ、無茶な例えとは思いますが、わたしの身に感じた経験があります。
それは弁当の味のこと。
なだ万と分とく山のお弁当を差し入れで頂戴したことがあります。
なだ万のお弁当は、見た目に豪華で美味しそう。
一方、分とく山のお弁当は、地味。
食べてみました。
この二つを比較したとき、簡単に表現するなら、なだ万は「輪郭のはっきりした華麗な味わい」、分とく山は「繊細で奥深い味わい」でしょうか。
優劣は無いはずですが、口に運んだ瞬間、なだ万は主張します。
もし選択を強いられたら、多くの方は、なだ万を選ぶのではないかと思います。
話が声から飛んでしまいましたね。
さて、もうおわかりのように、大きな声の方が歌唱にも生活にも若干有利に働くのです。
そこで、大きな声とは?
これもスピーカーから想像ができます。
なぜなら、ヒトの声は、楽器やオーディのような物理現象と運動やスポーツのような機能現象の組み合わせによって成り立っているからです。
スピーカーを用いて、音を大きくしたい。
どうすれば良いでしょう?
方法は二つあります。
まず、アンプのボリュームを上げる。
次に、大きなスピーカーを用いる。
これらを発声になぞらえると、前者は呼気圧を上げることであり、後者は共鳴腔を広げることとなります。
大きな声を出せるひとは、もれなく上記二点の特徴を有しています。
ちなみに、当サロンでの呼気圧アップは「ファイブセコンドブレストレーニング」。
その操作性向上として「加圧呼吸トレーニング」が存在します。
ヒトの主な共鳴腔(ここでの共鳴腔とは物理的に音を増幅させたり倍音化させたりする人体内部の空間を指す)は5つ。
声帯に近い順に、喉頭室・梨状陥凹・咽頭共鳴腔・口腔共鳴腔・鼻腔共鳴腔です。
良声に最も重要な個所は、咽頭共鳴腔。
なぜ?
ある程度、大きさや形状を随意的にコントロールすることができるから。【個人差が大きいのも特徴】
もちろん、その他の共鳴腔も大切ですが、音質に一番関与するのが咽頭共鳴腔なのです。
その咽頭共鳴腔は、舌骨の奥に存在します。
この部位は、滑舌にも多大な影響を与える事実も知っておいてくださいね。
咽頭共鳴腔を最大限利用するための訓練法が、当サロンのチェアベッドを利用して行う「舌骨引き出し法」です。
繰り返します。
声は音です。
音は、空気の疎密波(一種の振動)。
一定の空気が流れ、響きを生み出す空間が無ければ、良い音は作り出せません。
詰め物をして無理やり空気の通りを悪くしたトランペットを、あなたは吹きたいですか?

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追記1:こんなに大きさの違うスピーカーですが、400W×2のアンプ(ジェフ・ロゥランド:コンティニュアム S2)で駆動させると、左の小さなスピーカー(タンノイ:オートグラフ・ミニ 五味康祐メモリアルモデル)が、右の大きなスピーカー(フォーカル:スカラ・ユートピア)に負けない音量で鳴ります。もちろん低音の豊かさや音離れのスピード感は落ちますが、アンプの重要性を再確認させられます。発声にとって、アンプの出力は、呼吸にあたります。また、スピーカーの能率〔㏈〕は、声帯の振動効率に当てはまります。このあたりも、オーディオと声は近似なのですね!
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~音声音響研究所の最新防音室内にて~






追記2:I君ごめん…。ハイレゾ音源が最上だと狂信しているI君。わたしの最も親しいオーディオ仲間です。いつも繊細な音を聴き分ける能力には舌を巻きます。そんな彼に内緒で、ある音源を聴いてもらいました。「プラシド・ドミンゴの24bit 96kHzを入手したから聴いてみないか!?」と。その音を聴き、彼は「やはりハイレゾは違うね。再生音に厚みが出て、なおかつ声の輪郭がシャープだ!」と評価しました。しかし、実際は…、その音源はMP3だったのです。とっても良い耳を持っているにもかかわらず、あっさり騙されてしまったのです。彼を騙すにあたり、わたしには戦略がありました。①MP3をDSD変換すること、②Dクラスのアンプで鳴らすこと、③相当の音量で聴かせること。この3つです。人間の感覚器は曖昧です。よって、あなたも、他者の耳を騙せば良いのです。言葉は悪いのですが…。方法は2つ。①大きな声〔歌声〕を出すこと(声圧を高める)、②自分は声が良い、または、歌が上手いと固く信じ込むこと(そのふりをすること)。良い声は、他者に好印象を与えます。さあ、素敵な人生を謳歌してください!!!
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~重要なお知らせ~ ●外喉頭から考究する発声の理論と技術は日々進化しています。この記事は掲載時の情報であり、閲覧時点において最新・正確・最良でない可能性があります。すべての記事の内容に関し、一切の責務を負いません。●記事の内容は万人に適合するものではないため、当サロンの施術に関し、記事の内容通りの効果や結果は保証も確約もしておりません。〔当サロンでは役立てないと判断された場合、理由を問わず施術をお断りします〕●声や喉の不調は、最初に専門医の診察を受けてください。歌唱のトラブルは、最初にボイストレーナー(音楽教師)にご相談ください。





by aida-voice | 2015-02-14 13:43