声の短問短答【続編】191


「そちらで施術を受けたあと声が不調になるケースはありますか?」

はい、あります。
ずいぶんレアケースですが、あります。
3つのパターンに分類できますので、それぞれの特徴と様子を記します。

施術後・・・
①声が出し難くなるケース
主に重症の痙攣性発声障害(SD)や過緊張性発声障害を長く患っている方です。
多くは、力ずくの発声が長期化しています。
施術で発声関与筋に柔軟性を与え、本来の正しい発声に戻します。
しかし、力を込めた発声に慣れ親しんでいるため、どうやって声を出してよいのかわからなくなり、声を出し難く感じてしまうようです。
また、ひとによっては「揉み返し」と称するようです。
ただし、当サロンでは、初回はピンポイントマイクロストレッチのみで、喉頭クリニカルマッサージは行っていません。
つまり、ダイレクトな揉み返しや筋肉痛が起こることは少ない。
たぶん、声の出し難さを、そのように感じてしまうのでしょうね。
なぜなら、喉頭の筋肉の感覚は曖昧であるから。

②声が高音化するケース
主に輪状甲状関節の亜脱臼や咽頭収縮筋付近の筋肉がとても硬い方です。
あまり知られていない事実なのですが、疼痛を伴わない輪状甲状関節の片側亜脱臼は意外に存在します。(軟骨同士の可動部位ゆえ関節や脱臼の呼称を用いるべきかどうか議論が残りますが・・・)
この輪状甲状関節の片側亜脱臼は、日常生活で困るほどではありません。
痛みや違和感は一切なし。
会話も正常。
ただ、思い通りの高音が出し難いだけ。
したがって、声や歌に興味のないひとなら、まったく気にならない。
もちろん放置しても問題ありません。
そして、これを認識して治療している耳鼻咽喉科や整形外科は一軒もないのです。
そう、病気やケガではないから。
この片側亜脱臼を繊細かつ適切な手技で改善すると、瞬時に高音声となります。
戸惑うひともいらっしゃるのも確かです。
改善した方が良いのか、放置した方が良いのか・・・
判断に迷うところですね。
次に、咽頭収縮筋付近の筋肉がとても硬い方は、輪状甲状関節の動きが制限されることで同様に声帯伸長も叶わず、高音が出し辛い状態が続いていると予想できます。
ピンポイントマイクロストレッチによって急に筋肉の運動域が広がり、声帯伸長が正常化して、驚くほどの高音発声が可能になります。

③声が低音化するケース
非常にレアケースですが、施術後に低音化する方の特徴は2つ。
ⅰ大きく形状の良い喉頭の持ち主である
ⅱ喉頭周辺筋が硬かったり過緊張発声を強いたりしている
この二つが揃っています。
次に、現象の内容です。
Ⅰ硬い筋肉が柔軟性を獲得し共鳴腔が増して低音化する【実際は本当の低音化は少なく声質が豊かになり低音の声に感じるだけ】
Ⅱ筋肉の緊張がほぐれて金属音的高音発声から解放される
この二つのどちらか一方、あるいは両方が起こります。
喉頭の柔軟性を得ることで、これまで発声時過緊張が改善され、会話声はやや低音化したり、声質や響きが豊かになって低い声に感じたりします。
つまり、術後の声が、そのひと本来の声と言えます。
ただし、意図的あるいは歌唱での高音発声の能力は衰えません。
それどころか、これまでの閉塞的で硬い高音ではなく、柔らかく聞き心地の良い高音になる可能性が高くなります。
加えて、発声に余分な力が要らないため、歌唱時のスタミナも増すでしょう。

当サロンのアプローチは、声を出しやすくしたり声質を高めたりしますが、ごく稀に上記の3つの様態を呈するケースもあるのです。
しかしながら、施術は外喉頭の軟部組織に対してのみ行っており、声帯や甲状軟骨含む器質に変化は生じないため、どの状態においても個性の範疇となり、声そのものに善し悪しはありません。
ボイスケアのプラスの部分だけではなく、マイナスの部分も曝け出すことによって、さらに精度の高い施術に磨き上げていくことができると考え、常に包み隠さずご報告しております。
よって、このようなケースの場合の受術の判断はご自身でお決めください。
繰り返しますが、施術後があなたの本当の声なのですから・・・
この先も、皆さまの声質アップのために、あらん限りの精進をお約束申し上げます。

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追記:「③低音化するケースⅱ喉頭周辺筋が硬かったり過緊張発声を強いたりしている」には、甲状腺摘出や甲状軟骨形成術の手術によって軟部組織(皮膚・筋膜・筋肉)に強度の瘢痕・癒着が生じ、それらが長期化&固定化された方も含まれます。






~重要なお知らせ~ ●外喉頭から考究する発声の理論と技術は日々進化しています。この記事は掲載時の情報であり、閲覧時点において最新・正確・最良でない可能性があります。すべての記事の内容に関し、一切の責務を負いません。●記事の内容は万人に適合するものではないため、当サロンの施術に関し、記事の内容通りの効果や結果は保証も確約もしておりません。〔当サロンでは役立てないと判断された場合、理由を問わず施術をお断りします〕●声や喉の不調は、最初に専門医の診察を受けてください。歌唱のトラブルは、最初にボイストレーナー(音楽教師)にご相談ください。





by aida-voice | 2014-02-20 06:49