2013年 03月 21日
無力
過日、ある耳鼻咽喉科におじゃましました。
そのクリニック院長と音声に関する会談です。
有意義なひとときでした。
その会談の最後に、お願いをされました。
クリニックに通院している患者さんに対する喉と声に関して。
喉頭ファイバースコープでは異常所見は見当たらないが、本人曰く「声が悪いから治したい」との願いが強く、わたしに外喉頭のトラブルの有無を調べて欲しいとの内容。
お役に立てるかどうかわからない旨をお伝えしたうえで、その患者さんにお越しいただき検査しました。
と言っても器具は持ち合わせていないので、声の様子と視診と触診のみ。
その結果、首(椎体)幅に対し、舌骨が異様に小さいことが判明しました。
もう少し詳しく調べるには、ビデオ撮影して検証しなければなりませんが、たぶん喉頭全体が小さい。
ただし、痛みや不具合があるものではなく、声の質が良くない程度で、日常生活に問題なく、これは病気でも奇形でもありません。
喉頭の小ささが共鳴音を損ない、構音不全や音量低下を招いているものと予想され、その状況を院長のみにお伝えしました。
そう、別室で、院長先生だけに、こっそり話しました。
ところが、院長はダイレクトにこの事実を患者さんに告げてしまったのです。
患者さんは神妙な様子で聞いていました。
機能でなく器質、つまり、生まれ持った身体の形状ですから、変えることが難しい。
現実、有効な改善手段がありません。
自身の声を受け入れるか、仕方がないからとあきらめるか、様々な音声訓練を試みるか…
以前、わたしは調べたまま正直に報告するのを正義と信じていました。
この心無い言動によって、泣かせてしまったことがありました。
以降、評価できる点は大いに伝え、マイナス点はオブラートを包んで優しく伝えるよう心掛けています。
このケースなら、「スピーチセラピー、ボイストレーニングやブレストレーニングなどで、あなたの音声はもっと良くなるかもしれませんよ」と。
帰途の列車の中。
今回、わたしがダイレクトに告げたものではありませんが、その患者さんの悲しげな顔を思い起こし、申し訳なさと自分の不甲斐なさに消沈していました。
~重要なお知らせ~ ●外喉頭から考究する発声の理論と技術は日々進化しています。この記事は掲載時の情報であり、閲覧時点において最新・正確・最良でない可能性があります。すべての記事の内容に関し、一切の責務を負いません。●記事の内容は万人に適合するものではないため、当サロンの施術に関し、記事の内容通りの効果や結果は保証も確約もしておりません。〔当サロンでは役立てないと判断された場合、理由を問わず施術をお断りします〕●声や喉の不調は、最初に専門医の診察を受けてください。歌唱のトラブルは、最初にボイストレーナー(音楽教師)にご相談ください。
by aida-voice
| 2013-03-21 08:42