航空声帯を防ぐチョキ開大運動【過去記事再掲載】


Past Article Reorganization 

海外でも活躍中の歌手Mさんとの会話です。

Mさん:「香港のLIVEは大変でした。飛行機は遅れ、ほぼ日帰りツアーのようなハードスケジュール。本番で高音が出しにくく、苦労しました・・・」

會田:「お疲れ様でした。ステキな声を奏でるエリートボイスユーザーのMさんでも、海外公演は大変なのですね。それでは、何が起こったか解説しましょう」

Mさん:「お願いします」

會田:「長時間、飛行機に乗って降りるとき、手足がむくんでいるのに気づきましたか?」

Mさん「はい、機内で脱いでいた靴を履くとき、足が入らなくて苦労しました」

會田「むくみは皮下の軟部組織に水分が滞って貯留してしまう現象で、飛行機の場合、①同じ姿勢による循環機能低下、②機内の気圧の低下、が主な原因と考えます。むくみは手足に感じやすいのですが、実は、声帯にも起こっているのです。声帯がむくむと、質量(重さ)も厚みも増します。その結果、振動率が悪くなり、通常より低音化が顕著となります。もう少し詳しく解説すると、声帯筋よりも声帯粘膜の水分含有率が高まります。つまり声帯粘膜が肥厚する。分厚くなる。こうして高音、とくに裏声(ファルセット)発声が不可能になります。地声で高音を作っていかなければならなくなり、歌唱力のある方でも、かなり辛くなります。また、声門が開くため、そこから息が漏れ、かすれ声やガラガラ声になってきます。これを、是正するのにも多大なパワーが要ります。どちらにせよ、声帯のむくみは良くありません。Mさんが、今回の香港LAIVEで、高音が出しにくく感じたのは、このような理由だったのです。なお、このような声になることを、わたしは 『航空声帯』 と呼んでいます」

Mさん:「よくわかりました。ところで、むくみを予防したり良くしたりする方法はありませんか?」

會田:「まず、機内でも身体や手足をよく動かしてください。そして、ここからが声に特化した方法です。むくんでしまった声帯を、早く正常に戻すには、血流を良くするのが得策です。声帯に最も影響を与える動脈および静脈は、上喉頭動脈と上喉頭静脈です。これは、舌骨甲状軟骨間の骨間膜の孔から内喉頭に入ります。これまで頻繁に話題にしている喉頭深奥ポジションの状態にあるひとは、舌骨甲状軟骨間が狭くなってるため、この上喉頭動脈と上喉頭静脈を圧迫し、血流を阻害します。中でも静脈は血管内圧が低いため、狭小化に伴い血液循環量が減ってしまい、むくみを増悪させます。そこで、フライト中、数時間おきにチョキ開大運動を行えば、血流が増加し、むくみは解消します。加えて予防もできます。実際、イタリアでコンクールに出場したオペラ歌手に試してもらったところ、随分効果があったとの報告をいただきました。乗っている時間・高度・飛行機の機種・体調・個人差はありますが、是非、お試しください。Mさんの、さらなるご活躍を祈っておりますよ」

Mさん:「ありがとうございました!」



航空声帯を防ぐチョキ開大運動【過去記事再掲載】_e0146240_074425.jpg









追記チョキ開大運動によって、内喉頭への血流が瞬時に増えるため、声を出さないウォーミングアップに最適です。準備発声ができない環境(本番前の共同楽屋など)で大いに役立つでしょう。



航空声帯を防ぐチョキ開大運動【過去記事再掲載】_e0146240_022138.jpg








~重要なお知らせ~ ●外喉頭から考究する発声の理論と技術は日々進化しています。この記事は掲載時の情報であり、閲覧時点において最新・正確・最良でない可能性があります。すべての記事の内容に関し、一切の責務を負いません。●記事の内容は万人に適合するものではないため、当サロンの施術に関し、記事の内容通りの効果や結果は保証も確約もしておりません。〔当サロンでは役立てないと判断された場合、理由を問わず施術をお断りします〕●声や喉の不調は、最初に専門医の診察を受けてください。歌唱のトラブルは、最初にボイストレーナー(音楽教師)にご相談ください。




 
by aida-voice | 2016-03-03 00:12