2016年 04月 02日
発声による事故《輪状甲状筋を中心としたケース》【過去記事再掲載】
Past Article Reorganization
地声から裏声へ急激な発声を試み、ケガをしたケースを報告します。
そう、高音発声に不可欠の輪状甲状筋。
その輪状甲状筋に関連したケガには、四段階+1(反回神経麻痺)あります。
軽い症状から記載しましょう。
①輪状甲状筋の筋膜断裂
●発症時の痛みは小さいが、その後、発声すると何となく痛みやしこり感を生じる
●耳鼻咽喉科では、喉頭異常感症と診断されることが多い
●判別のポイントは圧痛の存在
●弾性テーピングで保護
②輪状甲状筋の筋損傷
●筋線維の一部断裂のため、発症時の痛みはあるが出血は少ない
●発声は可能だが痛みを伴う
●可能なら喉頭キーパーを装着する
●それが困難ならば、固定用テーピングを用いて当該筋部と頚部半分に貼付する
●急性期は冷罨法、その後、温罨法を加療
●再発しやすいため、防止のためのケアをしっかり行うこと
③輪状甲状筋の筋断裂
●急な痛みと共に出血や腫脹が出現する
●声を出すと激痛がある
●治療法は、頚椎カラーを改造した喉頭キーパーを装着する(2週間程度)
●同時に冷罨法を加療
●その間、無声に徹する
●喉頭キーパー脱着後、弾性テーピングで保護
●徐々にストレッチングを開始して、運動性能を回復させる
④上喉頭神経外枝の断裂(前筋麻痺)
●発症時の痛みはほとんどない
●輪状甲状筋が動かなくなり、高音発声や声を張ることができなくなる
●これまで出ていた高音が、突然出ないことで気づく
●しかし、耳鼻咽喉科では的確な診断をされることが少ない
●治療法はない
●反対側の筋肉を鍛えることで、日常生活やカラオケなど問題ないまで改善は可能
最後に反回神経麻痺です。
輪状甲状筋には直接関与しませんが、受傷すると、高音どころか、発声が難しくなるので載せました。
実際に、高音発声を強要されて反回神経麻痺の診断名を医師から言い渡されたひとを数人知っています。
⑤反回神経の断裂や磨滅(反回神経麻痺)
●発症時は「喉元に冷たい感じがした」程度で、ひどい痛みは少ない
●声帯の開閉が困難となり、ひどい嗄声(かすれ)が発症
●片側ならコミュニケーションは可能だが、両側の場合はまったく声が出なくなる
●神経再建術や喉頭枠組み手術など各治療法はあるが、根治は難しい
●そのため、生涯にわたって苦難を強いられる怖いケガ
このように、地声から裏声へ発声だけでもケガするケースがあるのですよ。
筋関連の損傷の場合は、すべて初期段階で適切に対処すれば、快癒できます。
追記:発声によって輪状甲状筋のケガをしやすいひとには、ある特徴があります。喉頭周辺筋過緊張・喉頭深奥ポジション・懸垂機構Tight・輪状甲状筋の動きが緩慢なひとなどです。該当するひとは十分にご注意くださいね。
~重要なお知らせ~ ●外喉頭から考究する発声の理論と技術は日々進化しています。この記事は掲載時の情報であり、閲覧時点において最新・正確・最良でない可能性があります。すべての記事の内容に関し、一切の責務を負いません。●記事の内容は万人に適合するものではないため、当サロンの施術に関し、記事の内容通りの効果や結果は保証も確約もしておりません。〔当サロンでは役立てないと判断された場合、理由を問わず施術をお断りします〕●声や喉の不調は、最初に専門医の診察を受けてください。歌唱のトラブルは、最初にボイストレーナー(音楽教師)にご相談ください。
by aida-voice
| 2016-04-02 04:49