秋川雅史さんの発声法


秋川雅史さんが「テノール発声法」として取り上げているのは「喉仏を落として、あくびをしたような口の開けかたをし、身体はイナバウアーの様にそらして歌う」ということだそうです。
これは正解でしょう。
歌唱、とくにクラシックの歌いには有効と考えます。
ただし気をつけて欲しい点があります。
まず、「喉仏を落として」です。
これは、意図的に喉頭を下げることと解釈します。
つまり、ローラリンクスの強制。
ある程度の範囲を自由に動くことは歌に必須なのですが、下げることだけに集中していると、喉頭を吊り下げている懸垂機構が伸びきってしまうケースがでてきます。
その結果として、茎突咽頭筋、茎突舌骨筋、茎突舌骨靭帯の損傷が懸念されます。
実際、ローラリンクスの特訓によって、左右二対ある一方の茎突舌骨筋が筋断裂してしまった男性を、当サロンでケアしたことがあります。
次に、「あくびをしたような口の開けかた」です。
あくび様開口の過度トレーニングによってトラブルを生じたケースとして、顎関節の脱臼と舌筋硬縮(舌の筋肉がつってしまう…)がありました。
最後に、「身体はイナバウアーの様にそらして」です。
このような躯体後屈発声は、当サロンのスーパークラスでも推奨して取り入れている手法です。
横隔膜振幅コントロールの獲得と胸郭体積を増して(主に内外肋間筋および肋椎関節)、呼気効率をアップさせることができます。
したがって、非常に理にかなっています。
ただし、後屈は腰への負担が大きいのも事実。
椎間板障害・椎間板ヘルニア・すべり症の既往者は絶対に行わないこと。
なぜなら、後屈しながら横隔膜を稼働させると、ご存じのように横隔膜の腱脚が第3腰椎椎体前面に付着しているため、腱脚による上前方への引っ張りが強くなって、腰椎の後湾を促進させてしまうからです。
腰痛の方には困難な姿勢です。
これらの点に気をつけることを怠らなければ、秋川さんの「テノール発声法」は歌唱におおいに有効です。


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追記1:その後の調査で、後屈が過ぎた場合、腱脚が伸展し、横隔膜の動きが悪くなるケースが存在する事実もわかってきました。やはり、過度にしならせて歌うのは歌唱の能力を損ないますね。



追記2:秋川さんの歌っていらっしゃる映像をたくさんそろえて観ました。画像だけゆえ詳細な形状はつかめませんが、秀逸な大きさの喉頭をお持ちのようです。また、各共鳴腔の声道を縦にそろえながら喉頭蓋をコントロールしているのがよくわかります。それが声質に繁栄されていますね。素晴らしい技術だと思います。(お祭りで過大音量発声しても耐えられるのはお見事!)



~メッセージ~
この記事は投稿時の情報・見解・施術法であり、最新・正確・最良でない可能性があります。内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。會田の理論と技術は毎日進化しています。
by aida-voice | 2011-11-15 09:10