声帯に左右差はあるか?【過去記事再掲載】


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「私の場合、低ピッチのときは左の声帯が、高ピッチのときは右の声帯が、より振動しているのがわかります」とおっしゃる歌手に会いました。
はたして本当に声帯の左右差を感得できるのでしょうか。
検証です。
組織固定されていないフレッシュな声帯ヒダを数々触れましたが、声帯の長さ・厚さ・硬さが左右まったく同じケースはほとんどありませんでした。
つまり『ヒトの声帯は左右が同じではない』と言い切れます。
これは、他の部位でも同じ。
身体のどこでも左右シンメトリーであることはありません。
右腕と左腕の長さが違う。
右目と左目の大きさが異なる。
右ももと左ももの太さが違う。
事実であることは疑う余地がないでしょう。
ただし、上記のごとく、音程の高低によって、声帯ヒダの左右差を感じることは一般的には難しいと考えます。
それは、発声のための筋肉は随意筋なのですが、声という結果が出てくるまで、その過程を自己で解釈および感知できない特徴を持っています。
そのため、「あっ、いま右の声帯が振動し始めたよ」との言葉はあくまで感覚的であり、正確性には欠けると思われます。
ただし、相当に訓練を積んだエリートボイスユーザーは、ある程度のコントロールを可能にしていることもあります。
実験しました。
声帯を自由に使いこなせると豪語する歌手にお越しいただきました。
ラ音「あ」発声で、右の声帯、左の声帯、両方の声帯ヒダを順に鳴らしてもらいました。
それら発声時、①触診して外喉頭筋の筋硬度に左右差が生じているか確認する、②ビデオ検査から解剖予想図を作成し左右差を確認する、③医師と共に、喉頭ファイバー検査で声帯ヒダを観察する、の三種の実験を敢行。
すると、②と③に大きな変化はありませんでしたが①は明らかに左右差が生じていました。
無声時も同様に精密な触診を施していたため、変動があったのは確かです。
開閉や伸展など、声帯を動かすのは声帯ヒダ自身ではなく、周囲の筋肉です。
その声帯ヒダを動かす筋肉を使っているとなれば意図的に左右差を構成していることになります。
触知検査によって、どの筋肉に左右差を感じ取ったのか?
外皮より、胸骨舌骨筋、輪状甲状筋、甲状舌骨筋。
甲状軟骨を反転させ、後輪状披裂筋の一部、外側輪状披裂筋の一部。
ともあれ、ヒトの喉って不思議がいっぱいですね。



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追記:発声時過収縮癖の場合、外皮からの触知検査で声帯ヒダや内喉頭の様子がわからないことが多々あります。







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by aida-voice | 2016-03-28 03:58