2011年 09月 19日
高音発声時に滑舌は悪くなる?
優秀な喉頭と知識を有するボイスアドバイザーの鈴木駿先生からの質問です。
鈴木:高音の発声時に滑舌は悪くなりますか?
會田:答えはイエスでしょう。
鈴木:それは、ハイ・ラリンクスと関係がありますか?
會田:なかなか良い視点ですね。さすがボイスアドバイザー。まず、高音発声時の声帯・外喉頭・内喉頭の様子を順に考えてみましょう。声帯の様子は?
鈴木:第一に、輪状甲状関節の屈曲またはスライド伸展によって声帯筋および声帯粘膜が伸ばされています。第二に、輪状甲状関節に頼らず声帯筋の厚みを薄くする方法。第三に、声帯筋の硬度を高めることが挙げられます。この複合でしょうか。
會田:お見事です。その他の様子を簡単にお伝えしましょう。外喉頭に関しては、個人差がありますが、懸垂機構の Tension up、舌骨下筋群の High motion、嚥下関連筋の hyperstrain などが起こります。そう、どれも筋肉をしっかり使うことにほかなりません。やはり、高音発声を運動に例えるなら、ジャンプするようなものですね。高く飛ぼうとすればするほど、各部位(筋肉や関節)の負荷が大きくなります。高音発声も、他のピッチより大変なんですよ。そして、おわかりのようにハイ・ラリンクスと密接にかかわり合っているのは懸垂機構です。最後に内喉頭。これは共鳴腔を示します。人間の共鳴腔は五つあり、声帯直上から喉頭室・梨状陥凹・咽頭共鳴腔・口腔共鳴腔・鼻腔共鳴腔。どれも軟部組織から成り、硬度と空間率を変化させて高音の声質を決定していきます。高音発声の場合、おおむね硬度を高めます。空間率は、求める音色によって異なります。シャープな高音やホイッスルボイスのような超高音は咽頭共鳴腔の空間を狭くします。質感あふれる高音は咽頭共鳴腔の多少の広さを必要とします。これらのことから、「高音発声時に滑舌は悪くなる?」は正解ですね。ただし、稀有ですが、甲状軟骨が極小かつ超広角(超鈍角)による短声帯ならびに声帯粘膜潤沢の傾向にあるひとは、単純高音発声を得意とするため滑舌に影響を与えていないケースを確認しています。よって、絶対ではないことを付け加えておきます。
鈴木:よくわかりました。ありがとうございました。
追記:当記事を読んだ知人女性から「難しすぎてわかんない」とやんわりクレーム…。ならば、簡単に。低音・中音・高音を出すとき、どれが一番大変かを考えてみてください。きっと「高音でしょ!」とほとんどが答えるはず。そう、誰もが体感している通りで正解。上述のジャンプそのものなのです。高く飛ぼうとすればするほど、パワーが要ります。さらに、「高く飛べるかな?」「高く飛ぶって怖いな」と感じるがごとく、高音発声も恐怖心を誘発します。高い声を出すにはフィジカルもメンタルも精一杯なのです。そのような必死の状況で流暢な構音(言葉を作ること)が難しくなるのは想像に難くないでしょう。このようなことから「高音を出しているときは滑舌が良くない」と言えるのです。これでいかがでしょうか???
~メッセージ~
この記事は投稿時の情報・見解・施術法であり、最新・正確・最良でない可能性があります。内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。會田の理論と技術は毎日進化しています。
by aida-voice
| 2011-09-19 00:11