2011年 08月 19日
寄稿論文掲載
今日は、優秀なボイスアドバイザー:中鉢幸樹先生からご寄稿いただいた文章を掲載します。
感謝と共に、さらなるご多幸とご活躍とお祈りします。
『通院者の心理』
さて、私がここに通うきっかけとなったのが、端的に申しまして喉の筋肉の不調です。
当時は今からは考えられない程状態が悪く、また精神状態も酷いものでした。
ボイスケアサロンは、発声能力を向上させることを主においたアプローチを信条としており、所謂病気を完治させることを目的にはしていません。
ただ、筋肉の状態が向上した結果、声の病気にも効果があることは確かです。
前置きが長くなってしまいましたが、通院者の方は大きくわけて2パターンにわけられるのではないでしょうか。
純粋に声を良くしたいという人、そして声の不調を治したい人です。
今回は後者に論点を絞らせて頂きました。
後者の人が思うであろうこと、それは、とにかく最低でも今までと同じように喋りたい!ではないでしょうか?
他には、いくらかかっても、手術でもなんでもいいから、この喉の違和感を取り除いて欲しい、ですかね。
残念ながら、現在の耳鼻咽喉科を含む多くの病院では、裂傷やポリープ、見ただけで外傷とわかるものがない限りは、気持ちの問題で片付けられてしまい、門前払いに近い扱いを受けることが殆どです。
声という存在は非常に曖昧なものであり、研究対象としては扱いにくいことも起因しているのかもしれません。
これはあくまで私個人の意見であり、現代医学や病院に対して批評をするつもりは全くありません。
ただ、声に関する医療に従事している方には、今よりほんの少しだけでも喉に対して興味や疑問を持って頂ければ嬉しいですね。
ここで話題は変わります。それは、ボイスケアサロンに通うようになり(または喉ニュースを見て)、知識がついた為に、ついしてしまう、してしまいそうになる失敗です。
「甲状軟骨と舌骨が斜め前に出れば共鳴腔が出来て、良い声になるんでしょ?」そう思い、マッサージのし過ぎで筋肉を痛めてしまうことです。
かくゆう私もあります。
理論としては間違いではないのですが、正しい答えになるには補足が必要です。『確かに人を魅力する声には甲状軟骨と舌骨のポジションが重要です。だが、それには、条件として筋肉に強さとしなやかさが備わっていなければなりません。喉周りの筋肉がその状態にある人は意識せずとも世間一般で言われる良い声が自然と出ています。鶏が先か卵が先かではなく、筋肉の状態が良好であるからこその美声なのだ。』
喉の筋肉は非常に、非常に微細であり、かつ繊細であります。
その為、一瞬で好不調になってしまうことも多々あります。
(あれ?さっきまで声の通りが良かったのに、マッサージしたらこもるぞ…足りないのかな??)
このように考えてマッサージを繰り返した結果、筋肉を硬化させてしまった人もきっといるはずです。
筋肉の特性として伸張作用がありますので、体の何処の部分であれ、正しいストレッチをすること自体が大変に困難なことではないでしょうか?
下手をすると、むしろしない方が良かったということにもなりえません。
初めて會田先生の施術をうけた人は、こんなに柔らかいタッチなの?と感じると思います。
それは喉周りの筋肉を熟知しているからです。
喉の筋肉をマッサージやストレッチをする時に、過剰な力は必要ありません。
喉のストレッチをやり過ぎることは、例えるならば、ブルドーザーで体を引っ張るようなものだと思います(極端ですが笑)
正しい知識で、確かな技術を適切な力で筋肉にアプローチできる…お世辞ではなく、正に神技とも呼べるそれは、たゆまぬ修練と會田先生の声に対する情熱が可能にしたのでしょうね。
いつも本当にありがとうございます。
声が出ない人生なんて考えられませんでした。
一度失ったと思われた声が再び出るようになった感動はいつも心に持っています。
心が出ればハッピーです。出ないと気持ちも落ち込みます。
他の方もそうなのではないのでしょうか?
もっと良くなりたい!でもその思いが強過ぎるあまり、怪我をした人もいると思います。
それを回避する為には、頭で理解しようとするのも勿論大切ですが、もっと大事なことは、実際に筋肉の状態を感じて、良い時のくせ(あえてくせと言わせて頂きます)を体得することではないでしょうか。
毎日定期的に何回これを行っているから大丈夫!なのではなく、実際に自分の感覚としてそれを持ち合わせることが、声を良くすることに繋がると思います。
上記の文の補足になりますが、長い間声に不調を訴えてここに来院された方の中には、やはり声を出すことが非常に怖い人もいます。私もそうです。
声に寒さは大敵だと言われれば、夏場でもクーラーがついている場所ではマフラーを使いましたし、飲み物も全てホットで飲んでいました。
今考えれば極端かもしれませんが、当時は大まじめにそれをしていたことを記憶しています(笑)
ただ、個人的には、声を満足出来るレベルにもっていく為には、良い状態を保つだけではなく、攻めの姿勢も必要だと感じます。
最初は全く出なかったのに、今はこのくらい出しても大丈夫だった!そんな積み重ねで、心理的にも肉体的にも声の質は高まっていくと思います。
そして、良い筋肉の状態で何度も声を使ううちに何時しかそれが当たり前になり、恒常的に素晴らしいと言われる声が身につくはずです。
私事ですが、目標として、正しい声の知識を身につけ、そして筋肉の正確な場所がわかった上で程よい力加減でストレッチを行うことが出来、更に芳しくない時でも自棄を起こさず冷静に分析してベストに近づけるよう努めて、聴いた人が感動するような、そんな声の状態につくりだせるように精進したいです。
甲状軟骨や舌骨を楽器とするならば、声は、喉周りの筋肉、そして体全てを使ったオーケストラです。
どこか一つが頑張ればいいわけでなく、全体の調和で素晴らしい声は成り立っています。
簡単な人には簡単に出来ることかもしれませんが、出来ない人は出来ない時には本当に難しいことだと思います。
ただ、絶対に素晴らしい声になると信じ、會田先生の助けも借りつつ自助努力も欠かさなければ、良い声になる確率は確かに高くなるはずです。
偉そうなタイトルになりましたが、通院者の方が感じることは個々に違うと思います。
完全き他人のことがわかるとは言えません。
色々な考えがあるのは当然ですが、今よりも声を良くしたい!その思いが共通していることは確かです。
~メッセージ~
この記事は投稿時の情報・見解・施術法であり、最新・正確・最良でない可能性があります。内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。會田の理論と技術は毎日進化しています。
by aida-voice
| 2011-08-19 16:34