上喉頭動脈の不思議【過去記事再掲載】


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声帯ヒダは筋肉と粘膜から作られています。
決して、弦(金属・ナイロン)やリード(ケーン:葦)ではありません。
筋肉であること。
そう、動かすためにエネルギーと酸素が必要です。
それらを供給するのが血液の役目。
声帯筋や、声帯を動かすための筋肉に血液を送っているのが『上喉頭動脈』です。
主に(※)、この血管によって内喉頭の血流はまかなわれています。
そして、その場所が問題になるのです。
上喉頭動脈が、内喉頭に入るのは、舌骨と甲状軟骨の間に存在する甲状舌骨膜(骨間膜)の穴から。
その場所を甲状孔と言います。
そう、実際、膜に小さな穴が開いています。
解剖でも、舌骨甲状軟骨間をギュッと引き伸ばして血管痕をたどらなければ判別できませんでした。
下の絵は、米国メイヨークリニックでの触知研究の様子を作画してみました。〔解剖は医師〕




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ご覧の通り、穴が小さい。
ここから、内部に入ります。
そして、内部に血液を送るのは、この一本だけ。
少ない。
少なすぎる。
頚動脈①から分岐した外頚動脈②がさらに、上喉頭動脈③・上甲状腺動脈④・下甲状腺動脈⑤へとわかれていきます。




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甲状腺はホルモンを分泌して、血液で全身に送らなければならない使命を持っていますから、血液循環は大事ですよね。
したがって、内喉頭への血流がおざなりになっている感は否めません。
「やっぱ、声帯ってもともとストッパーの役目だったようだから仕方ないのかな」「結局、声が出なくても命に関係しないからだよな」と愚痴が聞こえてきそう・・・




追記1:甲状孔には、上喉頭動脈・上喉頭静脈・外喉頭神経内枝の三つが出入りしています。なお、甲状軟骨舌骨間が狭くなる喉頭深奥ポジション状態では、血管や神経が圧迫され、発声力が低下します。上喉頭動脈の場合、酸素と栄養の供給が減って運動性能が損なわれることと、分泌液が減少して喉が乾燥しやすくなる二点。上喉頭静脈の場合、静脈血が滞って声帯がむくみます。つまり声帯ヒダが太く重くなる。その結果、高音発声の困難、ガラガラ声、息漏れなどが現れてきます。外喉頭神経内枝の場合、発声に関与する筋運動能力が低下してピッチやリズムが狂ったり、喉の知覚変化(喉頭異常感症など)を誘発したりします。




追記2:主に(※)と書いたのは、内喉頭には、下甲状腺動脈よりの下喉頭動脈もあるからです。上喉頭動脈血流が少なくても、下喉頭動脈から補給されるので大丈夫なのですね。ただし、会話程度なら良いかもしれませんが、極上の声や素晴らしい歌唱に豊富な血流は不可欠ですから、両血管の活躍が大切でしょう。




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~重要なお知らせ~ ●外喉頭から考究する発声の理論と技術は日々進化しています。この記事は掲載時の情報であり、閲覧時点において最新・正確・最良でない可能性があります。すべての記事の内容に関し、一切の責務を負いません。●記事の内容は万人に適合するものではないため、当サロンの施術に関し、記事の内容通りの効果や結果は保証も確約もしておりません。〔当サロンでは役立てないと判断された場合、理由を問わず施術をお断りします〕●声や喉の不調は、最初に専門医の診察を受けてください。歌唱のトラブルは、最初にボイストレーナー(音楽教師)にご相談ください。




 
by aida-voice | 2016-03-22 00:49