2011年 07月 26日
甲状軟骨の厚みの重要性 《赤飯さんのケース》
甲状軟骨の構造は、スピーカーと似ているため、高性能の
条件の一つとして、その『厚み』が挙げられます。
スピーカーの場合、一般的に木の箱(エンクロージャー)を使用しています。
このエンクロージャーが薄いと、どうなるのか?
簡単に共振することで、音の質が落ちてしまいます。
甲状軟骨も、声帯を入れるケースのようなものですから
一種のエンクロージャーと言っても過言ではありません。
もちろん、呼吸や嚥下・摂食のためにも
存在していますが、ここでの話は、声に限定します。
では、甲状軟骨が薄いと、声が悪くなるのか?
これまで多数の例を検査してきましたが、日常生活で
困るほど〔声が悪い〕には至らないようです。
逆に、甲状軟骨が厚い(大きさや形状が秀逸である条件を含む)と
良い声と評価されるひとが多いのです。
つまり、『歌や美声にとっては、薄いより厚い方がより良いでしょう』のこと。
やはり、音声の質が高まり、音の深みが増しますね。
今日は、以前、ご紹介しました赤飯さんの厚みをご報告しましょう。
まず、甲状軟骨の厚さをどうやって測るか?
過去に摘出喉頭(解剖は医師)の触診実験で幾度も数値を計測しました。
下に、その写真を描き替えた絵を載せます。
白人男性(身長180センチ以上と予想される喉頭の大きさ)のものです。
これは、医師が甲状軟骨の正中にハサミを入れてカットし(縦)
わたしがメジャーを用いて厚みを測っているところです。
最も厚い部位で5ミリを記録しました。
このように、摘出し、切って測れば簡単。
しかし、生きている人間では不可能ですよね。
そこで、方法があります。
喉頭周辺に柔軟性があるひとなら、甲状軟骨を
反転させ、甲状軟骨翼後縁をはさんで計測すれば・・・
そこで、優秀な喉頭をお持ちの赤飯さんにご協力をいただきました。
用意するのは、マーキング用の水性ペン・厚みを計測する
キャリパー(ものさしでも可)・至高のテクニック。
方法です。《下の絵は赤飯さん:写真を絵へ変更》
①甲状軟骨をスライド反転させる
②指で甲状軟骨翼の外部面と内部面を触れ、その位置の皮膚上に水性ペンで印をつける
③二点間をキャリパー(当サロンでは眼科手術用器具を使用)で測る
注意点があります。
甲状軟骨翼の板面には、さまざまな軟部組織が
付着しているため、触診ではその厚みも入ってしまいます。
それゆえ、誤差が生じます。
実際より、おおむね1~2ミリ数値が大きい。
したがって、外皮からの検査は曖昧である旨をお伝えしなければなりません。
メイヨークリニック喉頭機能外科教室での実験時は、正確な軟骨厚を
知るために、甲状軟骨翼に付着する軟部組織を、しっかりとこそげ落としています。
この点を考慮し、さあ、結果発表です。
赤飯さんの甲状軟骨の厚さは7.5ミリです。(実際には5.5~6.5ミリでしょうね)
これは、とても厚い部類に入ります。
同様な方法でわたしも測ってみましたが、5ミリでした。(実際には3~4ミリ)
やはり、赤飯さんの喉頭は極上ですね。
この先、さらなる素晴らしい音色と音質を披露してくれることでしょう。
本当に楽しみです。
~メッセージ~
この記事は投稿時の情報・見解・施術法であり、最新・正確・最良でない可能性があります。内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。會田の理論と技術は毎日進化しています。
by aida-voice
| 2011-07-26 17:43