2011年 05月 24日
声を合わせるって???
声楽家のボイスアドバイザーから質問をいただきました。
「最初に地声を出して、次に裏声を出して、段々中心に合わせていく方法と、最初に中音域を発声して、そこから徐々に低音と高音に分けていく方法の、どちらが正しいですか?」
例えてみましょう。
野球のピッチャーに。
腕を上から振り下ろして投げるオーバースロー。
そして、腕を下から振り上げて投げるアンダースロー。
まだまだあります。
横投げのサイドスロー。
どれが最も優れていると思いますか?
プロ野球界にはオーバースロー、アンダースロー、サイドスロー共に名選手がいました。
そう、それぞれ長所と短所があるのです。
これと同じで、声の出し方の技術は、それぞれの人の数と同じほどあります。
どれが『エライ』はありませんよね。
ただし、投げる運動の行為はどちらも同じ。
肩や手腕を使っています。
発声では、順に・・・
1横隔膜と胸郭の筋肉を使って息を吐き出す
2その呼気で声帯を振動させて小さな源音を作る
3そして、各共鳴腔で個性ある豊かな音を作り上げる
これらは、すべて軟部組織(主に筋肉)を用いた『運動』なのです。
この運動性能を高めてあげれば、声の出し方を気にすることなく、どんな技術でも楽々できてしまう。
こうなれば、歌唱テクニックや歌い方は、好き嫌いや芸術性で決めれば良い。
そう、上から投げようが下から投げようが、肩の関節の動きが悪かったり腕の筋肉が硬かったりして、うまく動かなかったら、結局どちらもモノになりませんよね。
さて、次に、質問の発声を科学的に検証してみましょう。
合わせる行為は、声帯における声帯筋と声帯粘膜の振動割合の変換を意味すると考えます。
前者の「最初に地声を出して、次に裏声を出して、段々中心に合わせていく方法」は以下のメカニズムが予想されます。
最初に声帯筋をしっかり使って発声し、次に声帯筋の振動を止めて声帯粘膜のみ100%発声し、声帯筋の硬度と声帯粘膜の有効面積を変化させて声を合わせていく。
後者の「最初に中音域を発声して、そこから徐々に低音と高音に分けていく方法」はこうです。
最初に声帯筋と声帯粘膜の最適振動を保ったまま発声し、そこから徐々に声帯筋を弛緩させたり硬化させたりしながら発声していく。
理論は上記の通りですが、実際に感得し、それを意識的に実行していくのは至難の業でしょうね。
それでも、極一部の超優秀な歌手たちは、感覚を研ぎ澄まして、その動きに近い操作をしているようです。
喉頭ファイバー検査や喉頭触診で確認しています。
何だか話がバラバラになりましたが、質問の正解としては、以上のことから『どちらでもお好きにどうぞ』となります。
是非、喉頭の運動能力を最大限に発揮して、自分らしい発声法を見つけてください。
ご成功とご活躍をお祈りしております。
~メッセージ~
この記事は投稿時の情報・見解・施術法であり、最新・正確・最良でない可能性があります。内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。會田の理論と技術は毎日進化しています。
by aida-voice
| 2011-05-24 03:16