2010年 11月 23日
高音発声の練習を続けていたが・・・
声の相談会での話。
「J-POPの歌がうまくなりたくて、ボイストレーナーに数年習っていますが、ぜんぜん思うようにいきません。もちろん、当初に比べたらテクニックも表現力もアップしていますが、どうも高音がコントロールできていない。先生からは『練習が足りない』『もっと気合いを入れて歌え』『声がガラガラになっても歌い続けろ』と過激なレッスンを続けています。本当にこれで良いのか不安です」との相談がありました。
残念ながら精密検査(輪状甲状関節の動きは、細密な触診とビデオ撮影検証が必須)が不可能であるため、正確性に欠ける返答しかできませんでしたが、〔甲状軟骨下角が左に比して右が突出している〕のを発見しました。
内喉頭および甲状腺に疾患が無い旨を確認し、変形または破格である可能性が8割以上ではないかと考え、そのようにお伝えしました。
會田:この状態では輪状甲状関節が正常に機能しないと思われるので、音楽的に優れた高音を発声するのは至難の業かもしれませんよ。
相談者:これまで何年も習ってきたのは無駄だったのでしょうか?
會田:確かに求める高音は獲得できていませんが、歌唱技術や音楽的センスは格段に向上したのではありませんか。そう考えれば無駄な練習ではなかったはずです。
相談者:そうですね。では、この状態から脱却するにはどうすればよいですか?
會田:まずは精査しましょう。そして、輪状甲状関節の動きを正常化させるアプローチを受けてください。喉頭隆起も正中から外れているので、軸系捻転だと思います。このケースでしたら、左右の筋肉の運動性を是正することで問題点が解決することが多々あります。それほど心配しなくてよいでしょう。これまでも大勢のひとが治っていきましたからね。きっと、高音が驚くほど楽に綺麗に出るようになりますよ!
個人差によって、「練習さえすれば高音は出る!」は正しくない可能性があることを念頭に置く必要があります。
根性を鍛える目的なら別ですが、無茶な高音発声の練習には気をつけてください。
それでなくとも、高音発声を強いて、①反回神経の断裂や圧迫による麻痺(不全麻痺)、②声が詰まって出難い過緊張性発声や音声衰弱症などの機能性発声障害、③声帯結節やポリープ様声帯、④高音発声するたびに痛む輪状甲状筋(または筋膜)断裂などで困っている方々を多く知っています。
当サロンには、耳鼻咽喉科で解決できない症例で、毎日、全国から多くの患者さまがお越しになります。
皆さん、人知れず苦しんでおられます。
このようなトラブルがビックリするほど多いのです!
罹患された方々にお会いするたび、わたしは心が痛みます。
そう、損傷したり調子を崩したりしてからでは遅いのです。
声を出すことも歌うことも、喉の小さく複雑な筋肉がかかわっています。
是非、優しく丁寧に扱ってあげてください。
大切にして十分に活動させれば、驚くほどの美声(素晴らしい音質)が獲得できます。
残念ながら、指導者を含め習う側も、ほとんどが『喉と声』に対して無頓着過ぎると感じています。
全ての皆さまの声が健やかであることを心から願っています・・・
この願いは理想主義に傾き過ぎでしょうか???
ボイスケアサロン
會田茂樹(あいだしげき)
追伸:あなたが行っている発声練習が、「本当に理にかなっているのか」、「自分に合っているのか」、もう一度、確認してください。声を壊してからでは遅いのです・・・
~メッセージ~
この記事は投稿時の情報・見解・施術法であり、最新・正確・最良でない可能性があります。内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。會田の理論と技術は毎日進化しています。
by aida-voice
| 2010-11-23 00:18