2016年 05月 25日
無理やり喉を下げる行為に注意【過去記事再掲載】
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皆さんは「喉をあけなさい」「喉を開きなさい」と指導を受けたことがありますか?
喉をあけることは、喉頭周辺に柔軟性があって、喉頭のPositionが深奥でない状態を指します。
また、喉ニュースでは《意識的に喉をあけるメカニズムは曖昧である》とお伝えしてきました。
喉まわりの筋肉が硬いひと(ここでは身体が硬いと同義)は、喉をあけることができません。
このようなひとは、努力しても難しいと思います。
逆に、喉まわりがやわらかいひとは、無意識に自然にあけられる。
本人も気づいていないケースが大半です。
力なんて要らない・・・
リラックスすれば喉頭(甲状軟骨と舌骨)が、しなやかに前方に移動します。
移動といっても数㎜程度。
喉を開くことができる歌手で実験しましたが、1㎝も前に張り出してくるひとはいませんでした。
こんな少しの動きで、フォルマントや響きが天と地ほど違ってきます。
さて、よく勘違いされているのが「喉をあける」=「喉を下げる」です。
実は、イコールではありません。
この点を正しく認識しなければ、不幸な結果を生む可能性がでてきます。
以下に注意を記します。
◆無理やり喉を下げる行為に注意◆
「喉を下げなさい。胸骨にくっつくほどしっかり下げなさい」と教えられたひとも多いと思います。
イメージトレーニングとしては良いのですが、喉頭医学と発声物理学の観点からはお薦めしません。
何が起こっているのか考えてみましょう。
喉を下げるとは、甲状軟骨を下制することにほかなりません。
つまり、力ずくで強要するわけですよね。
空間が大きくなる『感じ』をつかむためなら結構ですが、この状態での長時間発声は控えた方が賢明です。
ここで、状態と問題点を列挙します。
●胸骨舌骨筋、甲状舌骨筋・肩甲舌骨筋をフル収縮させる
《これらの筋肉は、発声よりも嚥下の際に喉頭を引き下げる役目が大きいので、過剰な筋運動は発声効率を阻害する恐れがある》
●懸垂機構の筋群がすべて伸びきってしまう
《甲状軟骨および舌骨を吊り下げているため運動性としては最低になる》
●咽頭共鳴腔が縦に伸びて空間体積が小さくなる
《結局、響く空間を狭くし、求めていた「あけなさい」「開きなさい」とはかけ離れてしまう》
歌唱で喉を下げる行為を昔のスポーツで例えるなら、うさぎ跳びレベルですね。
過去には「足腰が強化される」「根性が鍛えられる」と、すべてのスポーツに取り入れられていました。
しかし、最近は行われていません。
ひざの関節を90度以上曲げて体重負荷をかけると、ひざの半月板や靱帯が壊れたり、ももの筋肉を痛めたり(主に大腿四頭筋の過伸長による筋および筋膜損傷)します。
また、考えられていたほど筋力強化にはならないことも判明したのです。
現在、うさぎ跳びを強要する教育者や運動指導者は皆無でしょう。
これと同じ・・・
声には夢があります。
だから、歌のレッスンは、イメージや感性だけで十分。
頭でっかちになるから喉の構造なんて知る必要は無い。
それはそれでOK。
イメージだけで、簡単に思い通り歌えるひとなら、何の問題もありません。
しかしながら、やはり声は喉頭医学と発声物理学に支配されている。
これを、おざなりにしては確かな向上は望めないでしょう。
追記1:舌奥を押し下げて共鳴空間を作る方法も十分に気をつけてください。前述のように、一時的な空間存在の確認や感得なら問題ありませんが、舌にかなりの力が入り、舌骨上筋群はもちろん喉頭全体の筋肉も硬くなって動きが無くなります。これでは、ひとの心を魅了する歌は不可能です。やり続け、癖になっている歌手を多く知っています。もう一度、見つめなおしてください。「何のために歌うのか?」答えは「声を解放して自由に表現するため」と「聴くひとに感動を差し上げるため」ではないでしょうか。
追記2:「昔のひとがやっていたから…」の慣習にとらわれず、正しい真実を見極めてください。
喉と声のスポーツトレーニング&リラクゼーション
ボイスケアサロン
會田茂樹|あいだしげき
~重要なお知らせ~ ●外喉頭から考究する発声の理論と技術は日々進化しています。この記事は掲載時の情報であり、閲覧時点において最新・正確・最良でない可能性があります。すべての記事の内容に関し、一切の責務を負いません。●記事の内容は万人に適合するものではないため、当サロンの施術に関し、記事の内容通りの効果や結果は保証も確約もしておりません。〔当サロンでは役立てないと判断された場合、理由を問わず施術をお断りします〕●声や喉の不調は、最初に専門医の診察を受けてください。歌唱のトラブルは、最初にボイストレーナー(音楽教師)にご相談ください。
by aida-voice
| 2016-05-25 00:13