2016年 02月 10日
共鳴腔を制すれば美声になれる!【過去記事再掲載】
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【声帯の音源】と【共鳴腔の造音】が、声の2大ファクター。
共鳴腔をコントロールできれば、極上歌唱も美声も思いのまま。
今回は共鳴腔を詳しく解説します。
ヒトには、場所による主に5つの共鳴腔が存在します。
最初に、各共鳴腔の総論として次の二つが重要です。
一つは大きさ。
もう一つは運動性。
大きさは、楽器として考えれば良いでしょう。
良い音は、豊かな空間を持った楽器が優位となります。
運動性は、そのままスポーツと考えましょう。
ポジションが好位置で活動性に富んでいれば言うことなし。
この二つが相互に作用し合ったとき、極上の音声が完成します。
それでは解剖図(MRI画像ラフスケッチ)をご覧ください。
①喉頭室、②梨状陥凹、③咽頭共鳴腔、④口腔共鳴腔、⑤鼻腔共鳴腔です。
①喉頭室
喉頭原音(音源)を確立。
音の基礎(音としての方向性)を決める部位として重要です。
クラリネットで例えるなら「樽」の部分です。
音の高さ(ピッチ)の調整に役立つのです。
クラリネットは、暑い日は音が高くなり、寒い日は音が低くなります。
そこで、音が高い時は樽を少し(1~2㎜)抜いて管を長くして音を下げます。
また、逆に、音が低い時はしっかり樽を差し込みます。
こうやって音程の微調整を行います。
もちろん、ヒトの場合、ピッチは声帯の伸縮が担っています。
きっと喉頭室も、仮声帯との狭間で、ミリ単位の調整を行っていると考えられます。
すばらしきかな喉頭室。
②梨状陥凹
この部位は基本的に、食べ物を食道へ、空気を声門へ、それぞれ分別して送る交差点なのです。
その役目のための空間を保有しています。
せっかくの空間を発声に活かさない手はない。
もともと声帯は、声のためでなく、そこから先に異物(水や食物)が入らないようにと防御肉壁の役目で作られた経緯があるくらいですから。(仮説)
しっかり利用しちゃいましょう。
梨状陥凹は言葉が表しているように、果物の『洋なし』がくぼんだ形状に見えることから名づけられました。
ここは、甲状軟骨(舌骨の一部を含む)の大きさと型に大きく左右されます。
ただし、内喉頭の軟部組織の厚みにも影響を受けますので絶対ではありません。
甲状軟骨が大きいほど、洋なしの体積は増えます。
つまり共鳴空間が大きくなり、響きある豊かな音になります。
したがって、この梨状陥凹は生まれ持った資質となりますので、後天的に変化させることはできません。
③咽頭共鳴腔
わたしの持論では、ここが最重要。
音の色つやを決めます。
数々の歌手やものまね芸人の喉をチェックしてきましたが、この部分の大きさと運動性(ポジショニングを含む)に秀でたひとは、もれなく最上の声を発しています。
一般的イメージで言われる「喉をひらく」とは、この咽頭共鳴腔を大きくしたりコントロールしたりすることにほかなりません。
基本は「喉を前に出す」のですが、実は、喉を前に移動させる筋肉は存在しません。
では、喉がひらいている優秀な歌手はどうなっているの?
それは『喉頭周辺に柔軟性がある』のです。
この柔軟性があるなしは、自分自身ではチェックできないため、喉をひらいて歌っているひとさえ、どのような理由で、また、何が起こっているのかを知りません。
喉周辺の柔軟度の差異の原因は明らかになっていません。
生まれつきなのか、体質なのか、癖なのか、環境なのか・・・
柔軟性がないひとにとって、喉をあけることは、喉頭周辺のすべての筋肉が関与しているため簡単ではありません。
しかしながら、綿密なストレッチングで後天的に獲得できると考えます。
また、喉をひらく行為のイメージで、単純に前に出すと言い切るのは語弊があります。
ある法則と角度があります。
残念ながら、これはナイショ・・・
④口腔共鳴腔
構音の最終調整空間。
主に言葉を作ります。
また、舌の役割が大きいく関わっています。
喉頭や咽頭と異なり、舌はある程度コントロールがしやすいのも特徴でしょう。
これまで、滑舌は舌と口周りの筋肉が大切だと考えられていましたが、それよりも【舌骨のポジション】と【舌骨上筋群の運動性】が重要であることがわかってきました。
簡単に解説すると、舌骨は空中に浮く舌を支えるU字(馬蹄形)の骨です。
その舌骨のポジションが深いと、舌体を押し上げ、舌運動を阻害し、滑舌が悪くなります。
また、舌骨上筋群(懸垂機構を含む)の弛緩と収縮によって、口腔内空間率が変化します。
これまでの研究の結果、ほとんどのひとの軟口蓋は簡単に上がらないため、舌骨上筋群の役目は大きいと考えます。
⑤鼻腔共鳴腔
鼻をつまんで声を出してみてください。
閉塞的な音になりますよね。
そう、呼気(空気)が体外に排出される主たる部分になります。
逆に、口から息がたくさん漏れると、嗄声(息漏れ様かすれ声)になります。
原因は、鼻よりも口の方が大量の空気を一気に排出できるからでしょう。
声楽などの歌唱時、よく「息を吸うように歌いなさい」というイメージ表現は、実は、口から空気を出さずに鼻で出すよう仕向けているのです。
したがって、うまくできれば正しい手法かもしれません。(表記に「かも」が付くのは、息を吸いながら息を吐いて声を出すことは物理的および人体構造的に不可能だからです)
また、声帯の音源から最も遠い共鳴空間のため、音造りに直接参加していませんが、響きの微調整を担っています。
わたしの分野から離れ、耳鼻咽喉科(医療)の世界ですが、鼻の奥に位置する上咽頭の慢性的な炎症に注してください。
上咽頭炎です。
発熱や痛みも少ない理由から気づかず、国民の多くが罹患し、放置している状態です。
実は、この上咽頭炎にかかっていると、高音が出しづらくなります(楠山敏行先生談)。
当サロンの通院者の中にも、上咽頭炎が治ったら「おぉ、高音がスルスル昇る感じがする」とおっしゃっる方が大勢います。
この治療は、東京ボイスクリニック品川耳鼻咽喉科で受けられます。(健康保険適応)
他院では見逃されることがありますので、一度チェックしてもらうと良いでしょう。
☆その他(腹腔や頭蓋骨など)
ここは声道から外れた部位で、実際に空気が通過することによる共鳴ではありません。
声のための息が、声帯からお腹に向かって進んでいくと思いますか?
声のための息が、頭蓋底の骨(篩骨など)を突き破って流れていくと思いますか?
確かに、上手にコントロールすれば、前額・頭頂・鼻尖・耳介・頬骨・下顎オトガイ・うなじ・上腕骨外側上顆・胸骨・鎖骨・肩甲骨・臍・骨盤上前腸骨棘・骨盤底・大腿骨大転子・膝蓋骨・外くるぶしが鳴っている感覚を得ることができます。
これは、空気の流れではないため「共鳴」ではなく「共振」に近いのではと考えます。
気体を震わせ伝播するのでなく、充填組織が顫動して、それを感得しているのですね。
実は、「本当に振るえているのか?」と各部位の状態を調べたことがあります。
身体のどこでも思い通りに声を当てたり反射させたりできると豪語する歌手に同一単音を発してもらい、それぞれの個所を触診および皮膚から垂直に白糸を張って黒紙をバックに振幅を目視する実験を行ってみました。
その結果、呼気の流れに近い個所の振動は確認できたものの、離れていくにしたがって振動は確認できなくなりました。
以下、◎、〇、△、×、?で評価しました。(目視もほとんど識別できず、数値化もできないため、かなり曖昧な報告です・・・)
前額〇
頭頂△
鼻尖〇
耳介×
頬骨◎
下顎オトガイ○
うなじ△
上腕骨外側上顆×
胸骨〇
鎖骨〇
肩甲骨△
臍△
骨盤上前腸骨棘△
骨盤底?
大腿骨大転子×
膝骨蓋×
外くるぶし×
これらは、いわゆるヘッドボイス・チェストボイスやアンザッツとして表現されている類いです。
「ぼくは膝(ひざ)からも音が鳴るんだ。そう、声帯の音をいろいろ反射させニーボイスになるんだ!」
素晴らしいですね・・・
感性が豊かな方なら、微細な共振を感じ得ることが可能だとは思いますが、残念ながらスピーカーユニット(ウーファーやトゥイーターなど)のように、その部位からガンガン音が出てくるようなものではないと考えます。
より良い歌唱のための『道しるべ』にはなるでしょうが・・・
~重要なお知らせ~ ●外喉頭から考究する発声の理論と技術は日々進化しています。この記事は掲載時の情報であり、閲覧時点において最新・正確・最良でない可能性があります。すべての記事の内容に関し、一切の責務を負いません。●記事の内容は万人に適合するものではないため、当サロンの施術に関し、記事の内容通りの効果や結果は保証も確約もしておりません。〔当サロンでは役立てないと判断された場合、理由を問わず施術をお断りします〕●声や喉の不調は、最初に専門医の診察を受けてください。歌唱のトラブルは、最初にボイストレーナー(音楽教師)にご相談ください。
by aida-voice
| 2016-02-10 09:08