地声と裏声 ~簡単解説~ 【過去記事再掲載】


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地声と裏声の違いを知っていますか?
実は、「これだ!」と言う明確な規定がありません。
その理由には、かなり複雑な機構の存在が挙げられます。
さらに、ひとによって使う部位や方法が多少異なるため難しさが増します。
しかし、間違いなく次の二つの軟部組織が関与しています。
簡単に解説してみましょう。
①声帯筋
甲状披裂筋と共に甲状軟骨板内面および輪状甲状靭帯から始まり披裂軟骨の前面と声帯突起に付いています。
披裂軟骨の回転とスライド運動に伴いながら声帯靭帯の緊張を調節し、ピッチに関与しています。
つまり、伸びたり縮んだり(やわらかくなったり硬くなったり)して、声の高さを変えます。
ただし、縮む動作以外は他動的、すなわち自力で伸びることはできません。(筋肉一般の特性)
②声帯粘膜
声帯筋をおおうように厚みある膜様組織。
声帯筋は反回神経の支配を受けていますが、声帯粘膜は、物理的には肥厚度合いで、化学的には水分含有率で、振動率が変化します。
つまり、粘膜が薄くなったり厚くなったりして音の変化が生じます。
また、乾燥すると振動率が落ちたり息が漏れたり(嗄声)します。


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喉頭ファイバーによる声帯(開大時)

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緑色部が声帯ヒダで紺色部が声帯粘膜のエッジ

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喉頭機能模型による声帯(閉鎖時)

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緑色部が声帯筋で紺色部が声帯粘膜




地声:声帯筋と声帯粘膜が共に振動している状態
裏声:声帯筋が硬くなり振動を停止し、声帯粘膜(エッジ部分)だけが振動している状態
ずいぶん乱暴な分け方ですが、おおよそこの手法をメインとしています。
J-POPで使われる『ミックスボイス』は、この声帯筋と声帯粘膜のバランス変化によって成り立つと考えられます。
声楽で使われる『パッサージョ』は、声帯筋と声帯粘膜の同時振動から、声帯粘膜の振動変化に移行する瞬間を言っているのです。
この瞬間をスムーズに実行できないひとを「声が引っくり返る」と言います。
聞き心地が素晴らしいミックスボイスも、なめらかなパッサージョも、ある条件が整っていなければ成し得ません。
それは、声帯筋の柔軟性と声帯粘膜の保湿性です。
声帯筋の柔軟性を獲得するには、内喉頭の循環機能の豊富さと披裂軟骨の回転およびスライドの活発化です。
これらはボイスケアの独自アプローチで向上が可能です。
また、声帯粘膜の保湿を促進させるには、発声前の水分補給とボイスケアサロン声専用キャンディが良いでしょう。。
とくに、メタケイ酸と炭酸水素イオンを豊富に含んだボイスケアサロン声専用天然水もお薦め。(ちょっと宣伝しすぎかな・・・苦笑)
地声と裏声を自然に使いこなしたり、地声に裏声の要素を混ぜたり(音楽で言うところの和音)すれば、心を打つ美声になることでしょう。



追記1:わたしは「声帯は思いのほか小さい!」と頻繁に言っています。でも、上の写真で見ると「そんなことはない。結構大きいではないか!?」と思うひともいるでしょう。喉頭ファイバーは、管の先端に取りつけられた小型高性能カメラが、声帯の直近まで迫って映すため、大きく見えるのです。そう、大きく細部まで見えなければ視認検査になりませんよね。



追記2:以下はレントゲンで見た声帯の位置(赤線部)

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以下は人体解剖矢状面写真を絵に変更して見た声帯の位置(青楕円部)

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追記3:「地声と表声の違いは?」と訊かれることがあります。辞書で調べてみると、地声は、その人が生まれつき持っている声と記されています。次は、表声。えっ、載っていない(絶句)。そう、表声と言う単語は存在していなかったのです。しかし、一般的には用いられていますよね。使い方をを調べてみました。結果、裏声でない自然な声帯発声状態で出す声を、音楽的な意味合いを含めた場合に使用してることがわかりました。結局、地声=表声ですが、歌唱の中では表声の使い方が良いのかもしれませんね。






~重要なお知らせ~ ●外喉頭から考究する発声の理論と技術は日々進化しています。この記事は掲載時の情報であり、閲覧時点において最新・正確・最良でない可能性があります。すべての記事の内容に関し、一切の責務を負いません。●記事の内容は万人に適合するものではないため、当サロンの施術に関し、記事の内容通りの効果や結果は保証も確約もしておりません。〔当サロンでは役立てないと判断された場合、理由を問わず施術をお断りします〕●声や喉の不調は、最初に専門医の診察を受けてください。歌唱のトラブルは、最初にボイストレーナー(音楽教師)にご相談ください。





by aida-voice | 2016-02-09 01:24