2010年 06月 09日
喉づめ発声と胸鎖乳突筋
過緊張性発声(病的を除く)の癖に陥っているひとの俗称を「喉づめ発声」と言います。
発声の初音や高音を出すときに、喉の筋肉が硬くなって、うまく声が出てきません。
音色は、硬い・閉塞的・詰まった音・ガラガラ声・響かない・金属音(高音時)が特徴です。
本人もつらいのですが、その声や歌を聞かされるひとも、耳障りな音に辟易してしまいます。
いったい何をやっているのか?
実は・・・、喉周辺の筋肉を、無意識に固めて、発声を阻害しています。
その主な筋肉は、①肩甲舌骨筋、②胸骨舌骨筋、③胸骨甲状筋、④咽頭収縮筋(輪状咽頭筋)、⑤茎突咽頭筋、⑥茎突舌骨筋、⑦顎二腹筋、⑧舌骨舌筋、⑨オトガイ舌骨筋、⑩胸鎖乳突筋でしょうか。
えっ、胸鎖乳突筋?
優秀なあなたなら、この胸鎖乳突筋は、発声関連筋でないことに気づくでしょう。
そう、胸鎖乳突筋は、頭部の回旋・屈曲を担っています。
つまり、声とは関係ないのです。
これまで、胸鎖乳突筋に注目したのは、交通事故のむち打ちで、高音発声が困難になったテノール歌手の症例だけでした。
(このケースは、負傷により胸鎖乳突筋が腫脹し、その圧で外頚動脈を押し込み、血流不足に陥って声帯運動が不活発になった経緯)
最近の研究結果で、喉づめ発声時に、この胸鎖乳突筋もTightになることが判明しました。
個人差はありましたが、おおむね平常時の1.5~3倍の硬さになります。(筋硬度計による比較実験)
胸鎖乳突筋は、胸骨頭および鎖骨頭から乳様突起へ向かう比較的大きく強い筋肉です。(筋腹がしっかりしている)
首を回旋すれば、ほとんどのひとが浮き上がって見える筋肉ですね。(顎をやや下向きにすると、よりわかりやすくなります)
指でつまめるほどです。
この強大な筋肉がピンと張ると、その下にある筋肉群は圧迫を受け、動きが緩慢になったり妨害されたりします。
とくに、肩甲舌骨筋はダイレクトに影響を受けます。
したがって、胸鎖乳突筋の硬さにも注意が必要なのです。
柔軟性を獲得する方法です。
この筋肉が最大伸長する角度を探してください。
多分、多くのひとは、首を60度~90度回旋して、首を後ろにやや倒す姿勢をとるでしょう。
そして、乳様突起から、三横指下ほどのモーターポイントまで・・・〇〇〇〇〇
ここから先は、必ず専門家の指示を仰ぎ、手技・場所・強さ・時間を明確にしてから行ってください。
意外にも胸鎖乳突筋は脆弱で、副神経や第2頚神経の過刺激により、気分が悪くなったり血圧が急変したりします。
知人が、胸鎖乳突筋の過度な施術により、救急車で運ばれたケースに遭遇しています。
十分注意してくださいね。
適切にアプローチして胸鎖乳突筋の過緊張を取り去れば、喉頭全体の柔軟度もグンと増し、発声がとても楽になります。
そう、喉づめ発声には、効果的な改善方法の一つと言えます。
ボイスケアサロン
會田茂樹(あいだしげき)
~メッセージ~
この記事は投稿時の情報・見解・施術法であり、最新・正確・最良でない可能性があります。内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。會田の理論と技術は毎日進化しています。
by aida-voice
| 2010-06-09 23:17