2010年 04月 08日
カラオケ 襟プッシュダウン高音発声法
当サロンにお越しになる高音が苦手な方に、襟(えり)プッシュダウン法をお教えし、カラオケで試したところ、大多数のひとが効果的とお答えになりました。
歌の上達を求めるものではありませんが、苦手な歌や高音部のとき、使ってみると、乗り越えられるかもしれません。
《方法》
ジャケットやシャツなど、襟付きの洋服の下端を両手で握りしめます。
高音を発声する瞬間の直前に、思い切りグッと引き下げます。
計測しましたが、1秒以内です。(ストップウオッチでの計測は、0.2~0.8秒です。残念ながら、これ以上は正確に測れません・・・)
ポイントは、襟の上部が頸椎の第6番目と7番目あたりにかかり(赤丸部)、その前面が胸鎖乳突筋の鎖骨停止部位上を通過し(緑丸部)、垂直下方向に力が入る(青矢印部)ような形態がベストです。
そして、何よりもタイミングと強さが最重要。
全員、初めはうまくいきません。
「これは効果ないよ~」と必ずおっしゃいますが、あきらめずに試していると、スポンと抜けるように高音が出るときがあります。
しかし、次に試しても、まず同じようにできないでしょう。
何度も何度も繰り返し、じょじょに感覚をつかむと、おもしろいように高音が出ます。
そう、センスと相応の訓練が必要です。
一芸に秀でるには、やはり努力と根気ですね。
チャレンジする勇気、そして、あきらめないひとが最後に勝利を勝ち取ります。
プッシュダウンしたとき、頚部後面の筋肉が反射的硬化を呈し、喉の筋肉(頚部前面)に柔軟性が生まれ、甲状軟骨と舌骨の動きが自由になります。
さらに、胸鎖乳突筋の筋圧を下げることで、上喉頭動脈の血流阻害を防ぎ、喉の運動性能が増します。
まだまだあります。
僧坊筋を含む姿勢筋の下制に拮抗するパワーが生じるので、腹直筋が活動します。(ただし、外腹斜筋は活動していないようです)
つまり、横隔膜の運動を助けます。
歌唱力がアップするものではありませんが、高音を出すタイミング、超高音のコツ、裏声と表声のスライド、ミックスボイスの自由な混ぜ方など、これまで成しえなかった高音の達成感を得られる素晴らしい手法の一つです。
お試しください。
なお、正確なやり方と、本当に繰り返しの練習が大切ですよ。
ボイスケアサロン
會田茂樹(あいだしげき)
追記1:後日談ですが、血のにじむような努力で、この手法を獲得したプロ歌手志望の女性がいます。あきれるほど訓練したため、最後には、プッシュダウンしなくても、感覚的に頚後部に力を入れ、喉頭周辺の筋肉をリラックスするテクニックを完全に身につけました。その結果、めちゃくちゃ美しい高音を楽々出せるようになっていました。声の音色に深みと聴きごたえが増し、『選曲』と『運』が良ければ、メジャーな歌手になると確信しました。おめでとうございます!
追記2:この襟プッシュダウン発声法は、痙攣性発声障害外転型に多少の効果を確認しています。手法は同じです。詳しくは、「痙攣性発声障害Ⅱ 追記特集」の追記18をご覧ください。
追記3:この方法を試している方から「これで良いのですか?」とチェックを求められました。見せていただいたところ、頚部の当てる場所と力加減が狂っていました。ほんの少しでも間違っていれば、どんなに繰り返し練習しても、うまくいかない。絶対に、正しい方法が大切です。ご希望の方は、施術内で簡易チェックしますので、お声をかけてくださいね。また、さらに効果的な、両手を使う他の方法もあります。声楽家、オペラ歌手、アカペラやゴスペルの方々に理想的な訓練方法です。こちらは僧坊筋下部と横隔膜も活発にしますので、呼吸と姿勢も含めて、本当のジラーレを感じ得ることができ、発声の基礎を構築できるでしょう。この方法は最終調査の段階です。
これまで、イメージでしか伝えることのできなかった状態や手法が、医学的根拠に基づいて、ある程度正確に伝授できるようになってきました。何のことかよくわからなかった、前出のジラーレしかり、アクートしかり・・・。
発声に関する多くの書籍やホームページに、さまざまな発声生理学が載っていますが、正しくない記述をよく見かけます。これは、単純な医学書からの知識と、経験予想で導き出されているからでしょうね。実際、人間の喉の筋肉や骨は、各人によって驚くほど異なっています。組織の大きさ・形状・重さ・筋肉の走行方向・筋肉の厚み・骨への付着部の場所の相違・・・、同じ構造の持ち主は誰一人いません。やはり、実際の解剖と、筋運動の直接検証は必須です。
あなたの歌の先生に、声帯の位置を聞いてみてください。あなたの首を差し出し、先生の指でさし示してもらいましょう。ピタッと正しい場所を、理由を述べて言い当てる指導者を知りません。一様に声帯の重要性は訴えますが、どこにあるのかも知らないのです。まあ、歌や声なんて、イメージだけで良いのでしょうかね。以前、あるボイストレーナーから指摘を受けたように「喉の中にいる妖精さんが声を作っている!」のでしょうから・・・
~メッセージ~
この記事は投稿時の情報・見解・施術法であり、最新・正確・最良でない可能性があります。内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。會田の理論と技術は毎日進化しています。
by aida-voice
| 2010-04-08 18:09