披裂軟骨脱臼の整復方法 Part2


040.gif今回は医療従事者向けです040.gif


2009年4月26日に 「披裂軟骨脱臼の整復方法 Part1」 の報告をしました。
その内容に追加する先進アプローチです。
まずは、Part1 をお読みいただいてから、この回の記事をご覧くださいね。

座位または腹臥位 (ただし喉頭周辺を自由に触れる工夫が必要です!) がベストと記載しましたが、チェアーベッドのようなうつ伏せ状態で喉頭を下から触れるポジションが最も良いことが判明しました。
これは、甲状軟骨の自重で筋弛緩を促進させることができ、外皮から喉頭内部へのアプローチが容易になる理由からです。

最初、発声困難や疼痛で甲状軟骨周辺筋が緊張しています。
これを緩解しなければなりません。
特に輪状咽頭筋が硬縮していると、甲状軟骨が深いポジションになり、披裂軟骨尖および小角軟骨が頚椎前面部に触れるため、正常な位置に戻り難い環境になっています。
また、茎状突起から始まる筋 (茎突咽頭筋、茎突舌骨筋、茎突舌筋) を緩めましょう。
この記載内容はOKです。

次に、脱臼側の甲状軟骨翼を指腹で軽く押し込み反転させます。
その状態で、披裂軟骨の正しい位置を確認します。
そして、脱臼反対側の甲状軟骨翼を指腹で軽く押し込み反転させ、繊細な触診で脱臼状態を見極めましょう。
それを念頭に入れて整復をデザインします。
その状態の喉頭ファイバー写真を供覧します。(逸脱した披裂軟骨の位置確認が重要です)
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輪状軟骨甲状軟骨間を両指で狭めながら・・・
これは、母指と示指で、甲状軟骨を引き出し、はさむようにして披裂軟骨を正常位置に誘導します。
この状態の喉頭ファイバー写真も載せましょう。
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その患者さんのパッサージョ付近の音域で発声させます。
一旦元に戻し、高音発声と同時に、輪状甲状関節をスライドさせながら屈曲させます!
片方の手で甲状軟骨を、もう片方の手指で輪状甲状関節を操作します。
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超~ 難しいですよ !!!
ときに、ごく小さなクリック音と共に正常な位置にはまります。
これで整復完了です。

なお、次のケースの披裂軟骨脱臼整復は困難になります。
①気管挿管の脱臼で、周辺組織が大きく損傷を受けいるとき。これは、靭帯が伸びきっていたり関節面軟骨が壊れていたりして、整復しても、すぐに脱臼位置に戻ってしまいます。
②長期にわたって脱臼状態を放置した場合。これは、脱臼位置で、披裂軟骨の周りの軟部組織が固着して動かなくなるためです。やはり元に戻せません。
③陳旧性脱臼。いわゆる脱臼が 『癖』 になっている状態です。肩や肘の関節が何度もぬけて 『癖』 になる話を聞いたことがあると思います。これと同じですね。

お大事になさってください。




ボイスケアサロン
會田茂樹(あいだしげき)




追記1:上の3枚の写真は、解説をわかりやすくするために用意したものです (披裂軟骨脱臼状態ではありません)。喉頭ファイバーで観察しながらの脱臼整復は、患者さまに大きな負担と痛みを強いる可能性があるため行いません。なお、披裂軟骨脱臼整復は、医師監督によるものです。骨折・脱臼・捻挫・打撲・挫傷のケアを得意とする国家資格者:柔道整復師の本領発揮といったところでしょうか・・・


追記2:摘出喉頭(薬品固定していな生の状態)を用いて、右披裂軟骨を内前方脱臼させた様子。その際の声帯Tensionと周囲軟部組織を観察し、その後に種々の整復方法を編み出した。写真を絵画に変更。アメリカ合衆国メイヨークリニック喉頭機能外科教室にて。実験者は會田茂樹。ご献体いただいたご奇特な方に心より御礼申し上げます。
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赤楕円部が脱臼状態の披裂部






~メッセージ~
この記事は往時の外喉頭外来〔医師と共同研究〕時のデータに基づくものです。よって、不確かな蓋然性も高く、内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。現在は病気に対するアプローチは行っておりません。声の不調は医師にご相談ください。
by aida-voice | 2010-03-03 11:55