甲状腺手術後の声が出し難い症状改善 Ⅰ


★ 反回神経麻痺の場合 ★

癌や腫瘍によって甲状腺を摘出する場合、反回神経損傷に気をつけなければなりません。
反回神経は声帯を動かす神経ゆえ、麻痺(まひ)を起すと、声帯が閉じなくなり強度の嗄声(かすれ)となります。
日常生活が大変困難になります。
以前、世界で活躍し、貴重なリリコ・スピントの声質を持つテノール歌手ベー・チェチョル氏を施術したことがあります。
彼は、2005年10月に甲状腺癌に罹患し、ドイツで全摘手術を受けた際に反回神経を切断され声を失いました。。
2006年4月に甲状軟骨形成手術 I 型と IV 型を行い、声を取り戻しました。(手術室で初めて賛美歌を歌えたのです!)
しかし、オペラ曲を歌う精度には至らず、発声能力を向上させるために2007年春、會田ボイス整骨院(現:ボイスケアサロン)に来院されたのです。
詳しい検査の結果、甲状腺摘出時の喉頭周辺の皮膚と筋肉の癒着が認められました。(横隔膜神経が切断されていることも発覚)
反回神経麻痺の嗄声と、外喉頭筋群の瘢痕と癒着によって筋肉の動きが緩慢になり、過緊張を伴っていました。
日本滞在二週間にわたって、一日朝晩二回の施術を行いました。
内容は、物療(喉頭牽引・微弱電流・喉頭専用低周波など)と精密な喉頭手技です。
喉頭周辺筋と横隔膜の運動性を高め、再起への突破口を開き、この様子を NHK が長編ドキュメンタリーとして TV 撮影を行いました。
当時のケアでまずまずの成果を得ましたが、ドミンゴからも認められた極上歌唱の再生を目指すベーさんにとって、決して納得できるものではありませんでした。
そのため、公表は控えていましたが、最近、グングン回復しており、NHK や民放 TV 局で放映されたことと (病気と治療の様子が広く公になっている事実)、コンサート開催や CD リリースなど、大きく活躍してきたため、同じような症状で苦しむ方々が勇気と希望を持っていただけるよう願って、今回、アップしました。
この点をご理解いただき、ご覧ください。(このケアに関する文章内容・写真のすべては、ベー氏およびプロダクションの依頼を受けて施術を行った會田茂樹が権利を所有しているため、転載はお断り申し上げます。また、韓国大使館の賛助にも厚謝いたします・・・)
ベーさんのさらなる活躍を祈りつつ、心より感謝申し上げます。

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ボイスケアサロン
會田茂樹(あいだしげき)





追記1:ベーさんの喉頭は、私が触って調べてきた甲状軟骨の中でも、トップ3に入る大きさと形状の良さを有していました。また、舌骨の Position も極上で、胸郭も特筆すべきものでした。さすが世界で嘱望される歌手です。声は、声帯をふくめ、すべて筋肉が関与しています。手術創周辺の瘢痕・癒着がさらに改善し、外喉頭筋の動きが活発になれば、元の美声が戻ってくる可能性はおおいにあります。がんばれ・・・、ベーさん!

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喉筋の運動能力回復用低周波通電
 

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瘢痕および癒着除去微弱電流
 

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瘢痕および癒着のためのピンポイントストレッチ
 

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発声能力を高める喉頭クリニカルマッサージ (NHK取材中)
 

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ベーさんと會田茂樹(まだ髪が長いとき ‐笑‐ )
身長(172㎝)がほぼ同じなのに顔と頚の大きさが全然違う。
下顎の広がり、および、首の太さが共鳴腔の大きさを物語っています!!!
これこそ、彼のクリアでゴージャスな声の “響き” と “艶” の、答えなのです・・・




追記2:甲状腺手術後の施術は、発声能力向上より筋肉の体質改善を主として始めるため、発声の不安定は常に存在します。瘢痕・癒着による筋硬度の度合いによっては、術前より術後のほうが、声が出難い感覚や音声反転が確認された日もあったことをご報告しておきます。これは、発声のための筋肉の動き方が若干変化してしまう理由ですね。残念ながら、やはり簡単ではありません・・・。同じ歌唱をするつもりでも、調が変わってしまいます。




追記3:ベーさんのCD情報 
CD『輝く日を仰ぐとき』には Special Thanks として Shigeki Aida の名前も載せていただいております。




追記4:多くの感激メールをいただきました。ありがとうございます。ベーさんの歌に対する真摯な情熱は多くの人々に感動と勇気を与えています。当時の二週間の施術記録やビデオ撮影は膨大な量で、検証するのに2年以上かかりました。今では、甲状腺摘出後の外喉頭ケアはさらに進化し、好成績をあげています。




追記5:わたし(會田茂樹)も甲状腺腫瘍にかかり、腫瘍が上喉頭神経外枝を圧迫して時々「声がかすれる」「声を張れない」「すぐに疲れてガラガラ声になる」状態です。声で苦しむベーさんの気持ちが痛いほどわかります。同じような駄声となる可能性のある甲状腺疾患は、バセドウ病や慢性甲状腺炎があげられますね。わたしの甲状腺腫瘍が発覚して4カ月経ち、自分自身を実験材料として研究を重ねた結果、除圧には胸骨舌骨筋の弛緩が大切であることが判明しました。さらに、ある手法を用いると、喉頭を過緊張させず声帯Tensionを張る方法を見つけました。これは、健常者の高音発声の促進にもつながります。つまり、高い声を簡単に出せるようになるのです。これらは、いずれ発表の予定です。ご期待ください。



~メッセージ~
この記事は投稿時の情報・見解・施術法であり、最新・正確・最良でない可能性があります。内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。會田の理論と技術は毎日進化しています。



 
by aida-voice | 2010-02-16 20:38