2010年 02月 01日
歯と声《 歯並びが悪いと声はヘン !? 》
「わたしは歯並びが悪いから歌がうまくないのよ・・・」 とおっしゃる女性に会いました。
はたして本当なのでしょうか?
歯並びと声を、とくに歌に関して、いろいろ簡単な実験をしました。
まず、聞こえからです。
本当は、歯並びの悪いひとを一人選び、その悪い状態で発声したものを録画録音し、その後、歯列矯正をして、声を比べるとベターでしょう。
ただ、歯列矯正に数年もかかっては、喉頭筋や歌唱力も変化しますから、正確ではありませんよね。
そこで、見事な歯をお持ち方と、乱ぐい歯の方に下記の簡単な発声をしてもいます。
喉頭の形状や歌唱のテクニックは同等程度のひとを選びます。(これまた、若干不正確ですが・・・)
録画録音して聞き比べます。
比べるポイントは、歯間からの空気漏れが音声に影響しているかどうかですね。
最初に音声検査グラフ (音圧レベル×時間×周波数の3次元表示) を記録します。
グラフでは、発声のタイミングによって、違いを確認できました。
とはいえ、条件を統一することが難しかったため、実際は差異存在の可能性にしか過ぎませんが・・・
また、グラフ2の t 軸で突然急降下している箇所は、無発声時なのか息漏れなのかが厳密に判断できていません。
グラフ1 歯並びが良い方
グラフ2 歯並びが良くない方
上のグラフだけでは、声に違いがあるのか、歌がへたになるのか、わかりません。
機械に頼らず、耳を信頼して、何度も何度も聞きました。
音の質を聞き分ける能力には多少長けていると自負できるわたしですが、正直・・・、わからない程度でした。
では、空気はどのように出ているのか?
実験です。
上記のお二人に、超音波吸入器で思いきり蒸気を吸い込んでもらいます。
唇 (くちびる) を上下にグッと開け、歯をむき出して5ミリ開口します。
黒い背景を用意し、一定の同声を出します。
その際の、水蒸気 (白い煙様) の流れを目で追います。(一瞬にして消えますから、目を凝らして見ます)
歯並びが悪いと乱れます。
やはり呼気の 【 整流 】 はなくなるのです。
しかし、聞こえに、それほど影響しないのはどうしてでしょう?
それは、唇で補正しているからだと考えられます。
今度は、両者ともに唇をすぼませておこなうと、水蒸気の流れに大きな違いがなくなりました!
声の大本 (おおもと) は声帯です。
声帯が振動して鳴る音は、喉頭原音といって、とても小さな音です。
アコースティックギターの弦をはずして、つま弾いたら、それほど大きな音にならないのは予想できますよね。
喉頭原音を、色付けたり響かせたりするのが、各共鳴腔です。
主に、喉頭室、梨状陥凹、咽頭、口腔、鼻腔などがあります。
《 咽頭共鳴腔を指示 》
そして、最後の調節システムとして、唇 (くちびる) が存在します。
この唇が、案外、大切であることもわかってきています。
これらの結果、きれいな歯は審美的には良いと思いますが、歯並びだけで声の質を語ることは難しいでしょう。
したがって、歯並びが悪くても、声がヘンになることはありません。
さらに、歯並びが悪くても、歌がうまくなることは可能です。
そう、槇原敬之さんは、すばらしい歌を歌っていますよ!
ボイスケアサロン
會田茂樹(あいだしげき)
追記:歌にとって悪影響なのは、歯のトラブル (虫歯で痛みを伴っているとき、上顎洞炎などで腫れがある場合)) や顎関節症です。これらは早く治してくださいね。
~メッセージ~
この記事は投稿時の情報・見解・施術法であり、最新・正確・最良でない可能性があります。内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。會田の理論と技術は毎日進化しています。
by aida-voice
| 2010-02-01 04:42