2010年 01月 24日
太っているひとは歌がうまいの?
実は、太っているから歌がうまいのではなく、共鳴腔が大きひとが歌がうまいのです。
さらには、実は、歌がうまいと断言はできず、良い声がよく出る、あるいは、声が出しやすいために、歌がうまくなる可能性が他のひとよりも高くなるということなのです。
そして、歌に最も大切な共鳴腔は、舌骨周辺にある咽頭共鳴腔です。
首の付け根です。
共鳴腔は、楽器で例えることができます。
ギターならサウンドホール(穴)のある胴、ピアノなら響板とフレーム、サックスならボディから朝顔菅です。
きれいな音を出すには、最適な空間の大きさが必要です。
そう、通常、首周りの部分が大きくなれば、太っているように見えるかもしれません。
テストしたことがあります。
◎ 肥満型で首が太いひと
◎ 肥満型で首が細いひと
◎ やせ型で首が太いひと
◎ やせ型で首が細いひと
彼ら彼女らの声を聞きます。
質感、響き、運動性能、簡単な歌唱などです。
その結果、 最も「声が良い」「歌がうまい」と感じたのは、やせ型で首が太いひとと、肥満型で首が太いひとの一部でした。
肥満型で首の太いひとが二分されるには訳があります。
それは、次の実験で理解できます。
肥満型で首の太いひとの、舌骨最前部から喉頭隆起の厚みを、ノギスで計測します。(詳しい数値は割愛)
その厚みとは・・・、そう、皮下脂肪です。
すると、ある法則がありました。
厚みの少ないひとほど声が響き、厚みのあるひとは声がこもっていました。
このことから、皮下脂肪による首の太さではなく、本質的な首の太さがかかわっているようです。
当テストは、もちろん、耳だけを頼りにした主観です。
しかし、実際、CDやコンサートで「声が良い」「歌がうまい」と感じるのは、結局、一般聴衆ですから、間違っていないと考えます。
やはり、体型には関係なく、甲状軟骨や舌骨そのものが大きく、かつ、その周辺の柔軟性があるからこそ、首が太く見えるだけなのです。
甲状軟骨の大きさは、首の太さ(厳密には頚椎)に比例するといわれていますから、相乗的に考察すると、甲状軟骨が大きくなるほど首も太く見えることになります。
太っているひとだけでなく、やせていても背が低くても、首が太く甲状軟骨が大きいひとも多数おりますので、個人差があるのも特徴ですね。
結局、肥満型・やせ型が大切なのではなく、首周りの大きさだったのです。(皮下脂肪の太さはダメですよ!)
さあ、共鳴腔を大きくして、素晴らしい声を獲得してください。
これらの空間を操作するのは、すべて筋肉や軟部組織の役目です。
共鳴腔を大きくする条件は、中咽頭収縮筋の柔軟性と、茎突舌骨筋の弛緩度と運動性です。
まずは、舌骨後端が中咽頭収縮筋に当たっていないか、固着していなかを確認してください。
次に、茎突舌骨筋の動き方を注視してください。
実は、茎突舌骨筋には並走する茎突舌骨靱帯があります。
ときどき、巻きついていたり癒合していたりするケースがありますから、決して見逃さないでください。
このような場合は、中咽頭収縮筋より先に茎突舌骨筋をアプローチしなければなりません。
また、茎突咽頭筋の関与の有無もチェックしておきます。
それらをふまえ、各筋肉のストレッチをしましょう。
丁寧に探り出して、繊細かつ効果的なストレッチです。
力の入れすぎは禁物です。(筋膜炎や筋断裂を起こしますよ!)
また、力が足りないと、効果がありません。
加齢や疲労で弛緩傾向にある場合は、スポット筋トレが効果的ですよ。
適切なケアが重要。
空間率を大きくして、自由にコントロールできれば、誰もが素晴らしい声や歌になる可能があります。
お試しください。
茎突咽頭筋と茎突舌骨靭帯の描かれた図
茎突咽頭筋に、やや弛緩した茎突舌骨筋が並走している図
ボイスケアサロン
會田茂樹(あいだしげき)
追記1:首周りが細いにもかかわらず、甲状軟骨 (のどぼとけ) が大きなひとには、共通の特徴があります。それは・・・、喉頭の筋肉が硬いことです。やはり、支えたり動かしたりするのが大変なのでしょうね。音声医から過緊張性発声障害と診断された多くの患者さまで検証済みなのです。しかし、喉頭の柔軟性を十分に獲得すると、「声がつまる」 「なんとなく出しにくい」 「大きな声が出ない」 「響きがない」 から一転して、驚くべき美声になります。本当に驚きます!
追記2:クイズ
Q 上の女性二人の絵で、左右どちらの女性の声が良い (あるいは歌がうまい) 可能性が高いか?
A 右の女性
《解説》
左に比べ、右の女性の方が首が太いので、甲状軟骨や舌骨後部の共鳴腔が大きいように見えます。そのため、発声の好条件を備えており、声が良い (あるいは歌がうまい) 可能性があります。しかし、あくまで可能性ですからね。
~メッセージ~
この記事は投稿時の情報・見解・施術法であり、最新・正確・最良でない可能性があります。内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。會田の理論と技術は毎日進化しています。
by aida-voice
| 2010-01-24 09:10