咽頭収縮筋の本態


咽頭収縮筋は上中下の三種に分かれます。
嚥下の際に喉頭を収縮させます。
つまり食物や水を飲み込むためにあります。
そうなると発声には関係ないと考えるのが当然です。
ここまでは教科書での話し。
延べ1万人以上の喉頭を触診してきた結果、発声のアクションそのものには関与しないが、ある条件によって発声を邪魔することがわかってきました。
その条件とは、下咽頭収縮筋のTonusです。
単純に筋肉が硬い状態です。
病的に硬化しているのではなく “癖” になっているのです。
つまり、何もしていなくても、この筋肉が硬い状態では、美声発声には不可欠である「喉頭の運動の自由度合い」と「各腔による共鳴空間」を奪ってしまいます。
これは一般に言われる「体が硬い」と同じ意味をなします。(関節ではなく筋肉・・・例えば大腿二頭筋や腓腹筋などの筋線維伸長率が緩慢な具合)
体が硬いくらいでは日常生活の行動には何ら問題ないのですが、スポーツをするならどうでしょう?
やはりスポーツ能力は落ちますよね。
ましてや一流アスリートにはなれません。
声は、声帯を含め、すべて筋肉によって作られます。
発声関連筋が自在に動いたとき初めて歌唱テクニックと歌心を添加することができ、トップアーチストとなるのです。
とくに声楽・オペラ・アカペラ・声優・アナウンサー・ナレーター・俳優など声色を重要視する仕事や芸術活動には、咽頭収縮筋の常態柔軟性が必須となります。
良い声のためにも咽頭収縮筋(特に下咽頭収縮筋)を常に柔らかくしていてくださいね。
Good指標は、①グライディングテストでクリック音皆無、②筋硬度計測値20Tone以下、③甲状軟骨左右移動性の確保の3つがもれなく必要です。



ボイスケアサロン
會田茂樹(あいだしげき)



追記1:下咽頭収縮筋は迷走神経由来の上喉頭神経外枝と反回神経など発声関与神経に支配されていますから、無理なストレッチングやマッサージによって神経損傷や神経麻痺を引き起こしやすいので、無茶な素人手技はお控えください。現在も、自分でマッサージして筋肉や神経を傷つけた人を多く診ています・・・。(治りが悪いので大変ですよ!)

右斜後から見た下咽頭収縮筋のエッジ部分(緑の線内部)
咽頭収縮筋の本態_e0146240_1485974.jpg




追記2:丁寧な触診で下咽頭収縮筋が硬いと感じられる人は10人中5~8人もいます!(日本人のみ)




~メッセージ~
この記事は投稿時の情報・見解・施術法であり、最新・正確・最良でない可能性があります。内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。會田の理論と技術は毎日進化しています。
by aida-voice | 2009-11-11 11:43