痙攣性発声障害 症状が良くなる人 変わらない人


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多くの痙攣性発声障害(SD)の患者様を診ています。(未治療の方から、音声訓練、ボトックス注射、甲状軟骨形成術、筋切除手術などの治療を受けた後でも良くならない方も大勢います)
現在の医療では、残念ながらSDそのものは治りません。
それでも、症状が良くなり日常生活に問題ないまで回復する人もいれば、どんなに施療を繰り返しても全く良くならない人もいます。
その違いはどこにあるのでしょう?
これは幾度も報告していますが、先日、またまた自身の病気をしっかり受け止め、勉強し、前向きに進んでいるSD新患がいらっしゃったため再記します。
重要なポイントを列記します。
・自分の症状(声と喉の様子)を客観的に観察できる
・運命を受け入れている(決して諦めているのではありませんよ!)
・常に向上しようと情報を集め、改善に向けて不断の努力をしている
・音に敏感 ← この部分が決定的に大切かも!?
・筋肉や動きの感受性に富む ← これも超大切ですね!
良くなっていった人のほとんどが上記をもれなく敢行していました。
どれか一つ欠けても良くならないでしょう・・・
そこで、喉頭施療以外の分野で、声の改善に重要な法則をお伝えしましょう。
まず音を聞き分ける能力を身につけてください。
①人の声に傾注する:ある人の声の変化を見逃さないようじっくり聞いてください。実際、人の声は朝昼晩日々変化するのです。喜怒哀楽でも大きく変化します。その機微的変化を聞き分けてください。
②自分の声に傾注する:①が完全になったら、自分の声を客観的に聞き分けましょう。詰まるとか出し易いとかの問題ではありません。好き嫌いも除外します。他人の声の如く冷静に声の変化をとらえてください。
③聞き心地の良い人の声を観察する:「こんな声になりたい」と感じる人の声を聞き、自分とどこが違うのか何が起こっているのかを感じ取り理解しましょう。ここまで出来れば、TV局アナウンサーの声を聞いただけで「あっ、このキャスターは今日うれしいことがあったな」「なるほど、やや感情的にニュースを読んでいるよ」とそのときどきの発声状態やメンタル環境までも判断できます。
次に、喉周辺の筋肉存在と運動に敏感になりましょう。
①喉の筋肉の正しい場所を知る:声は、声帯を含め、全て筋肉(軟部組織)によって生成されます。たとえば、テニスのサーブのとき肘の角度が悪く注意をされた場合、それを正すのは簡単です。誰もが肘がある場所と動きを知っているからです。しかし、あなたは肩甲舌骨筋の場所と動きを正しく認識できますか。そうです、発声に必要な筋肉の稼働と不必要な緊張の除去が大切であり、その存在場所と動き具合を知ってもらうのが私(會田茂樹)の役目なのです。重要なことは適切な場所と正確な動きです。
②動きを感じる:①から付帯する事項ですが、正しい場所を知ったのち、その動きを感じてください。「その筋肉は、ここにあって、こう動くのですよ!」と私の指で教えて差し上げます。そう、まさにテニスを手取り足取り教える実践コーチのようです。したがって筋感覚が養われ、徐々に筋肉の稼働が可能になってきます。この筋肉の運動性能がSDの痙攣様筋硬縮に打ち勝ったとき初めてSDを克服できます。
③微細筋運動能力の開発:「あなたは耳を動かすことができますか?」これは原始的な筋肉である3つの耳介筋に依っています。これを自在に動かすのと同じように喉頭の筋肉を動かすことができる人がいます。(声帯そのものは難しいのですが、喉頭周辺筋は自律筋ですから自動運動は可能なはずです)そこで練習を積んで痙攣が発症しやすい初音発声時に代償的運動や弛緩作業を行うことでSDを乗り越えることができます。ただし、悔しい限りですがSDの病気そのものは治らないことを再忠告申し上げます。どの筋肉をどの程度動くようになればよいのかは個人差がありますので、會田茂樹にお尋ねください。各種の詳しい検査をした後、お教えできると存じます。

痙攣性発声障害によって・・・
声が詰まって出ない
声が割れて出ない
声が震えて出ない
大きな声が出ない

お辛い心中をお察し申し上げます。
私も甲状腺腫瘍によってときどき圧が増悪して声が出し難くなったり咽たりします。(自己施術によって即時回復を目指していますが、上喉頭神経外枝の位置が腫瘍の直下にあるためか、未だ完璧ではありません・・・)
声の苦しい問題(各種音声障害)は誰よりも身近に感じています。
私自身を実験材料にして皆様のお役にたてればと願っています。









ボイスケアサロン
會田茂樹(あいだしげき)









追記1:上記は内転型について記載しました。外転型はやや異なります。内転型より高度の感性と運動性が要求されます。特に後輪状披裂筋と外側輪状披裂筋の動きの違いを感じ取り、それらが動く様子をイメージ化して、運動させなければなりません。非常に難しい・・・。これまでに出来た人は極々僅かです・・・










追記2:音声振戦症の喉頭筋運動法則も徐々に解明されてきました。声門下圧も重要なポイントですね。当記事では書ききれないため、詳しくは優秀な耳鼻咽喉科医に直接お聞きください。










追記3:次の喉頭ファイバー写真は、上記に記載したようなSD症状のコントロールが出来ていないときの発声(上)と出来ているときの発声(下)の状態です。そう、同一人物です。日によって話す相手によって場所や環境によって言葉の種類によって、コントロールが出来る場合と出来ない場合が存在します。披裂軟骨の内転度合いや声帯筋を含む周辺筋の緊張具合が極端に異なります。(病院で検査:筋状態の総合的比較であり、絶対的正確なものではありません・・・)
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追記4:SDの改善目的で当サロンにお越しになる方は、①完璧な治癒は難しいこと、②長期間かかること、③良くならない可能性の方が大きいこと、をご承諾いただきます。また、初検時の検査で「どの筋肉の痙攣がメインか!?」「詰まる度合いは!?」「発声に不要な筋過緊張の存在の有無」「呼吸効率」などはそこそこ判明しますが、「どの程度改善するのか?」「どこまで発声能力が向上するのか?」「どのくらいの通院期間が必要か?」を正確に見極めることは困難です。やはり筋肉の曖昧さと個人差があるため、施術を何度も続けなければ改善率を推し測ることはできないのです・・・









~メッセージ~
この記事は往時の外喉頭外来〔医師と共同研究〕時のデータに基づくものです。よって、不確かな蓋然性も高く、内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。現在は病気に対するアプローチは行っておりません。声の不調は医師にご相談ください。
by aida-voice | 2009-11-03 00:54