2009年 06月 21日
声のための呼吸
発声にとって、呼吸は避けて通ることのできない重要な要素の一つです。
今回は呼吸関連のなかでも、声門通過量に関してお伝えしましょう。
ご存知のように呼気は横隔膜を駆使した胸郭内圧によって能動的に行われますが、吸気は主に物理的現象である陰圧によって行われます。
つまり、思いっきり息をはいたら、自然に息が入ってくることです。
さて、その際、管としての喉頭が狭かったら空気の流れは阻害され自由度を失います。
この狭いケースが多いことに驚いています。
チェックしてください。
イスにすわり両手は膝の上に置いて姿勢を正し、肩の力を抜いてリラックスしてください。
ゆっくり落ち着いて呼吸してください。
そして自分の呼吸を感じてください。
特にノドの中を流れる息の流れを。
深呼吸までは必要ありません。
次に、舌骨前縁部あたりの皮膚を前に引っ張り出してください。(舌骨のラウンド部分から舌骨そのもを経皮的に直接引っ張り出してもOKですよ ← D難度のテクニックです!)
その状態で同様に息の流れを感じてみましょう。
どう感じましたか?
ⅰ呼吸が楽になった・息の流れがスムーズになった・呼吸が太くなった・異物感がとれた
ⅱ変わらない
まずⅰの人の分析です。
若干の喉頭周辺筋の硬さがある人です。
そして感性豊かでもあります。
ⅱの人は二通り考えられます。
一つは過緊張性発声が強い、あるいは、喉頭周辺筋がめちゃくちゃ硬いため、舌骨を引っ張り出せない人。
≪痙攣性発声障害や音声振戦症の患者様もこの傾向が強いですね・・・≫
もう一つは喉頭がしなやかで発声に関して全く問題のない人。
トランペットを吹いているとします。
マウスピースから続くマウスパイプが細くて、空気の通りが悪かったらどうでしょう。
吹きやすいと思いますか?
上手くなると思いますか?
人間のノドも同じです。
どんなに横隔膜を稼動させても、喉頭の管としての流れる空間が狭かったら、最適な呼吸は不可能なのです。
より良い声になるためにも、正しい呼吸機能を真剣に考えてください。
さあ、声門通過量をコントロールできる極上の喉頭に整備してください。
ボイスケアサロン
會田茂樹(あいだしげき)
追記:喉頭の声門通過量が増えると・・・
ピッチのコントロールが上手くなる (つまり高音発声が楽ちん)
ファルセットが繊細かつ綺麗になる (声帯粘膜振動が安定する)
サ行・ハ行の言葉がはっきり聞こえるようになる (舌の運動性にも関与)
母音のフォルマントが大きくなる (声に艶がでてくる)
ビブラートがかけやすい (呼気の増減がスムーズ)
声が響く (単純に呼気量/時間が増加するため)
痙攣性発声障害の症状が緩和する (詳しい理由は未解明ですが・・・)
追記2:「舌骨あたりの皮膚を強く引っ張り続けると、喉頭の筋肉は柔らかくなるか?」の質問の回答は「NO」ですね。残念ながら皮膚の伸び率が筋伸度に勝ることはないと考えます。やりすぎると、きっと皮膚がたるんでしまいますよ。ご注意ください。
~メッセージ~
この記事は投稿時の情報・見解・施術法であり、最新・正確・最良でない可能性があります。内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。會田の理論と技術は毎日進化しています。
by aida-voice
| 2009-06-21 16:17