痙攣性発声障害に有効な寝かた・・・


痙攣性発声障害(SD)や音声振戦症の方々にお願いして「寝かた」によって症状に変化がないか試してもらいました。
種類は三つ。
仰向け(仰臥位)、横向き(横臥位)、うつ伏せ(腹臥位)です。
もちろん睡眠時間中は誰でも寝返りを打つため、朝まで同じ格好で寝られるわけではありませんが、寝入るときに意識してもらいました。
その結果、朝起きたとき、仰向けのときに「詰まる」感覚が最も多いことがわかりました。
これは、他の寝かたに比べての個人の感想であり、具体的に再検証したものではありません。
考えるに、仰向けのときは喉頭が重力によって落ち込みます。
つまり、頚椎前面により近くなり、中および下咽頭収縮筋ならびに輪状咽頭筋を圧迫します。(MR写真楕円付近)

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気道も閉塞傾向になるでしょう。
この状態で6~8時間経過すると、圧の力は小さくとも、はやり起床時に詰まった感覚を得るのは当然です。
これは健常な喉にも当てはまりました。
音声疾患を持たない人にも同様のお願いをして試しました。(會田茂樹自身もチェックしてみました)
喉頭にトラブルの無い人は「詰まる」感覚を感じたことがないので変化の度合いがわかりません。
そこで、起床してすぐにコップ1杯の水を一気に飲んでもらいます。
その違いや変化を報告してもらいました。
すると横向きやうつ伏せのときは何も感じなかったのに、仰向けで寝て起きたときに水を飲むと「ノドがゴクゴク音がした」「何となく飲みこみにくい」と!
日々、同じように確定的ではないことも付話しています。
私自身も試しました。
私の喉頭は日々整備しているため、非常にフレキシブルで発声ポテンシャルを保っています。
また、仰向けで寝ても、目が覚めると横向きになっていることが多いため(笑)正確ではありませんが、確かに起床直後の喉頭は、触診で仰臥位のときにしばしば若干硬いように感じました。(硬いといっても筋硬度計では20トーン程度の数値でした)
したがって、できる範囲で構いませんので、積極的に横向きやうつ伏せで寝たほうが、翌日の症状が好結果につながる可能性が高くなるでしょう。(残念ながら効果絶大の決定的処方ではありませんが・・・)
個体差も大きく、何より正確な実験ではないため、公的な発表はできませんが、痙攣性発声障害や音声振戦症で苦しむ皆さまの少しでもお役にたてればと願っております。




ボイスケアサロン
會田茂樹(あいだしげき)





追記1:痙攣性発声障害などの音声障害の患者様だけでなく、声を大切にする方にも当てはまりますので、可能ならオーディション・レコーディング・ライブ・コンサート・リサイタルなどの本番の前夜は仰向けを避けると良いかもしれませんね。ただし、寝かたに固執するあまり、寝付けなくては元も子もありませんのでご注意ください。声にとって睡眠不足は最大の敵ですからね!



追記2:声に良い『枕』やその使用法を開発中です。首・肩だけでなく、声のためにも枕選びは重要と考えます。



追記3:甲状軟骨の大きさにも関係があるようです。概して頚周に比して甲状軟骨が大きい人が「詰まる」感を訴えることが多いように思います。甲状軟骨は軟骨組織で形成され、声帯を入れるケースのようなものですが、大きさと厚みに比例して重量が増します。それゆえ仰向けの際、大きな甲状軟骨はより落ち込んでしまうのでしょう。しかしながら、大きな甲状軟骨は内部体積が大きいため、聴き心地の良い音色に重要な第4フォルマント構成には欠かせない事実もわかっています・・・



追記4:もちろん、病気でない(発声時の悪い癖のような)過緊張性発声の人にも当てはまります。なお、低緊張性発声障害および痙攣性発声障害内転外転混合型のデータは入っておりませんことを付記いたします。




~メッセージ~
この記事は往時の外喉頭外来〔医師と共同研究〕時のデータに基づくものです。よって、不確かな蓋然性も高く、内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。現在は病気に対するアプローチは行っておりません。声の不調は医師にご相談ください。
by aida-voice | 2009-06-11 19:28