甲状腺摘出手術後の外喉頭筋の瘢痕・癒着(改訂)


甲状腺摘出手術後の外喉頭筋の瘢痕・癒着のお話です。
当サロンには大勢の術後ケアを目的とする患者様がいらっしゃいます。(外来担当する病院でも多数診ています)
甲状腺の手術は、反回神経を損傷しないかぎり声に問題はないとされています。
しかし、「何となく声が出し辛い…」「手術前の声と違うような気がする」「ほんの少し声がかすれている」「高音が出なくなった」「むせやすくなった」「喉が乾燥する」などを訴える方もいらっしゃいます。
それらの原因の一つとして、手術による軟部組織の瘢痕と癒着があります。
以下絵の楕円が好発部位です。(今回は青色で描いてみました…)
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もちろん甲状腺の手術は成功です。
したがって何ら問題はないのですが、他者には分からない程度の違和感を感じるのです。
手術によって筋組織が切断され、その部位が腫れたり血溜になったりして組織が変化します。
それが固まって瘢痕になったり、軟部組織どうしがひっついたりして癒着になります。
私は、一色信彦京都大学名誉教授の執刀する喉頭周辺の手術を隔週で数多く見ております。
ちょっと話は脱線しますが、一色先生の手術は実に見事です。
手術衣を着てメスを持った瞬間、身長が10センチは伸びたのではと見まごうほど凛々しく立たれます。
一色先生は78歳ですが現役バリバリで、他者を寄せ付けない華麗な手技と体力の持ち主です。
心より一色先生に感服します…。
閑話休題、私が一色クリニックで喉頭クリニカルマッサージ外来を開設したころは、一色先生の手術でもフラップマッスルとしての胸骨舌骨筋、肩甲舌骨筋、甲状舌骨筋などはクロージングの際も筋肉の断片を集めているだけでした。
その後、「會田先生に会ってから瘢痕や癒着の重要性を再認識した。できるだけ筋組織を傷つけないよう心掛けなければ。」とおっしゃっていただきました。
誠に光栄です。
手術創周辺をフェザータッチで探ると、ゴマ粒大のしこり状の瘢痕部や、筋肉と筋肉がほんの少し癒着して動きが悪い部分を見つけることができます。
術後数年経過して固着してしまったものは改善が難しいのですが、1年以内なら、かなりの確率で快癒に向かいます。
ここでの快癒の定義は、瘢痕・癒着が無くなるのではなく、発声が苦にならないということです。
物療として、組織に音波の微細な振動を与えて柔軟性を獲得したり血流を良くしたりする超音波治療器を主として用いますが、やはり的確な軟部組織軟化手技が最も重要です。
軟部組織軟化手技を卑近な例にすると、雪印北海道100さけるチーズ(プレーン)を袋の上から絹糸ほどの細さにさくようなテクニックを必要とします。
指先の相当なトレーニングと根気が必要です。
加えて、発声し辛い状態で声を出し続けていると、過緊張性発声や喉詰め発声に移行し易い傾向があることも分かってきました。
十分お気をつけください。
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これまで実に多くの甲状腺手術後の患者様を診させていただきましたが、甲状腺に関しては伊藤病院の伊藤公一先生が日本一ですね。
外皮から探っても素晴らしい手術を行われていることが、私の指に伝わってきます。
また、以前、某TV局アナウンサーの錐体葉(甲状腺の変形した形)に関して問い合わせたところ、お忙しいにもかかわらずご丁寧な資料を送っていただきました。
本当に優秀な人物ほど、他者にも優しくできるのですね。
感動しました。
甲状腺疾患でお困りの方は伊藤病院をお勧めします!







ボイスケアサロン
會田茂樹(あいだしげき)






~メッセージ~
この記事は往時の外喉頭外来〔医師と共同研究〕時のデータに基づくものです。よって、不確かな蓋然性も高く、内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。現在は病気に対するアプローチは行っておりません。声の不調は医師にご相談ください。
by aida-voice | 2008-12-02 00:44