都市伝説的発声法の簡易評価【追加 Ver.2】


世間には「本当だろうか?」「正しいの?」と不思議に感じたり疑問を抱いたりする発声法にあふれています。

今回は、その中のいくつかを取り上げ、簡単に評価してみましょう。



軟口蓋を上げて歌うと良い

イメージ的にはOKですが、口腔の深奥に存在する軟口蓋を持ち上げても、共鳴空間が劇的に大きく増えることはありません。

なぜなら、軟口蓋はとても小さいから。

そして、皆さんが思っている軟口蓋の場所は、実は硬口蓋を指していることがほとんど。

つまり、硬い骨で形成されているため、絶対に上らない。

実験では「軟口蓋を上げて」と命じると、口腔頬部を広げながら舌体を平らに押し下げています。

この結果、口腔共鳴腔全体の体積が増え、声質が向上するようです。

当該状況に対し「軟口蓋を上げた」と称しているようです。


歯を見せながら歌うと良い

歯を見せながら発声すると、通る声になると言われています。

本当はどうなのでしょう?

実験をしました。

一つのグループは、常に歯が見える状態で歌います。

もう一つのグループは、完全に隠した状態で歌う。

この比較を、知人の歌手たちで試しました。

まず、歯を見せながら歌うと、頬筋を収縮させ、口角も上がり気味。

いつもの持ち歌より、やや明るい曲想に感じました。

次に、歯を見えないようにして歌ったとき、口輪筋を固め、その結果、唇の最終構音が活かされず、なんとなくくぐもった暗い歌になりました。

よって、この発声法は「あり」かもしれませんね。

ただし、曲の種類によると考えられますので、何が何でも歯を見せ続けて歌うのはいかがなものかと思います。


喉をめいっぱい下げて歌うと良い

この方法は、咽頭共鳴腔を縦長に拡大し、音を良くしようという論理だと思われます。

基本的には正しいのでしょうが、問題点がいくつかあります。

第一に、喉頭は、茎突咽頭筋と茎突舌骨筋(茎突舌骨靭帯)の左右計4本で吊り下げ、空中に浮いた状態。

喉をめいっぱい下げると、この懸垂機構である筋肉や靭帯が伸びきってしまい、発声運動の性能が損なわれてしまいます。

また、歌のレッスンで、この方法を過度に行った結果、茎突咽頭筋の筋断裂(肉離れ)を起こしたケースに多く遭遇しています。

第二に、引き下げるには胸骨舌骨筋や甲状舌骨筋を相当収縮させなければなりません。

これによって、輪状甲状関節が動かなくなる事実が判明しています。

つまり、ピッチのコントロールが難しくなったり、高音が出にくくなったりするわけです。

音質は高まっても、発声運動能力が低下し、稀にケガする恐れもあるため、実行はほどほどに。

咽頭共鳴腔の拡大は、下方でなく、前方で形成するのをお勧めします。

そうすれば、舌骨が前に出ると同時に喉頭蓋も立ち上がり、呼気の流れも極上に仕上がりますよ。

当サロンでは、舌骨引き出しアプローチ(Nまたはアタランス)によって咽頭共鳴腔の拡大と操作性を目指しています。


目の焦点をずらしながら歌うと良い

おぉ、これこそ都市伝説的ホットな話題ですね。

この根本は、苫米地英人氏の洗脳法に関連するのではと思われます。

焦点をずらしながら話すことで、相手の心を奪うというものらしいです。

誰かが、これを歌に適応させたのかしら・・・

まぁこれは、皆さんが実際に試されると良いでしょう。

もしかすると聴衆の心をグッと掴める、かも!?


歯磨きしながら練習すると歌が上手くなる

ん~、理解しかねます。

強いて申せば、口腔及び歯茎の血流が良くなって・・・

どうでしょう???


使い捨てカイロを首(喉)に張り付け喉を加熱する

これは某音大教授が推奨していた方法です。

歌う数時間前、使い捨てカイロを複数枚、首の前面や側面に張り、マフラーでぐるぐる巻く。

これで、内喉頭まで深く熱を加えていくという考え方。

発声はスポーツと同様ゆえ、筋肉が冷えてしまうと、運動性が低下するのは合点がいきます。

ところが、加熱が過ぎると、筋肉はダレてしまい、動きは緩慢になる可能性があります。

想像してみてください。

スポーツの競技や試合の前に、熱いお風呂にゆっくり入ったら、その後、良い成績を収められると思いますか?

よって、冷やすのは言語道断ですが、温め過ぎもおすすめしません。

やはり、過ぎたるは猶及ばざるが如しですね。


ダンスは声に良くない

よく耳にする訓示ですね。

かなり昔、わたしが師事していた声楽の先生(女性)も「フラメンコは声に良くないから、フラダンスに変えたの…」とおっしゃっていました。

さて真偽は?

地面からの衝撃が、声帯に負担をかけ、発声力が低下すると思っていらっしゃるようです。

これも実験しましたが、どのような態勢や外力を加えても、声帯ヒダの運動性にさしたる影響はないと確認されました。

さらに追及して調べた結果、無理な姿勢やジャンプの着地時、呼気がうまく排出されず、声帯ヒダの正しい振動を阻害したり、ベルヌーイの定理が活かせない空気通過となったり、ときどき発声に悪影響が認められました。

つまり、ダンスが声帯に悪いのではなく、呼吸が乱れて発声し辛くなるのが根本のようです。

皆さんも、踊りながら歌うのが大変なのはご存知でしょう。

これを解決する方法は、アルティメットブレストレーニング。

どんな無理な態勢でも、激しく踊りながらでも、スムーズに歌うための究極呼吸法です。

当サロンでは、加圧呼吸トレーニングの進化バージョンとして取り入れています。

LSE(ラリンクス・スライド・エクササイズ)やウォイ負荷トレーニングなどが習得できた後、行っています。


●膝から声を出せ

あるボイストレーナーの教え。

膝蓋骨(ヒザのお皿)からビーム状に声を出すのがポイントのようです。

医学的にどうあれ、イメージに正誤はありません。

しっかり立って支える力を養うのが狙いかもしれませんね。

このイメージで歌唱力が増すなら、それはそれで良いのでは?

判断はお任せします。


●歌は胃呼吸を使うと良い

これも某ボイストレーナーのお言葉。

胃は消化器であり、呼吸器にはなり得ないため、意図がわかりません。

胃と食道の結合部である噴門を声帯のように振動させて音を生成するらしい。

もし、胃から空気が逆流するなら、それはゲップ。

きっとゲップ音の芸術なのでしょう・・・


●コンサートは満月の日に開催すると成功する

月の満ち欠けによる人体への影響は否定しません。

新月から満月へ移行する間が、筋力アップに適していると耳にしたこともあります。

よって、この意見の持ち主は、発声運動は満月の日が最高潮だと考えているのかもしれませんね。

月齢と声の関係は、実験も検証もしていないため、わたしからの意見はありません。

なお、満月の日に限って歌唱力(テクニック)が高まることは無いと考えます。




どうですか?

発声の考え方って十人十色。

まさに千差万別。

ただ、いつも申し上げているように、歌い方は個人の自由です。

よって、それらの各方法に正誤はありませんが、現実的に「ちょっと…」と感じられる手法は、万人に当てはまるものではないため、十分に注意しながら取り入れるよう進言いたします。

きっと今年も「声の不思議と素晴らしさ」に圧倒され続けるのでしょうね・・・




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喉と声のスポーツトレーニング&リラクゼーション
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 會田茂樹|あいだしげき 




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~重要なお知らせ~ ●外喉頭から考究する発声の理論と技術は日々進化しています。この記事は掲載時の情報であり、閲覧時点において最新・正確・最良でない可能性があります。すべての記事の内容に関し、一切の責務を負いません。●記事の内容は万人に適合するものではないため、当サロンの施術に関し、記事の内容通りの効果や結果は保証も確約もしておりません。〔当サロンでは役立てないと判断された場合、理由を問わず施術をお断りします〕●声や喉の不調は、最初に専門医の診察を受けてください。歌唱のトラブルは、最初にボイストレーナー(音楽教師)にご相談ください。





by aida-voice | 2018-01-11 10:19