鼻腔と声の関係 ~乱流の効果~


ヒトの共鳴腔(倍音空間)が5つあることは伝達済みですよね。
声帯ヒダから近い順に、喉頭室、梨状陥凹、咽頭共鳴腔、口腔共鳴腔、鼻腔共鳴腔、となります。
物理的に、音(空気の疎密波〔振動〕)を加工するのは、ここ。
ヘッドボイス、チェストボイス、バックボイス、ニーボイスなどは、その発声者の感覚であって、実際は空気が存在あるいは流れなければ、音は生成されません。
あるギタリストが豪語していました「俺は、ギターから音を出すのでなく、背中から音を出しているんだ」と。
著名な音楽指導者が断言していました「本当に音楽的な声は、膝(ひざ)のお皿から出てくるのですよ」と。
どちらも否定するつもりはありません。
それぞれの個性豊かな感覚ですからね。
さて、今日はとても大切な実験報告。
以前、鼻腔共鳴腔は、音色の明暗に関与している記事を書きました。
それを、さらに深く検証した結果をお知らせしましょう。
まず、ヒトの鼻腔の構造を確認。
外鼻孔から鼻腔内部を介して口腔までの距離はごくわずか。
しかし、通り道が二つあることと、下鼻甲介などにより内部面積が大きくなること、により空気が触れる場所がたくさんあります。
そう、鼻の役目は、湿気を含ませた空気(吸気)を肺へ送り込むこと。〔肺に乾燥は大敵〕
流入する空気の温度を調節することも含まれます。〔冷たい外気は温め、熱い外気は冷ます〕
異物(ホコリなど)の侵入も防ぎますよね。
そして、においを嗅ぐこと。
実は、良い声にも重要だったのです。
そのポイントは空気の通り道の角度。
多くの場合、鼻の穴は地面を向いています。
つまり、空気は下から鼻の穴に入っていきます。
次に、直角に曲がり、上咽頭へ向かいます。
そこから、また直角に曲がり、咽頭から声帯ヒダを通過して気管、最後は肺へ到達します。〔Figure2緑線参照〕
肺を乾燥させない、素晴らしいシステムですね。
同じように、呼気および呼気に伴う空気の疎密波(声)も、逆の経路をたどって外鼻孔から体外へ放出されます。
このとき、何が起きるのか?
答えは、呼気の「乱流」です。
つまり、鼻腔で渦巻きの流れが作られるのです。
さて、これが、良い声に、どうつながるのか?
二つの音響要因を考えてみます。
まず、劇場や音楽ホール。
優れた劇場や音楽ホールの天井や壁には、音が乱反射するような構造物が取り付けられていますよね。
そう、この原理と同じ。
次は、スピーカーのエンクロージャー(箱)。
鼻腔は、バスレフ型(空気の出入りできるダクトがあるタイプ)のバック・ロード・ホーンに酷似しています。
豊かで上質な音色(とくに低音)が期待できます。
これと同じ。
実験しました。
直径5センチ、長さ80センチのジャバラタイプのビニル管を2本用意しました。
一つはヒトの鼻腔のように曲げ〔Figure1のA〕、もう一つは直線状で〔Figure1のB〕、反対口から音楽を流し、その差異を聴きわける。
音の出口の条件を整えるため、最終口の角度や位置は同じに設定。
その結果、曲げた管の方が、音の広がりや質感が秀でていたような気がしました。
耳の肥えた5人で試しましたが、全員一致の意見でした。
これらのことから、鼻腔の角度や空間が、良い音声に一役買っていると考えられます。
鼻づまりは、せっかくの空間をつぶすことにほかなりませんからね~

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Figure1





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Figure2





追記

【鉄則】
空気が存在しなければ、音は伝わらない。
音の中でも声は特別で、空気の流れ(呼気)によって作られる!






~重要なお知らせ~ ●外喉頭から考究する発声の理論と技術は日々進化しています。この記事は掲載時の情報であり、閲覧時点において最新・正確・最良でない可能性があります。すべての記事の内容に関し、一切の責務を負いません。●記事の内容は万人に適合するものではないため、当サロンの施術に関し、記事の内容通りの効果や結果は保証も確約もしておりません。〔当サロンでは役立てないと判断された場合、理由を問わず施術をお断りします〕●声や喉の不調は、最初に専門医の診察を受けてください。歌唱のトラブルは、最初にボイストレーナー(音楽教師)にご相談ください。





by aida-voice | 2015-11-19 12:08