声の短問短答【続編】358


「息を吸いながら声を出したあと、声が出しやすいのですが、これってやって大丈夫でしょうか?」

大丈夫かどうかで問われれば、おおむね大丈夫なのですが、十分に注意しなければ大丈夫ではありません。
これは吸気発声と言い、大昔から発声法の一つとして存在します。
常に外へ向かう流れを、ときどき反転させることで、発声関与筋の筋弛緩やバランス調整ができます。
ただし、声帯に負担がかからない弱い力でなければなりません。
強い吸気で声帯ヒダを反対振動させると、構造的破綻を来し、痛める結果となります。
構造的破綻とは?
まず、皆さんは声帯ヒダの正しい形を知っています?
声の帯(おび)やヒダと書くくらいですから、線ではなく面の形状を成しています。
そして、二枚の面状のヒダは、下方から声門に向かって正中に寄って作られています。
これは、もともとは声帯ヒダが声のためでなく、水が入らないように弁の役目として作られていますから、逆流は禁忌のはず。
したがって、息を吸い込みながら大きな声を出し続けると、発声器官が壊れてしまいます。
つまり、構造的破綻。
当サロンでは、これまでに吸気発声によるトラブルでお越しになった方が数名いらっしゃいます。
症例としては、喉頭を引き下げながら力を入れるため懸垂機構の筋断裂、声帯がめくり下がることによる声帯出血(医師の診断)、使い慣れていない筋肉を酷使した結果の過緊張性発声とLDP、原因として断定はできないケースであったが反回神経麻痺の存在、などです。
吸気発声を行う際は、十分ご注意くださいね。

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追記:なお、実際に空気を吸い込みながら声を出すのではなく、吸うイメージで声を出すテクニック(インテイク・イメージ・ボイス)もありますよね。歌唱時、排気量が多く、嗄声(かすれ声)になりやすい傾向の方は、この手法が超効果的。声の安定と共にピッチも上がってきます。理由は、息の量を減らした状態で楽な発声をするから。つまりエコ。今の時代にマッチした発声法(笑)かもしれませんね。特にカラオケ歌唱にお薦め。これまで100人以上に指南しましたが、カラオケボックスで試してみると、約8割に効果が確認できました。「話すように歌え」の近似と言って良いかもしれません。インテイク・イメージ・ボイスの正しいやり方は、いずれ講習会で伝授する予定〔未定〕です。ただし、わたしはボイストレーナーではありませんから、外喉頭科学から研究したラリンクスアスレチックの範囲でお伝えしたいと考えます。

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by aida-voice | 2015-08-15 16:40