声の短問短答【続編】259


「急激な高音発声をしたら喉仏の下あたりが痛くなりました。いったい何が起きたのですか?」

急激に輪状甲状筋が引き伸ばされると、安全装置が働き、伸びる運動がストップします。
これを筋肉の伸長反射と言います。
つまり、ウォーミングアップせずに高音を発すると、輪状甲状筋が伸長反射を起こし、筋肉を傷めたり運動バランスを崩したりする可能性があるのです。
今回の質問の内容は、この伸長反射にあると思われます。
回復に時間を要すケースを多く知っていますので、ご注意ください。(輪状甲状筋の筋走行への弾性テーピングが効果的)
逆に、筋肉や腱をゆっくり十分に伸ばすと、負荷軽減のため、さらに伸ばす命令が発せられます。
これを、ゴルジ腱反射と言います。
したがって、ウォーミングアップによるハイトーン練習は、無理せず、徐々に高音化させるのがポイントです。
以前、「高音を開発するには、最初に自分の最高音をいきなり出すことが訓練になる」とおっしゃっていた教師がいましたが、発声運動学の見地からは間違っていると考えます。
十分お気を付けください。

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追記1:小さく感覚の乏しい発声関与筋を傷めると、治るまでに長い時間を要します。これまで数々のケガを見てきましたが、輪状甲状筋損傷の最長ケースは完治まで2年半以上かかりましたよ・・・



追記2:上絵では、筋腹中央に☆印(損傷部位)を付けましたが、実際には、中央よりも筋腱移行部の損傷が多いように感じています。多い順に、垂部輪状軟骨近位筋腱移行部、斜部輪状軟骨筋腱移行部、そして、甲状軟骨近位筋腱移行部の垂部と斜部の差は少ないと思います。やはり、輪状甲状関節が動く際の力がかかる順位になっていますね。なお、このケガは、①痛みの場所、②超ピンポイントの圧痛、③発声時の微小な運動痛、③繊細な触診による腫脹、などでチェックできます。




 
by aida-voice | 2014-07-10 13:57