高音の恐怖心を取り去る実験例


実に面白い実験でした。
ある若手声楽歌手(テノール)に歌劇ラ・ボエーム『冷たい手を』を、カラオケCDを用いて歌ってもらいました。
この歌手は、高音にやや苦手意識があり、ハイCを出せるときと出せないときのナミがあるそうです。
まず、歌っていただきました。
初音の滑り出しは順調。
曲中のMa il furto non m'accoraが終わったあたりから身構え、poiche,が始まったところで体を硬直させ準備しました。
そして、la speranza!は、必至な形相となり、ピッチも不安定なまま歌いきりました。
決して下手ではありませんが、余裕がないため、安心して聴けない。
さて、次に、わたしとじゃんけんしながら歌ってもらいました。
じゃんけんと言っても、わたしが出したグー・チョキ・パーに後出しじゃんけんで必ず勝つ手を出すこと。
掛け声はなしで、ゆっくり行いました。
じゃんけんに慣れてきたころ合いを見はからい、再生機器のスイッチをオン。
スピーカーから『冷たい手を』の伴奏が流れ始め、さあ、歌唱実験の開始です。
最初はスムーズ。
先ほどよりも安定し、きめ細かい声質へと変化しています。
前述の身構えた箇所は、なだらかに流れるような歌声。
さて、先ほどの難関部はどうでしょう?
おぉ、ハイCも楽々クリア。
お見事!
なかなか素晴らしい歌唱となりましたよ。
この成功の理由は?
元々、歌いこなせる能力はあるにもかかわらず、「高音は難しい」「高音は怖い」との感情が先行し、体や喉頭を硬くして高音発声を阻害していただけなのです。
後出しじゃんけんで、その意識を薄めたところ、うまくいったというもの。
もちろん、これには相当の歌の実力があって、かつ、暗譜(歌詞も音符も完璧に!)していなければ成り立たない方法ですが・・・

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追記:じゃんけんのスピードを上げたり、両手で異なるグー・チョキ・パーを出したりして実験したところ、途中で歌えなくなりました。これは、ほとんどの意識がじゃんけんに向いたため、歌どころでなくなってしまったのでしょうね。
by aida-voice | 2014-03-02 03:26