教える側の難しさと苦悩


今回は、音楽教師やボイストレーナーの視点からの内容です。
該当しない方はお読みにならなくても結構ですよ。
先日、あるボイストレーナーから相談を受けました。
以下が、その骨子。
「私の同僚の音楽講師のことです。その先生はJ-POPプロ歌手志望の20代半ばの女性を教えていました。その日は、ハイトーンの練習日でした。教育熱心な先生で、その生徒のためを思い、何度も繰り返し発声させたそうです。そして、授業が終わるころから彼女に異変が現れました。『頭が痛い』と言い出したのです。翌日には起き上がれないほど頭痛がひどくなり、現在も日常生活に支障を来す状態が続いています。その後、その生徒は、発声練習のせいで頭痛が発症したので責任を取って欲しいと訴えてきたのです。このような場合、どう対処すればよいでしょうか?」
まず、この練習によって、本当に頭痛が誘発されたかどうかを調査しなければなりません。
そう、因果関係です。
例えば、無茶な高音発声で血圧が急上昇し、脳内に異変が生じて頭痛を引き起こした…。
超レアケースとして、あり得なくはないですが、これを医学的に証明するのは不可能でしょう。
発声練習によって本当に頭痛が発症したなら、やはり責任を取らなければならないと考えますが、正確な因果関係を導き出すことは難しい。
つまり、どちらが正しいのか、何が原因なのかわからない。
もしかすると、起こるべくして発症した病気が、たまたまレッスン中だったのかもしれない。
よって、安易に謝罪したり逆に無視したりせず、まずは病院で検査をして治療を受けましょう。
その後、病態を観察しながら、改善策を一緒に模索する努力をすべきです。
お互いに誠意を持って!
同じような話を過去に幾度も聞きました。
声楽の高音発声で上喉頭神経が傷んだケース、野球部の声出しで外喉頭筋が筋断裂したケース、ホイッスルボイスの練習で輪状甲状関節が脱臼したケース、枚挙に遑がありません。
実際に、それらが直接原因となったのか、わたしにはわかりません。
稀ですが、発声時にさまざまな要因で体調が崩れたり損傷を起こしたりすることがあるのです。
教える側は、その点を十分に考慮して臨むべきでしょう。
今回、このようなお話を聞き、生徒を思って一生懸命に教えたこの先生にも、先生を信じて一生懸命に練習した生徒さんにも、等しく同情を禁じ得ません。
最後に、この生徒さんのご快癒を心よりお祈り申し上げます。

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追記:なお、確信犯的なクレーマーの存在もありますので、その見極めは大切です。わたしも以前、そのような事件に出会ったことがあります。知人の弁護士のアドバイスでトラブルは回避できましたが、実際は問題ないのに、無茶を言って金銭を要求する目的で近づいてくる輩もいますので、十分ご注意ください。施術もレッスンも、ヒトに対して行います。直接、触れていなくても、その練習行為をさせたことで、身体に変化が生じるレアケースを想定しておきましょう。
by aida-voice | 2014-02-02 02:02