熱唱の真意とは?【過去記事再掲載】





二十数年前、わたしが複数の接骨院を経営していたときのお話です。
スタッフ(正社員・パート・アルバイト)の総数は30名以上。
その中の一人にK先生がいました。
柔道整復師として副院長の立場で、日々、患者様に接していました。
とくに忙しい接骨院で、一日の最高来院数が234人の院。
平均しても180人/日ほど。
K先生は、多くの患者様から信頼を得ていました。
その彼の特技はカラオケ。
とてつもなく 『うまい』 のです!
あるとき某新聞社の主催するカラオケ大会に出場しました。
チューブの「シーズン・イン・ザ・サン」を熱唱。
わたしや他のスタッフも応援に駆け付け盛り上がりました。
そして順当に勝ち上がり、ついに優勝。
審査員のコメントが「自然体で心に染み込む素晴らしい歌唱力です」と。
当夜は優勝を祝して大宴会。
とても楽しい思い出です。
後日、K先生に「どうやったらうまく歌えるの?」と訊いたことがあります。
彼は一言「決して熱唱しないこと」
「えっ!?」
わたしは耳を疑いました。
「でも、カラオケ大会のときは熱唱していたじゃないか?」と問いました。
するとK先生は「歌おうなどと思わないように歌うだけ」と答えました。
何やら禅問答のような感じ。
この頃は、まだ声や歌を深く理解していなかったので「ふぅ~ん、そういうものなんだぁ…」と釈然としなかったのを記憶しています。
しかし、最近、やっとK先生のおっしゃった意味が腑に落ちました。
完全に!
仕事柄、いろいろな方々(音楽関係者も、そうでない方も)と会食やカラオケに行く機会が多くあります。
カラオケの場では、必ず「どうすればうまく歌えますか?」と質問を受けますね。
そのときは、ボイストレーニングはやっていない旨を伝え、簡単なコツをお伝えしています。
「熱唱しないでください」「歌おうと考えず、しゃべり声にメロディやリズムを軽く付け加えるだけ」「息の流れを大切にしてください」「出だしの初音に集中しましょう」「謙虚にうまいふりをしてください」と、ポイントをいくつか答えています。
そうです、熱唱とは、聴き手の判断や感想であり、本気で力まかせに歌うことではありません。
あなたは、血管を浮き上がらせながら力ずくで歌う歌(必死の歌唱)を聞きたいですか?
耳をつんざき、心が乱されるような歌を聞きたいですか?
本物の熱唱と必死の歌唱は異なるもの。
真の熱唱は心に届きますが、必死の歌唱は見聞きするひとを辟易とさせます。
歌い手が余裕を持って、その歌の良さを最大限引き出している歌唱状態を、熱唱と称するのです。
ゆとりがあるからカッコいい・・・
カラオケを必死に歌う方々に、語るように楽に歌う指示を差し上げた瞬間、周囲から「おぉ、急に歌がうまくなった」と評価され、わたしの面目を保てるシーンが幾度もありました【笑】。




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追記:他人に自分の歌声の魅力を聴いてもらうのと、なりふりかまわず熱唱する自己満足とは、求める歌唱形態が異なります。どちらが良い悪いはありません。お好きな歌を、お好きな手法で歌えばよいのです。





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by aida-voice | 2018-08-31 08:51