優秀な患者さま! 【頚部後屈の危険性】


先日、新規の施術を受けに来た方のお話し。
とんでもなく優秀なのです。
まずは、予約時に頂戴したメールの内容から。
一部を要約&編集(個人特定ワードを削除)します。

「独学でボイトレを始め、喉のストレッチになるかと思い、喉仏を下げて頭をぐっと後ろに反らせました。そのとき喉ががくんと鳴り、その瞬間から、裏声発声不能と嚥下時のクリック音(右側限定)が現れました。また、3錠を楽に飲めた薬が、1錠でも喉の奥に引っかかるようになったのです。先生の喉ニュースを拝見し、輪状甲状筋の亜脱臼の可能性を懸念しています。その後も、違和感は覚えつつも、ボイトレを続けたところ、外喉頭の筋肉が左右に違いが出てきました。左側の舌骨の上辺りに痛みを覚えたこともあります。詳細な症状は次です。●裏声が出ない。●嚥下時に違和感:錠剤が喉奥で引っかかり、クリック音(右側は疲労時に鳴ることが多く、左側は舌骨を触りながら嚥下すると当たっているのがわかる)がある。●左側の外喉頭筋の動きが硬く、疲れやすい。●甲状軟骨周辺筋に左右差がある。●左側の舌骨と甲状軟骨との距離が短い。●その他。本当に困っています。なんとか先生のところで症状を改善して頂きたく思っています。よろしくお願いします」

彼のすごさに驚きました。
自己を冷静に観察する知識と優れた感性の持ち主。
ご覧ください。
下のメモは、自分自身に起こっている状況を描いて持参してきたもの。
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このメモを見た瞬間、わたしは絶句しました。
“すごい!!!”と。
約2時間の問診と検査では、ここまで探り出せないのではないかと、ちょっと心配になったほど完成度の高い図でした。。
それでも、彼の受傷説明が的確であったため、綿密な触診とビデオ検証によって、以下の外喉頭周辺予想図(外皮より)を作成できました。
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やはり、ほとんど同じ。
なお、輪状甲状関節の脱臼や亜脱臼はありませんでした。
良かったですね。
その部位の痛みは下咽頭収縮筋と輪状咽頭筋の損傷ではないかと思います。
実は受傷から2~3年ほど経過しており、瘢痕は触診できるのですが、原因との因果関係を断定するのは難しく、「下咽頭収縮筋と輪状咽頭筋の損傷ではないかと思います」と推論発言しました。
各種アプローチで損傷部(古傷)の再生を促し、外傷性 LDP を改善すれば、快方に向かうと考えます。
ところで、彼は、医師や喉の専門家なのでしょうか?
いいえ、無関係。
お仕事は、技術者(設計?)だそうです。
それにしても実に素晴らしい・・・
諸手を挙げて大絶賛させていただきます。
お見事!





追記1:これらはご本人のご許可を得て供覧しております。ご協力、心より感謝申し上げます。




追記2:もう一度、彼のメモをご覧ください。喉頭の位置関係と軟部組織の構図がパーフェクト。さらに左下に描かれた舌骨と頚椎。頚体には棘突起と二対の横突起が正確に付いています。何度見ても“すごい”の一言です!




追記3:【頚部後屈の危険性】 喉頭を下げたまま頚部を後屈するとどうなるでしょう。これと同じケースで外喉頭の筋肉を負傷した方々を多く診てきました。下絵でわかるように、喉頭を下げながら後屈すると、中空に浮いた喉頭が頚椎方向に移動し、甲状軟骨辺縁部と頚椎体前面に圧が加わり、この間に存在する筋肉が損傷(筋および筋膜の断裂など)してしまう可能性を排除しきれません。損傷しやすい筋肉は、下咽頭収縮筋、輪状咽頭筋、横披裂筋、斜披裂筋、甲状披裂筋などです。首の角度と動く向きと力の加減で場所が決まってきます。皆さんも十分ご注意くださいね。
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追記4:中でも、ローラリンクスおよびハイラリンクスの状態で首を後屈すると、一層の危険度が増します。それは、舌骨や甲状軟骨に付着する筋群が伸び切ったまま、さらに伸ばす行為となるからです。ローラリンクスの場合は懸垂機構(茎突咽頭筋、茎突舌骨筋、茎突舌骨靭帯、顎二腹筋の一部など)に、ハイラリンクスの場合は胸骨舌骨筋、甲状舌骨筋、肩甲舌骨筋の一部に、筋損傷や筋膜断裂の受傷が懸念されます。
by aida-voice | 2013-08-03 00:55