輪状甲状関節の運動方向


非常に優秀なボイストレーナーから輪状甲状筋による甲状軟骨と輪状軟骨の動きに関する質問をいただきました。
昔、わたしは「輪状甲状関節によって甲状軟骨が前に倒れ込み、甲状軟骨下縁と輪状軟骨上縁が近づき声帯ヒダが伸長され高音発声が行われる」と記載していました。
その後、摘出喉頭の触診研究や筋運動学の再勉強により、「輪状甲状関節によって輪状軟骨が上後方に持ち上げられ、甲状軟骨下縁と輪状軟骨上縁が近づき声帯ヒダが伸長され高音発声が行われる」と改正しました。
これは、実際に自分の手で何度も何度も触り動かし確認した結果、甲状軟骨の下制より輪状軟骨の上制が構造の理にかなっていること。
そして、輪状甲状筋の起始停止により筋運動のベクトルが輪状軟骨から甲状軟骨に向かっていること。
これら二点から導き出したものです。
さらに、外喉頭触診から当該関節の動きを数千例も調べ、加えて頭頚部解剖医学とすり合わせ(喉頭は茎突咽頭筋や茎突舌骨筋などの懸垂機構によって吊り下げられている事実)、その結果・・・
甲状軟骨の若干の下制も確認できました。
その比率は個人がありますが7:3~9:1程度。〔輪状軟骨と甲状軟骨の動く割合〕
どこで変わるのか?
全体の動きは外喉頭筋群の筋硬度と位置によって決まってきますが、上記の比率は懸垂機構の柔軟性によって変化します。
茎突咽頭筋の筋力差はもちろん、茎突舌骨筋には並走する茎突舌骨靭帯があり、この線維の張力差も大きく関与しています。
さらに検証したところ、輪状甲状関節上の関節包様組織の存在具合と輪状軟骨の重量も関与していそうなのです。
この輪状甲状関節はまだまだ研究途中の段階。
さらに新事実がありそうな予感が・・・。
今回はやや難しい内容となってしまいました、スミマセン。

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軟部組織が付着した喉頭のスケッチ絵





追記1:若手J-POP歌手の多くが「輪状甲状筋を鍛えたい!」と合い言葉のように口にしているのを耳にします。高音発声や張った声などピッチに不可欠な輪状甲状筋。確かに大切です。せっかく輪状甲状筋と言う難しい単語を覚えたのですから、その筋肉がどこにあるのか?、どう動いているのか?、動くための要素は?、など使いこなすための知識を正しく知ってください。何よりも輪状甲状筋の運動ターゲットは輪状甲状関節なのです。




追記2:輪状甲状関節の動きは複雑。輪状甲状筋垂部によるヒンジ運動と斜部のスライド運動。加えて甲状軟骨板の楕円様関節窩。甲状軟骨下角の動く軌跡に左右差があることもわかってきました・・・

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輪状甲状筋触知と輪状甲状関節可動チェック時のスケッチ

by aida-voice | 2013-07-11 00:18