無力


過日、ある耳鼻咽喉科におじゃましました。
そのクリニック院長と音声に関する会談です。
有意義なひとときでした。
その会談の最後に、お願いをされました。
クリニックに通院している患者さんに対する喉と声に関して。
喉頭ファイバースコープでは異常所見は見当たらないが、本人曰く「声が悪いから治したい」との願いが強く、わたしに外喉頭のトラブルの有無を調べて欲しいとの内容。
お役に立てるかどうかわからない旨をお伝えしたうえで、その患者さんにお越しいただき検査しました。
と言っても器具は持ち合わせていないので、声の様子と視診と触診のみ。
その結果、首(椎体)幅に対し、舌骨が異様に小さいことが判明しました。
もう少し詳しく調べるには、ビデオ撮影して検証しなければなりませんが、たぶん喉頭全体が小さい。
ただし、痛みや不具合があるものではなく、声の質が良くない程度で、日常生活に問題なく、これは病気でも奇形でもありません。
喉頭の小ささが共鳴音を損ない、構音不全や音量低下を招いているものと予想され、その状況を院長のみにお伝えしました。
そう、別室で、院長先生だけに、こっそり話しました。
ところが、院長はダイレクトにこの事実を患者さんに告げてしまったのです。
患者さんは神妙な様子で聞いていました。
機能でなく器質、つまり、生まれ持った身体の形状ですから、変えることが難しい。
現実、有効な改善手段がありません。
自身の声を受け入れるか、仕方がないからとあきらめるか、様々な音声訓練を試みるか…
以前、わたしは調べたまま正直に報告するのを正義と信じていました。
この心無い言動によって、泣かせてしまったことがありました。
以降、評価できる点は大いに伝え、マイナス点はオブラートを包んで優しく伝えるよう心掛けています。
このケースなら、「スピーチセラピー、ボイストレーニングやブレストレーニングなどで、あなたの音声はもっと良くなるかもしれませんよ」と。
帰途の列車の中。
今回、わたしがダイレクトに告げたものではありませんが、その患者さんの悲しげな顔を思い起こし、申し訳なさと自分の不甲斐なさに消沈していました。

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追記:なお、最近では各種訓練により、喉頭運動性能を高めることで多少の改善は可能になってきました。ただし、並々ならぬ努力と時間が必要ですが…
by aida-voice | 2013-03-21 08:42