★緊急報告★ 急に高音が出なくなった!


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ある朝、知人から連絡がありました。
その知人は、某音楽プロダクションから依頼され、わたしに電話してきたのです。
「おはようございます。歌手の〇〇が急に高音が出なくなり困っていると連絡を受けました。そして、先方から會田さんを紹介して欲しいと言ってきたので、ご迷惑かと思いましたがお電話させていただきました」
名前は明かさない約束で、喉ニュースに記載する許可を、事務所と本人から取り付けました。
ここに報告いたします。
その歌手にお会いし、声を聞き、触診した瞬間、何が起こっているのか判明したのです!
飲み会で盛り上がり、友人達とのプロレスごっこ。
相手の手が喉に押し当てられたまま大声で叫んでいた記憶を持っていました。
そのとき、輪状甲状関節の脱臼が生じたのです。
この際の原因は二つ考えられます。
①甲状軟骨がホールドされたまま、強い発声により、輪状軟骨の動きが過大となって正常可動範囲を逸脱した
②相手の片手が甲状軟骨板を固定した状態で、もう一方の手の指が輪状軟骨後方に滑り込んで引き出してしまった
どちらかでしょうが、②の可能性は低いと思われます。
ここは軟骨同士の関節なので、脱臼・亜脱臼を起こしても痛みもありません。
稀にわずかな違和感を持つ感性豊かな御仁がいらっしゃる程度ですね。
どの段階でわかるのか?
それは、以前は軽々と発声していた高音が出来なくなって初めて気づきます。
しかし、誰にも輪状甲状関節の脱臼は認識できません。
耳鼻科に行ってもわかりません。
声帯は正しく動いているから、問題ないと言われます。
整形外科や接骨院でも難しい。
軟骨ゆえレントゲンにも写らない。
そう、精緻な触診のみ・・・
そのような方々を、わたしは数多く診てきました。
今回は、受傷してから数日の新鮮症例ゆえ、特殊な方法の整復で一発OK!
整復は小さなアクションです。
痛くも痒くもありません。
一瞬で簡単にはまります。
整復後、この歌手に持ち歌を歌ってもらいました。
すると、楽々と高音が発せられる。
本人も大変驚いていました。
そして、安堵と共に、こちらが強縮してしまうほど感謝されました。
ますますテレビやステージで活躍することでしょう。
以上、簡易にご報告申し上げます。




~詳解~
模式ラフ絵を供覧します。
甲状軟骨下角と関節窩(濃いグレーの楕円部)に注目してください。
上から、正常、下角が後方へ移動、下角が前方へ移動している様子です。
デフォルメしていますが、脱臼の様態を的確に表しています。
なお、下角の位置が前後するだけでなく、三次元的には関節窩から離れて浮いている脱臼も存在します。
絶対に見逃さないよう警鐘を鳴らしておきます!

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追記1:輪状甲状関節の脱臼には十分お気をつけくださいね。受傷して日数が経過すると、甲状軟骨下角が不正な位置のまま、周辺の軟部組織が固着してしまい、整復が容易でなくなってしまいます。




追記2:輪状甲状関節脱臼の整復法には三種類あります。片側か両側か、下角の湾曲程度、甲状軟骨板の関節窩の大きさ、脱臼後の下角尖端の位置、関節包の厚さ、輪状甲状筋の筋力を、しっかり調べたうえで、どの整復方法にするのかを決めます。




追記3:過去にも、輪状甲状筋を鍛えるトレーニングを続けていたが、ちっとも高音発声できないため、外喉頭を調べてみたところ、陳旧性の亜脱臼が存在したケースに何度か遭遇しています。




 
by aida-voice | 2016-03-14 17:44