声の短問短答【続編】33


「サラ・ブライトマンが宇宙へ行きますが、喉や声に影響はありませんか?」

宇宙での滞在時間が長いと筋線維が細くなり筋力が落ちることが知られています。
つまり筋委縮。
宇宙ステーションから帰還した宇宙飛行士たちが、車椅子に乗って会見している姿は印象的です。
JAXA(宇宙航空研究開発機構)の報告によると、筋肉が毎日約1%ずつ細くなるようです。
また、宇宙滞在時には、抗重力筋が、抗重力を主の役割としない随意筋より萎縮しやすいのです。
抗重力筋には背筋や下腿三頭筋が、自分の意志で動かす随意筋には上腕二頭筋や大腿四頭筋があります。
つまり、宇宙滞在時には、能動的に動かす筋肉より、地上で重力に拮抗するための筋肉の方が早く痩せていくのです。
当たり前ですよね。
そう、宇宙空間は無重力だから。
さて、ここで話を戻し、歌手が宇宙で歌ったらどうなるか?
まず、皆さんも宇宙からの生中継のインタビューや会見を見たことがあるでしょう。
それを見ると、何の問題もなくしゃべっています。
声は空気の振動ですから、身体の周りと肺から唇までの身体内部に空気が存在すれば、声帯を震えさせて声を作り出すことは可能。
問題ないとは言え、宇宙ステーションの内部映像を見てわかるように、宇宙では素早く筋肉は動きません。
したがって、地上にいるときよりも、筋運動のスピードは落ちるでしょう。
会話やおしゃべり程度ならば、発声関連筋に与える速度の影響は少ないと考えられます。
次に歌。
つい最近(2012年12月)、実際に宇宙で歌った事例がありました。
国際宇宙ステーション上で史上初の音楽演奏の録音が行われた模様なのです。
司令官であるクリス・ハッドフィールド大佐が弾き語りでオリジナルのクリスマスキャロルを歌いました。
その歌声があります。

《宇宙ステーションからの歌》

音用ハイスペック録音機材が充実していないので、音質に関してはさておき、普通に歌っていますね。
歌を運動に例えるなら、会話程度のおしゃべりは歩行で、歌はランニングのような感じ。
クリス・ハッドフィールド大佐の歌は、ゆっくりとした軽いジョギングに相当します。
これなら宇宙空間でも大丈夫でしょうね。
もちろん、ハードなロックなどは、全速力の走りと同様になりますから、テンポやリズムが狂いやすいおそれが出てきます。
したがって、サラブライトマンさんも曲をじっくり選ぶ必要がありそう。
ところで、宇宙ステーション長期滞在の場合がどうなるのか?
喉の筋肉に抗重力を主とするものはないか?
ありますよね。
懸垂機構の筋群です。
とくに茎突咽頭筋と茎突舌骨筋の各二本ずつ計四本。
ここが萎縮すると…、あくまで予想ですが、喉頭を支える力が衰えますから徐々に発声しづらくなり、咽頭共鳴腔の活発な作用も封じ込められて声の音色が損なわれるでしょうね。
ただし、これらの筋肉は、四肢躯体を支え動かす筋肉より細く小さく重責は担っていないため、何十年も滞在しない限り支障ないと思います。
それにしても、サラブライトマンさんの宇宙からの歌声、とっても楽しみですね。
2015年10月が待ち遠しい・・・

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追記1:宇宙ステーション内の気圧は、外壁強度の関係で、地上の1/3程度(つまり約0.3気圧)に設定されているようです。これはヒマラヤ山脈の頂上レベルの気圧です。やはり空気を十分に使えない低い気圧により、地上に比べ声量は落ちるものと考えます。サラブライトマンさんは、このあたりも含め、選曲の巧みと歌唱用呼吸の専用訓練が必要ですね。




追記2:ちょっと話はずれますが・・・、宇宙に関係するので・・・。わたしと同じ高校の仲の良かったクラスメイトが、現在、東京工業大学とJAXAの両方で宇宙航空工学の教授を務めています。彼は、高校時代から宇宙の研究を目指し、今も第一線で初心を貫き、さらに結果を出しています。強く頑な精神力を持っているのですね。同級生ですが、常に見習いたい尊敬に値する男です。





~メッセージ~
この記事は投稿時の情報・見解・施術法であり、最新・正確・最良でない可能性があります。内容に関し一切の責務を負いません。その旨ご承知いただきお読みください。會田の理論と技術は毎日進化しています。
by aida-voice | 2012-12-29 00:03